第16回

2006-12-04UP

学校だけが人生じゃない』

保坂 展人 著
結書房
本体1500円+税

第20回 〜 第1回

第20回 『ジェンダーと社会理論』

第19回 『反戦ストリッパー白血病に死す』

第18回 『≪宮崎勤≫を探して』

第17回 『満鉄全史 「国策会社」の全貌』

第16回 『学校だけが人生じゃない』

第15回 『階級社会』

第14回 『何がおかしい』

第13回 『寄る辺なき時代の希望−人は死ぬのになぜ生きるのか』

第12回 『薬でうつは治るのか?』

第11回 『岸田秀最終講義DVD本』

第10回 『戦争で死ぬ、ということ』

第9回 『自傷行為〜私が私であるために〜』

第8回 『自分の居場所のみつけかた』

第7回 『30日間マクドナルド生活』

第6回 『社会運動の力 集合行為の比較社会学』

第5回 『社会学入門 人間と社会の未来』

第4回 『学問の力』

第3回 『そして、憲法九条は。』

第2回 『子どものリアリティ 学校のバーチャリティ』

第1回 書き出すにあたって

 この文章がネットに出るころにはどうなっているかわからないが、執筆時点では、教育基本法「改正」は、今国会のもっともホットな論点のひとつである。著者は、教育基本法「改正」反対の最前線に立って論陣を張っている。

 なぜ、著者は教育基本法「改正」反対にそこまで躍起になるのか。そのために書かれた本ではないが、自叙伝風のこの本を読めば、その理由はおのずからわかってくる。中学生活動家、フリー・ジャーナリスト、そして国会議員というその半生の足取りそのものが、改正に反対を叫ばせているのだ。

 知っている人には、耳にタコだろうが、著者は中学生時代に政治活動をおこない、内申書にそのことを書かれ、全日制高校を全部不合格になってしまった。そして麹町中学に対し、いわゆる内申書裁判を起こし、一躍、ニューレフト運動の寵児に。その後は、定時制高校に通うも、1年で中退し、放浪の旅へ。そこから、再び、若者の声を取り上げる教育ジャーナリストになる。当ウェブサイトの前身雑誌、『進ゼミエコール』の創刊にもかかわったという伝説もある。

 その後、土井たか子に請われて政界入り。いつも、ぎりぎりの当選(一度は落選経験有り)で話題を呼ぶ一方、最下位当選者とはとても思えない鋭い質問で活躍する有名議員だ。

 中学生活動家の自叙伝として読むのならば、はっきりいって、『麹町中学へ死の花束を』(たいまつ社、1978年、ほぼ入手不能)の方が面白い。駆け出しのライターとしての気迫が、いろいろなボロを出しながらも迫力を持って迫ってくる。しかし、当然のことながら、その後のジャーナリストとしての展開、政治家としての活動などは記されていない。マイルドな書き方になってしまっているが、それらの全体像を描き出してくれているのがこの本だ。ただの政治家が、ゴーストライターに書かせた自己売り出しのための本とは、一線を画したものがある。

 社民党・保坂展人の支持者ならずとも、数奇な人生を歩んだ人間の半生記として充分に楽しめる面白さを持っている。

 ちなみに本書とは直接は関係ないが、著者がネット上で展開しているブログ、「保坂展人のどこどこ日記」(http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/)は、政治家が書いているものとは思えないほど評判を呼んでいるらしい。




竹村 洋介
たけむら ようすけ

東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。