ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン
ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン

第23回

2007-03-19UP

『親より稼ぐネオニート』

今 一生 著
扶桑社新書
本体740円+税

第41回 〜 第21回

第41回 『イラクは食べる』

第40回 『学校裏サイト−進化するネットいじめ』

第39回 『日本の行く道』

第38回 『家族パラドクス』

第37回 『エビと日本人II』

第36回 『プライドワーク―自分を作る働き方』

第35回 『しごとダイアリー』

第34回 『雨宮処凛の「オールニートニッポン」』

第33回 『ベースボールの夢−アメリカ人は何をはじめたのか』

第32回 『サマースプリング』

第31回 『右翼と左翼はどうちがう?』

第30回 『人間自身 考えることに終わりなく』

第29回 『精神科医の本音トークがきける本』

第28回 『教育大混乱』

第27回 『豊かさと棄民たち 水俣学事始め』

第26回 『全国学力テスト、参加しません。』

第25回 『狼少年のパラドクス』

第24回 『生きさせろ! 難民化する若者たち』

第23回 『親より稼ぐネオニート』

第22回 『東京から考える』

第21回 『ヒット曲が世界を変える』

 ニートという聞き慣れない言葉が出たかと思えば、『「ニート」っていうな』と言う反論がなされ、今度は、「ネオニート」である。不安定若年就労者層の問題が大きいとはいえ、あまりにも速い概念転換のスピードだ。

 しかし、著者の主張は極めて明快だ。一度フリーターになれば、正社員への道はほぼ閉ざされ、たとえ正社員になっても会社が終身雇用を守ってもくれない(大卒でも新卒採用の1/3が3年以内で辞めていく)この時代においては、独立自営の道を選択するしかないと言うのだ。特に、卒業時点が、たまたま就職氷河期にあたり、現在30を超えようとしている世代にはそれしかないという。

 著者の狙いは、サブタイトルにもあるように「脱・雇用」なのだ。親たちの持っている「仕事=会社に就職する」という労働観を根底から否定し、著者の言うWEB2.0時代にあった労働のあり方を考え直そうというのだ。その成功者の実例として、ネット上の広告代理業「アフィリエイト」で暮らす若者、格安で中古品を仕入れ転売利益で儲ける「せどり」を手がける若者、そしてその成功マニュアルをネットで売る「情報販売」をする若者、ゲストハウスを経営する主婦や脱サラなどのルポルタージュがネオニートのそれとして繰り広げられている。

 ネオニートには、ニートという言葉がついているけれど、自分の好きなことをやっているせいか、実によく働いている。何がオークションで高く売れるか、中古品の持つ価値を鋭く見抜いたり、何をアフィリエイトすれば利益が上がるか商品を見極めたり、ゲストハウスの住人の交流に気をつかったり、好きでなければとてもできないようなことをやってのけている。

 こういった起業精神がないと、これから先、日本の経済は、たち行かないというのが、著書のもうひとつの主張であろう。それゆえ、ニートを雇用者にしようと言う政府の「若者自立塾」やジョブカフェの政策には批判的だ。むしろ逆に、子どものころから、雇用されて当たり前というのではなく、自分に無理のない形で自営していくことを身につけさせることが必要だとも著者は言う。

 だれもが、ネオニートとして成功するとはかぎらないだろう。成功者の陰に隠れている失敗者へのセーフティネットの整備も日本社会は充分とはいえない。しかし、それでも、会社に雇われなくても、生きていける道はあるんだと元気を与えてくれる本である。





竹村 洋介
たけむら ようすけ

東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。