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進路や学部・学科選びのポイントを、センセイ・センパイにインタビュー。シリーズ3 大学・短期大学17学問系統別、大学の先生に聞く「学部・学科選択のポイント2」

Part.2

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経済・経営・会計・商学・観光

【学べること】経済学、経営学、金融、国際経済、会計学、マーケティング、ホスピタリティー、観光など

横浜国立大学 大学院国際社会科学研究院
経営学部経営学科長
経済学博士(京都大学)
二神 枝保(ふたがみ・しほ) 教授
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
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進学先を検討する際、将来の目標や学びたいことを明らかにしたうえで、自分の希望にあった勉強・研究ができる進学先を探すことが重要だ。具体的に学部を検討してみると、同じ名称の学部はたくさんあり、大学によって学ぶ内容に特徴があることがわかる。では、どのような点に注目してこれらの学部を検討していけば良いだろうか。ここでは17の学問分野別に、大学の先生にインタビュー。自分にふさわしい学部を選択するコツ・ポイントについてアドバイスをもらった。

学部の講義では将来企業で働くうえで重要な人的資源管理の専門知識を身につける。ゼミでは自分が主体的に問題を提示したり、課題解決に向けて論理的に思考する力、洞察力、プレゼンテーション能力、ディベート能力を身につける。

▲二神 枝保 教授

横浜国立大学は教育人間科学部、経済学部、経営学部、理工学部の4学部で構成されており、貿易と商工業の街、横浜の歴史と伝統に根ざした実学志向の実践的教育を行っています。

経営学部には、人、物、金、情報、知的財産といった経営資源活用の目的に応じて経営学科、会計・情報学科、経営システム科学科、国際経営学科の4学科が置かれていますが、所属学科以外の講義科目やゼミも自由に履修できるのが特徴です。

私の専門は経営学、特に人的資源管理論(ヒューマン・リソース・マネジメント)です。人的資源管理論では人間が重要な経営資源であり、人的資源をどうマネジメントするかを研究しています。経営学部では経営学総論と人的資源管理論、大学院では人的資源管理特論、ヒューマン・リソース・マネジメント、人的資源管理研究という科目を担当しています。

学部での人的資源管理論の講義

学部の人的資源管理論の講義では、なぜ人は働くのか、キャリアはどのように形成されていくのか、人が組織の中でどうすれば生き生き働けるのか、リーダーシップはどうすれば発揮できるのかなどの諸問題を探求していきます。人という経営資源を大切にして、その能力をいかに最大限に開発するかという考え方に基づき、こうした素朴な問題を学生と一緒に考えます。皆さんが将来企業という組織で働いていくうえで非常に重要となる専門知識、考え方などを身につけるのがねらいです。

私は、人的資源管理論の講義で平成25年度ベストティーチャー賞をいただきました。これは本学の教員の中から、学生の満足度が高く、将来役に立つと思われる講義を行う教員に与えられるものです。学生が講義に主体的に参加し、理解を深めるため、双方向な講義を心がけています。

例えば、書き込み形式の資料を配布したり、学生同士によるディスカッション時間を設置したり、講義中にミニテストを行うなどのほか、理論を身近な体験や事例に結びつけるといった工夫もしています。

ゼミでは合同合宿・討論会も

本学では2年生の後半から、少人数制の専門教育としてゼミナールが始まります。私のゼミでは開設当初から毎年、3年後期に、神戸大学、関西大学と合同ゼミ合宿・討論会を行っています。

ダイバーシティ、キャリア開発、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)など共通テーマを設定し、その中で学生たちが関心のある個別テーマ、例えばワーク・ライフ・バランス、長時間労働の問題、高齢者雇用、若年者の離職などのテーマに関して文献レビューや企業へのヒアリングなどを実施して、問題意識を提示し、プレゼンテーションとディベートを行います。

学部の講義では専門知識を身につけ、いろいろな考え方を知る。そしてゼミでは自分が主体的に問題を提示したり、解決に向けて論理的に思考する力、洞察力、プレゼンテーション能力、ディベート能力を身につけます。現在は企業から社会人基礎力、エンプロイアビリティが求められていますが、ゼミでの経験は社会に出たときのコアになる能力をつける上で大きく役立っていると思います。

4年生では卒論を作成しますが、3年生までに問題意識が高まっていますので、卒論テーマの設定はスムーズです。また、大学院ではさらに深い専門のテーマについて研究を進めます。

私の研究テーマは、日本とヨーロッパの人材開発の比較です。国際労働機関(ILO)やチューリッヒ大学に客員教授として滞在する機会があり、そのときの調査が基になって、日本、スイス、ドイツ企業の職業教育・訓練システムの比較研究を行っています。最近ではフランスの企業も含めて、グローバル人材の育成というテーマにも取り組んでいます。また大学院時代から女性のキャリア開発の研究も続けています。

高校生へのアドバイス

将来自分が何をしたいのか、何になりたいのか、将来必要なこととして大学で何を学びたいのかを明らかにすることが大切だと思います。つまり明確なキャリアビジョン、展望のようなものを持つのが重要です。大学の4年間はあっという間ですので、有益に過ごして頂きたいです。大学に入学する前から自分のキャリアをどのようにつくっていくかを考えることには大きな意味があると思います。

とはいえ高校生が、将来自分が何になりたいのかはっきりさせるというのは、難しいと思います。ヨーロッパでは、さまざまな職場で職業学校の学生が就業体験しています。私がチューリッヒ大学に行ったときは、秘書室で実習生が秘書の仕事を体験していましたし、ILOでも大学生が3ヵ月程度の就業体験をしていました。そういう意味では産官学連携がうまく機能しています。

ヨーロッパと日本では教育制度も違いますが、例えば日本でも横浜国立大学教育人間科学部附属鎌倉中学校の生徒たちが、企業経営の話を聴くため私の研究室を訪れてくれました。さまざまな職業を体験してみること、専門の話を聴きに行くよう心がけることは重要だと思います。

大学を選ぶ際には、大学の広報誌やホームページ、進学情報誌を読んでみることも重要だと思いますし、オープンキャンパスでは質問コーナーで大学教員に話を聴いてみるとよいと思います。情報収集しながら、自分がやりたいことを見つけていくとよいでしょう。

経済学部と経営学部の違いとは

本学にも経済学部と経営学部がありますが、経営学部と経済学部のどちらを選ぶのかに迷うという話をよく伺います。非常に簡単に言えば、経営の方が、主体が企業経営のため活動がミクロでより実践的です。経済は国の経済活動等を扱うので、よりマクロで理論的になります。

卒業生の就職先リストもご覧いただくのも学部の特性をみるのに役立つかもしれません。また個別の先生の研究テーマ、ゼミ活動まで掘り下げて見ていただくと、より違いが鮮明になると思います。進学した先輩に話を聴くのもよいですね。

1年生の最初の頃は、誰も相談する人がいないので困ると思います。そこで本学では、コンタクト教員制度を設けています。新学期から担任の先生と個別に面談する時間を設けて、科目履修や学習方法などの相談やサポートを行っています。

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