ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン
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第22回

2007-03-05UP

『東京から考える』

東 浩紀・北田暁大 著
NHKブックス
本体1160円+税

第41回 〜 第21回

第41回 『イラクは食べる』

第40回 『学校裏サイト−進化するネットいじめ』

第39回 『日本の行く道』

第38回 『家族パラドクス』

第37回 『エビと日本人II』

第36回 『プライドワーク―自分を作る働き方』

第35回 『しごとダイアリー』

第34回 『雨宮処凛の「オールニートニッポン」』

第33回 『ベースボールの夢−アメリカ人は何をはじめたのか』

第32回 『サマースプリング』

第31回 『右翼と左翼はどうちがう?』

第30回 『人間自身 考えることに終わりなく』

第29回 『精神科医の本音トークがきける本』

第28回 『教育大混乱』

第27回 『豊かさと棄民たち 水俣学事始め』

第26回 『全国学力テスト、参加しません。』

第25回 『狼少年のパラドクス』

第24回 『生きさせろ! 難民化する若者たち』

第23回 『親より稼ぐネオニート』

第22回 『東京から考える』

第21回 『ヒット曲が世界を変える』

 東京というポストモダン都市を題材に、若手の論客がポストモダニズムについて語る。主として1980年代から現在に至るまで、東京の街が、いかに変容してきたかを通じて、ポストモダニズムを解明しようという試みだ。

 対談者ふたりは、既にそれぞれ独自に都市論を発表してきているが、ともに1971年に東京圏に生まれ、中高一貫性の学校を卒業し、東京大学に進むというように、人生の大半を東京圏で過ごし、この時代の東京をリアルに生きてきている。しかも一カ所に定住していたのではなく、東の場合は三鷹から青葉台へ、北田の場合は座間から藤沢に引っ越している。さまざまな東京圏の街を生きてきたといえよう。

 そんな二人だが、大胆に分けてしまえば、東は西東京に、北田は東東京に、「東京」を感じ、微妙に違った角度から「東京」を論じようとしている。

 議論は、シミュラークルの街・渋谷の変貌から始まる。既に議論の出発点が、新宿ではなく、西武流通グループが展開した渋谷から始まるところからして、私などは世代差を感じてしまう。しかし、これがポストモダニズムの起点ということであろうか。

 次は郊外のニュータウンに目を転じて、東急田園都市線の青葉台が取り上げられる。渋谷が「広告都市」ならば、青葉台(だけではないが)は「広告郊外」だ。さらに目は埼玉県に隣接し修学支援問題に揺れる足立区に転じられて、そこから格差が考察される。

 そしてターゲットはエスニックタウンを持つ池袋に移り、街が個性を持つとはどういうことかが、下北沢の再開発の反対運動の例などを引き合いに出しながら、討論されていく。最終章では、具体的な街を離れ、「小さな共感可能性」を通じてネイションに議論は移っていく。

 このように筋だけを書いてしまうと、東京圏のさまざまな街を選び出して、気ままに批評しているだけのように読まれてしまうかもしれないが、全体を覆うさまざまなキーワード−テーマパークとしての都市、「ジャスコ」的街、都心内郊外など−が全体を貫いて全体としてポストモダニズム論となっている。

 対談は極めて自由闊達で広がりを持っている。ちょうどこのころ学生・院生時代を東京で暮らした私にも驚かされるような事実がいろいろと掘り起こされたりしている。タイトルは「東京から」となっているが、「東京」を体験したことのない読者にとっては、(それぞれ細かい注はついているとはいえ)かえって馴染みにくいものになってしまっている嫌いもある。しかし、それでも1980年代、単に輸入物としてあがめられたポストモダニズムが、21世紀になり、このように具体的日本の街に即して語られるようになってきたことは、それが確実に新しい段階に入ったことを示しているといえよう。




竹村 洋介
たけむら ようすけ

東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。