第5回

『難民高校生―絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル


仁藤 夢乃(にとう・ゆめの)
英治出版/本体1,500円+税
更新:2013/10/07

1989年生まれの若者がまとめた、社会起業家第二世代の本である。これがこの本の一番の特徴だが、想定される読者の幅は広い。さまざまな読み方ができる。

想定される読者は、第一に、今ここで身の置き所のない気分になっている高校生。自分がどこにいるのかを確認することができる。第二に、キャンパスで思い悩む大学生。学生生活について先輩が優しく励ましてくれる。第三に、東日本大震災で被災した人びと。若い世代に希望をかけることができる。第四に、教師をはじめとする教育関係者。目の前の若者のことを考えるきっかけをつかむだろう。

仁藤は、渋谷の街で月25日を過ごす高校生だった。学校へはろくに行かず、家にも帰らない生活をおくっていた。彼女の周囲には「居場所がない高校生」がたくさんいたという。高校2年で中退。河合塾コスモコース(コスモ)へ入塾。高認(高等学校卒業程度認定試験)に合格。コスモの付属施設の農園で、講師の阿蘇さんの導きによって自分の知らない世界がたくさんあることを知るようになる。農園でクルド難民の家族と出会う。フィリピン旅行では風俗店で働く女の子たちと出会う。

そういう日々をおくるうちに「何か問題があったとき、なにかできるようになりたい。だけど、問題の原因がかわらなければ解決方法もわからない。だから、まずは社会のしくみを知りたい」と考え、大学進学を決める。2008年4月、明治学院大学社会学部のAO入試に合格して入学。1年生の終わりには「学業優秀賞」を受けた。

2011年4月、東日本大震災の被災地の宮城県石巻市へ行き、避難所で高校生たちと語り合う。「自分たちも何かしたい」という高校生たちのおもいに応え、お菓子の商品開発をして広く販売する。この活動を引き継ぎ、一般社団法人Colabo(コラボ)を立ち上げ、渋谷センター街近くに事務所を構える。そのHPによれば、大学を卒業した4月“十代の女の子のためのコラボスペース”あるいはまた“難民高校生の駆け込み寺”という居場所づくりを始めたという。

石井 タケオ
いしい たけお

書評家。教育雑誌、書評専門紙、出版業界誌などで、教育書を中心に本の紹介を続けてきた。“学校”と“本”はメディアとしての共通性を有している。 じっさい、近代化の時代には、師範学校教師の下中弥三郎のように、平凡社を創業して日本初の百科事典を刊行するという具合に、二つの世界で活躍した人物がいる。 最近はどうだろうか。メディアの語源がメディウム(霊媒)であるにもかかわらず、“学校”と“本”の力が衰弱しているようにみえる。この連載を通して、二つのメディアの力を、あらためて確認したい。