ティースタライフ

Teaching Staff Life…ベテラン教員から後輩に贈るメッセージ

#06

いつも生徒と同じ場所にいて
話を聞いている存在に

桐朋中学校・桐朋高等学校 
進路指導部主任
三堀 智弘 先生
※部署名、役職名などは取材当時のものです
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 更新:

著名な音楽家を多数輩出する音大というイメージがある一方で、その他にも男子部門(国立市)、女子部門(調布市)の3部門からなる桐朋学園。男子校の桐朋中学・高校は、自由闊達で自主性を重んじる校風を持ち、国立難関校にも毎年多くの合格者を送る東京西部の伝統校として名高い。

自分で切り拓く進路をサポート

これまで、中1から高3まで一巡する担任を2回、高1から高3まで一巡する担任を1回経験しました。そのほかにも数学の教科主任などを経て、今年度から進路指導の担当を勤めています。私自身は担任として生徒と接していたいタイプですが、その延長という意識で勤めています。

進路指導に当たっては、生徒が自分で進路を切り拓けるようサポートする姿勢で臨んでいます。

高1の時点で、社会人としてはまだ新人である本校卒業10年のOBを招いて、在校生と卒業生の懇談会、「在卒懇」を催しています。先輩の話を聞いて、どういう進路を辿るとどういう仕事に就けるのかといった将来のイメージを持ってもらう懇談会です。同じ高1の夏に、将来への夢を綴る文集を作るのも進路指導の一環です。

高2の在卒懇では、大学の研究職のOBを招いて、具体的な学部・学科選択のイメージを語ってもらいます。高2ぐらいまでは多くの生徒が東大をはじめとする難関校を志望しますから、その学力をつけるよう頑張るか、あるいはもう少し現実的な選択肢も探っていきながら、最後に高3の面談で、最終的に学部・学科や大学を決めていきます。

以前と比べると、生徒の気質は素直で真面目になって、破天荒なパワーを持った生徒は少なくなった印象があります。保護者の気質の変化もある程度反映しているのかもしれません。若い先生方にとっては、年々、パワーのある保護者への対応が大変になってきている面もあるなと感じますね。

数学が苦手な生徒も
取り残さない

子供のころは、年の離れた弟妹に勉強を教えるのが私の楽しみで、人と人との信頼関係を基盤とした教員という仕事には憧れがありました。また、どうすればわかりやすく教えられるのかという点にも興味がありました。幾何の美しさや数学の面白さに目覚めて数学科に進み、その楽しさを伝えたいと思い、教員になりました。

高3の数学では、授業の前に生徒たちが各自の解を板書しておきます。私はそれを黄色のチョークで添削したり解説したりするのが授業のスタイルになっています。教科書に書いてあることはもちろん教えますが、その図形的な背景やそれが成り立ってきた根拠にも言及します。

数学の楽しさを伝えたいという思いに、生徒が応えてくれるのは嬉しいですね。東大の数学科に進んだ教え子が本校に教員として赴任してくれたのは教員冥利に尽きます。「大学の数学科で学ぶような世界観を、高校生の言葉に翻訳して教えてくれていたことが大学で初めてわかった」と言ってくれたときは嬉しかったです。

勉強を筋トレに例えると、凄くハードでも逆に易しすぎてもやる気が出ません。少しきつい程度の問題に向き合い続けると、考える楽しさが芽生えて数学と友達になれます。

本校は、小学校から進学してきた生徒と、中学、高校と入試を受けてきた生徒が混在していて、学力も混在しています。数学の苦手な生徒も取り残さないように、言葉に気を遣ったり、追試や補習、マンツーマンの指導なども行ったりしています。

長期休暇の度に最初の3日間で補習を行いますが、この期間は、それだけで向上するというよりはスイッチオンの3日間で、この補習には長期休暇の残りの日々も頑張ってほしいというメッセージが込められています。

失敗を人に言えると
やりやすくなる

新任の時代は、毎日が一生懸命という感じで先のことは見えず、失敗をほかの人に言いにくかったように思います。それが経験を積んで教員室で失敗をポロっと言えるようになると、すごくやりやすくなりました。それと、二巡目の担任の時には、一巡目の担任の時に自然にうまくいっていたことが一筋縄でいかない時期があって、様々なことが見えてしまう分、かえって難しく感じたのを覚えています。同じ教科の先輩が親身に話を聞いてくれたことを今でも感謝しています。

若い先生には上から伝えるよりも、良いところを伸ばすような声がけができればと思っています。

一番伝えたいのは、生徒の近くにいるということ。いるのといないのとでは、やはり違います。関係性をつくって近くにいれば、大事なことは生徒が教えてくれるようになります。また、卒業生の言葉も本当に勉強になりますよ。委員会でもホームルーム活動でも、生徒のいる場所には座っていて、ここぞというときはアドバイスできる存在であってほしいですね。

桐朋中学校・桐朋高等学校 
進路指導部主任
三堀 智弘 先生

[プロフィール]
1976年生まれ。数学科教科主任などを歴任して、2018年度より進路指導部主任。

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