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前著『エビと日本人』が出てから20年近くが経つ。前著では、世界中のエビを日本人が買いあさり、自然破壊を進めていくようすがまざまざと描き出されていた。それから20年、エビを通して見える世界はどのように変わっただろうか。その20年間の変化に焦点を当てたのがこの本である。
日本はエビの輸入大国であることに変わりはない。しかし、世界一の輸入大国の座はアメリカ合衆国に奪われてしまった。日本ではバブル経済の頃ほど、エビを食べなくなったのに対し、欧米での食の嗜好が、肉から魚介類に移っていったことによるものだ。20年前には、天然物が主流だったのに対し、現在では、台湾式の集約養殖で生産されたエビが多くなってきている。産地も変化した。かつては、台湾での養殖が盛んであったが、高密度が原因か、ウイルスが蔓延し、台湾では多くの人が養殖をやめてしまった。代わってインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイなどが台頭してきた。ヴェトナムなどのように旧東側で、かつては日本とほとんど貿易をしていなかった地域からも、輸入されるようになった。養殖されるエビの種類も、なじみ深かったブラックタイガーからバナメイへと変わった。
さりとて、日本人の食卓に並ぶエビが、東南アジアを中心に世界の食品流通に大きな影響力を持っていることに変わりはない。「暮らしの中のグローバル化」はより進む一方である。かつてエビは、マングローブに囲まれた汽水域でミルクフィッシュとともに水揚げされていた。そのマングローブは焼いて木炭として日本に輸出され、代わって集約養殖池がつくられていった。その結果、食品流通に限らず生態系まで大きく変化してしまった。
2004年のスマトラ沖地震は、漁民地帯に大被害をもたらした。それは、津波から守ってくれるはずのマングローブ林がなくなってしまっていたからだ。さらにはインドネシアのスラバヤ市シドアルジョで、天然ガス採掘のためのドリルが何か柔らかなものにぶち当たり、熱泥と呼ばれる温度60度くらいの熱い泥と有毒ガスが吹き出し、多くの村を飲み、多数の死者を出すという事件が起きる。
エビ生産にかかわる人々の生活も変化した。かつてのエビフライ工場では、現在ではパンも焼いている。社会自体が大きく変わってしまったのだ。
こういった、日本では知られていない生産現場での変化を、著者は一つひとつ、20年以上にわたって息長く現地調査し、エビを通して見える社会の変化として記述していく。食品流通にかかわる人、開発問題やエコロジズムに関心のある人、グローバル化を考える人、それに限らずエビを食べるすべての日本人に、入門書的性格をも持つ前著とともにあわせて読んでもらいたい本だ。
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竹村 洋介
たけむら ようすけ
東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。
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