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ひょっこりひょうたん島ファンクラブ会長の著者の最新刊。世間的にはそう認知されていないし、著者自身「オタク」という言葉を使うわけではないが、ひょっこりひょうたん島に関しても、この本で取り上げられるシングルヒットチャートに関しても、間違いなく、(言葉ができる前からの)元祖職人的オタクであることは間違いない。著者のオリコン、ビルボードへの愛着は、オタクという言葉では表現できないそれ以上のものとキャリアを持っている。
ヒットチャートをかざるミュージシャンへの愛情の注ぎようというと、やはり尋常ではないものを感じる。この本で取り上げられているだけでも、ENDLICHERI☆ENDLICHERI、WAT、平川地一丁目、大野靖之など、その歌詞の微細な部分、歌い方にまで、並々ならぬ思い入れがこめられている。
それでは、ヒットチャートに登場するミュージシャンのヨイショ本かというと、まったくそうではない。ジャケットや特典だけを変えて、何種類も同じ曲を発売する日本のレコード産業の「短期的に売れればよい」という姿勢への辛辣な批判もするし、倖田来未が12週間連続シングル発売することについてもファンの立場から、そんな出費に耐えられないと音楽業界のあり方への猛省を促している。
この本も、もともとは、ブログを再編集してできたものだ。しかし、日々ブログに書き綴ったものを、テーマごとに見事に編集されたものだと感心させられてしまう。ブログ本は巷にあふれかえっているが、ひと味違うと言っておこう。
第4章の「私を支える歌」で、著者自身、いかにヒット曲によって人生が支えられてきたのかも面白い。「卒業」尾崎豊、「木綿のハンカチーフ」太田裕美、「微笑みがえし」キャンディーズなどなど、往年のヒットチャートをかざった曲が取り上げられている。
しかし、それにもまして興味深いのは、『オリコン』創設者の小池聡行さんと著者との交流だ。まだ10代だった著者が、当時業界紙であった『オリコン』を、個人で安く購入すべく、新橋にあった本社まで直訴しに行く。それを小池聡行さんは特別に許してくれるのだ。その後の交流にも心温まるものがある。
他にもシングル版という概念そのものが変わってしまい、それを手に入れるのに苦労したり、逆にネット配信で楽になったり、ヒットチャートに関するエピソードにはこと欠かない。まさに著者は、ヒットチャートに関して、オタクを超えたオタクである。
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竹村 洋介
たけむら ようすけ
東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。
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