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2007年4月24日全国一斉に小学校6年生と中学校3年生の児童生徒、約240万人すべてを対象として国語と算数・数学2教科、および生活習慣や学習環境について悉皆調査が行われた。全国学力テスト、もっと略して「学テ」と呼ばれるものだ。この「学テ」に犬山市の教育委員会は不参加を決めたのだ。中央官庁である文化省の実施に市区町村の教育委員会が参加を見合わせるというのは極めて珍しい事態だ。全国1908教育委員会のうち犬山市教育委員会のみが不参加なのだ(参加率99.96%)。
しかし、決して奇をてらって不参加を決めたのではない。これまで積み重ねられてきた犬山の教育の実践と理念の上に、断固として、不参加がなされたのだ。「学テ」を行うことで、教育に競争原理を持ち込み、学力の向上をはかろうという思惑に対し、犬山の教育は競争原理を持ち込まず学びあうことをその基礎に据えているからだ。「自ら学ぶ力」を重視し、競争原理ではなく、内発的な動機づけを重視する。それを可能にする少人数授業・少人数学級など、さまざまな教育の改革を行ってきたという自負が犬山の教育にはある。
「授業自己評価アンケート」や「授業チェックカード(相互評価表)」、「授業改善交流会」など教師全体の力量を高める努力が、常になされてきているのだ。さらには算数、理科、国語の副教本の開発などをおこない、教材開発は教師自身の仕事であるという意識づけを徹底し、少人数授業やTT授業と組み合わせることで効果的な学習指導が可能となっているという。そして子どもたちは、「協同学習の理論」により、競争論理を超えて、互いに学びあい効果的な学習を行っているという。最近とみにいわれだしている学力の二極分化は、犬山では起きていないのだ。5段階評価の1、2の子が少なく、3、4の子が多い。学力の底上げができていると言えるだろう。
なぜにここまで、犬山の教育は、その独自性を発揮し得ているのだろうか。教育委員会のしっかりした取り組み、教師のがんばりもあるだろう。しかし、その一番根底にあるのは、「犬山の子は犬山で育てる」という教育の地方自治と独立といった観念と、「教育行政の一般行政からの独立」というそれだろう。
犬山市教育委員会はたまたま「学テ」不参加により、その名前を知られるようになった。しかし、問題は、単に学テ参加・不参加といった問題よりも、教育の地方自治、安易に競争原理を持ち込まないといったその根本的姿勢に真価があるといえるだろう。
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竹村 洋介
たけむら ようすけ
東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。
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