ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン
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第40回

2008-06-09UP

『学校裏サイト−進化するネットいじめ』

渋井哲也 著

普遊舎
本体720円+税

第41回 〜 第21回

第41回 『イラクは食べる』

第40回 『学校裏サイト−進化するネットいじめ』

第39回 『日本の行く道』

第38回 『家族パラドクス』

第37回 『エビと日本人II』

第36回 『プライドワーク―自分を作る働き方』

第35回 『しごとダイアリー』

第34回 『雨宮処凛の「オールニートニッポン」』

第33回 『ベースボールの夢−アメリカ人は何をはじめたのか』

第32回 『サマースプリング』

第31回 『右翼と左翼はどうちがう?』

第30回 『人間自身 考えることに終わりなく』

第29回 『精神科医の本音トークがきける本』

第28回 『教育大混乱』

第27回 『豊かさと棄民たち 水俣学事始め』

第26回 『全国学力テスト、参加しません。』

第25回 『狼少年のパラドクス』

第24回 『生きさせろ! 難民化する若者たち』

第23回 『親より稼ぐネオニート』

第22回 『東京から考える』

第21回 『ヒット曲が世界を変える』

 どの学校裏サイトを選ぶかは、まったくもってレシーバーである読者の自由である(受け手の能動性)。しかし、どういう学校裏サイトがあるのか知るのに関しては、メールなどに代表される個人的情報のやりとりに左右されることが多い(パーソナルインフルエンスが効力を発揮する)。マスコミュニケーション第二世代の限界効果説の枠組みを採用するならば、このように分析できる。

 しかも、その影響が、長期的かつ反復的に繰り返されることによって、イジメとしての効力は確かなものとなっていく(マスコミュニケーション第3世代複合影響説)。マスコミュニケーション論者ならば、このように整理してしまうだろう。これくらい読めていると、インターネット時代において、パーソナルインフルエンス、文化培養説など、それぞれの効力は、さまざまにいびつな形で強まっていると言う現状への予測もつく。

 しかし、それだけでは味も素っ気もなく、200ページを超える本にはならない。上記のような理論的枠組みをはみ出すかのように、問題は複雑である。普段は「言論の自由」を唱える団体ですら、「学校裏サイトは悪質ですね」との声を挙げるほどだ。ならば、規制で一網打尽にすればよいのかというと、著者はそれに懐疑的である。

 携帯電話フィルタリングをはじめとする、未成年者に対する諸規制は、ただ「大人が安心したいがための装置」に過ぎず、子どもの成長のためという眼目はおそらく無いという反論も出てくる。自分の生活に遠く離れて存在する学校裏サイトであれば、無視を決め込むこともできよう。しかし、携帯サイトという形で、日常に気まぐれに食い込んでくる学校裏サイトの存在は厄介でしょうがない。時々かまってくれたかと思うと、こちらが必要な時には知らんぷりを決め込む。それより、公式サイトでないことはわかっても、何が裏サイトなのか、現実にはハッキリしないことが多い。

 著者の周辺で起こったある裏サイトの被害は、それ自体は明らかな“裏サイト”ではなく、子ども同士がお気楽に作ったブログなのだが、URLを挨拶程度の人間にまで知らせたり、あまり親しくない誰かに知られたりした結果、ブログに匿名あるいは誰かの名前を詐称して中傷の書き込みをされた、というようなものだ。このようなケースは明らかに陰口を叩かれたのとは違う、という意見も出されたりするのだ。

 いったい、いじめはどのように進化しているのか? 

 マスコミ論者のように、理論的枠組みをおさえることは、必要な作業ではあるが、それだけでは必要十分条件ではない。そのリアリティに充ちたルポルタージュにこそ、本書の真骨頂がある。無関心と二重思考が個人を踏んづけようとする現状だからこそ、インターネットの単なる規制に終わるのではなくて、それを取り戻し解放する志向が求められているのではないだろうか?





竹村 洋介
たけむら ようすけ

東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。