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野茂以来、イチロー、松井と日本人も活躍しているメジャーリーグだが、アメリカ人は、それをいかにして作り上げてきたのだろうか。日本のプロ野球にも、長島・王の伝説があるが、アメリカ合衆国のベースボールは、その歴史も古く、人気も絶大なものがあるだけに、その伝説もまた、壮大なものがある。
日本ではあまり知られていないが、ベースボールの発明に関して「ダブルデー=クーパーズタウン神話」というものがある。アメリカ合衆国のベースボールファンなら、誰でも知っているという神話だ。後に南北戦争の北軍の将軍として開戦の火蓋を切ったアブナー・ダブルデー将軍が、若き日にニューヨーク州のクーパーズタウンで、野球を発明したという伝説である。時は、1839年のことだったという。
この本は、この神話をめぐって、それが捏造されたものであることを暴き、ベースボールがアメリカ合衆国のナショナルスポーツになるために、なぜ伝説が必要だったかを解明する。19世紀、さまざまにあったボールゲームのなかで、ニューヨークゲームがベースボールとしてその地位を確立し、いかにして人々の心情をつかみ取っていったか、さまざまな統計や史料などをもとに、明らかにしていくのだ。
19世紀当時、アメリカ合衆国は、フロンティア精神を持った独立自営の開拓農民の社会であった。それが世紀を挟んで、20世紀になると資本主義が勃興し、ホワイトカラーの社会へと変遷していく。しかし、人々の心性はすぐに切り替わるものではなく、古き良きアメリカ合衆国を追い求める。そこへベースボールは、田園風景の幻想をしょって、また北軍・南軍ともに楽しんだという愛国心をかきたてながら、さまざまな伝説を身にまとって登場する。そして19世紀のニッカボッカーズの時代から、20世紀初頭のタイ・カップ、ベーブ・ルースの時代まで、ナショナルスポーツとしての地位をゆるぎないものにしていく。
こういった歴史を、単色刷の新書版でありながら、多数の図版を使用してイコノロジーの手法を駆使しながら社会史的に描き出している。
アメリカ人のメジャーリーグへの思い入れの深さが、なぜもあのように大きいのか、分からせてくれる一冊である。
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竹村 洋介
たけむら ようすけ
東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。
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