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1998年頃から始めたオープン・カウンセリングをもとにまとめられた本である。相談者が個人的な悩みを「公開の場」であることを承知で語り、著者とのやりとり、そしてそれぞれのケースの見方が12のケースについて解説されている。本としては、「父」「母」「娘と息子」「自分」の4つの章からなっている。
相談内容はいろいろである。カルトからの脱会、父や母に暴力をふるう、恋人にしがみついてしまう、摂食障害、自己嫌悪等々、よくある事例かもしれないが、多様性に富んでいる。残念なことに性別同一性に関する悩みと、ひきこもり息子に関する親たちのさまざまな悩みについては割愛されているが、十分にバラエティに富んでいると言えるだろう。
一番の読みどころは、斎藤学との問答である。例外はあるが、ほとんど斎藤学の方が喋っていて、相談者の方は「そうなんですかあ、知らなかった」「どうしてですか」とほんの短い応答になっていることが多い。精神科のカウンセリングとしては珍しいのではないだろうか? そして、著者は「聞いて『受容する』」より、「ある種のことをしろと『指示する』」。これも普通の精神科医とは異なるところではないだろうか。
すべての精神疾患の原因が家族だとは言わないが、アルコール依存のような場合ですら、家族関係は病状に大きな影響を与える。それをして著者は「家族は、無言のメッセージが飛び交うところ、パラドクスの塊だ」という。このメッセージを読みほぐしていくことで、治療をすすめていこうというのである。薬物療法が主流の現在に置いて、たいへんユニークな精神医療と言えるだろう。
精神科医や精神医療に携わる人に向けて書かれた本ではない。一般書、強いて言うならば、社会科学書に分類されるのではないだろうか。家族関係というのは、社会科学の領域なのだから。副題に「アディクション・家族問題 症状に隠された真実」とあるのも、頷けるところだ。
前著『アダルト・チルドレンと家族 心の中の子ども癒す』において、AC(アダルト・チルドレン)という概念を紹介・提唱した時ほどのインパクトはないが、読みやすい斎藤学精神医療の入門書となっている。
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竹村 洋介
たけむら ようすけ
東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。
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