シリーズ9

専門学校の実力
Part.1 データで分析する専門学校の現状


編集部
※学科・コース名称、施策、役職名などは取材当時のものです
現在の制度については各学校に確認してください

更新:2009/11/09
専門学校の特色の1つは、就職に強いことだ。職業に直結する教育で高い就職率を実現し、それが高校生の進学先として根強い人気を保つことにもつながっている。しかし、事実上の大学全入時代の到来、世界同時不況による家計の厳しさなど専門学校を取り巻く環境が大きく変化しているのも事実。そこで、今回のシリーズでは、就職支援や就学支援の取り組みを中心に専門学校の「いま」を検証するとともに、今後の方向性など「未来」への展望も探っていく。
Part.1では、文部科学省の「学校基本調査」をもとに、客観的データから専門学校の近年の動向と現状について、大学・短期大学との比較も含めて分析した。

学校数の変動が少ない専門学校
2009年はピーク時の2.9%減

まず、専門学校(専修学校のうち専門課程を置く学校)の最新の概況を確認しておこう(図表1参照)。

平成21年(2009年)の学校基本調査速報による専門学校の学校数は2,931校で前年度より37校減少。一方、大学は773校で前年度より8校増加、短期大学は406校で前年度より11校減少している。20年間の推移を見てみると、専門学校は1990年に2,731校、1998年の3,020校がピーク。その後はわずかな増減はあるものの、ほぼ3,000校前後で推移。2008年、2009年はやや減少傾向だが、減少幅は小さい。ピークだった1998年との比較でも2.9%減にとどまっている。

大学・短期大学の校数増減率を同期間(1998年と2009年)で比較してみると、大学は28.0%増、短期大学は31.0%減となっていて、変動幅の大きさが目立つ。これに比べると、専門学校の校数は安定した推移であることがわかる。

約3,000校という絶対数の多さも専門学校の特徴だ。全国に数多くの専門学校があるということは、高校生にとってはより身近な場所で学べる可能性が高くなるとともに、志望分野における学校の選択肢も増えることにつながる。

大学進学率の急上昇により
専門学校進学率は低下傾向

次に高校新規卒業者の進学率を見てみよう(図表2参照)。

2009年は、専門学校への進学率は前年度比0.6ポイント減、大学への進学率は1.3ポイント増、短期大学への進学率は0.3ポイント減となっている。

専門学校について20年間の推移を見ると、1990年が15.8%で、その後ほぼ横ばいが続いたのち1999年から緩やかな上昇基調となり、2004年には19.2%でピークとなる。その後は減少に転じ、2009年はピーク時に比べて4.5ポイント減となった。

ここ数年の専門学校への進学率の低下は、直接的には大学進学率の上昇が大きく影響している。大学進学率はこの20年間上昇を続けているが、2000年から2004年は微増で、いわば階段の踊り場のような状況だった。その後、上昇傾向が顕著となり、2009年までの5年間で実に10.0ポイントも上昇している。

この急上昇の要因として、いちばん大きいのは事実上の「大学全入時代」を迎えたことだ。数字のうえでは、まだ「全入」には至っていないものの、前述したように大学数は増え続け、大学はかつてに比べると格段に入学しやすくなっている。

これだけ短期間に大学進学率が急上昇すると、専門学校や短期大学の進学率が低下することは避けられない。ただ、専門学校進学率はここ5年間は低下傾向にあるとはいえ、20年前との対比ではわずか1.1ポイント低下しているだけ。短期大学進学率が20年間でほぼ半減していることを考えると、長いスパンで見れば根強い人気(ニーズ)を保っているということができる。

入学者数1位が続く医療分野
景気の影響が大きい工業と商業実務

専門学校の生徒数について、ここでいくつかの観点から見てみよう。まず、専門学校には8つの分野があるが、その分野別の生徒数比率は次のようになっている。なお、2009年の学校基本調査速報では専修学校全体の分野別数値が掲載されているので、2008年の学校基本調査から専門学校の数値を算出した(図表3参照)。

それによると、専門学校の分野のうち生徒数が最も多いのは医療で全体の34.9%を占めている。次いで、文化・教養19.0%、工業13.8%、衛生12.1%、商業実務10.0%、教育・社会福祉6.2%、服飾・家政3.4%、農業0.7%となっている。

この生徒数は、修業年限に関係なく専門学校に在籍する生徒数を合計したもの。そのため、たとえば医療のように3年制以上の課程が多い分野は1学年あたりの比率よりも数値がやや高めになる。そこで、高校卒業生の志望動向がより明確に表れる分野別入学者数の推移をまとめてみた。なお、これも2008年までの学校基本調査の数値である。

この20年間の入学者数の変化で最も顕著なのは、医療の増加と工業および商業実務の減少だ(図表4参照)。

1989年から1994年までは工業1位、商業実務2位が指定席だった。しかし、工業や商業実務がバブル崩壊後の不況のなかで入学者数を減らしていったのに対し、医療は増加基調が続き1995年に商業実務を抜いて2位となり、1999年には工業も抜いて1位となる。以後、2008年まで1位を保っている。

実数で見ると、工業の入学者数は1991年がピークで10万4,487人、商業実務は1992年がピークで8万2,032人だった。それが2008年には工業3万7,342人、商業実務2万8,387人にまで減少。それぞれピーク時の3分の1ぐらいになっている。

この大きな要因の1つとして、バブル経済崩壊後の長期不況がある。さらに、工業については、1990年代のゼネコン不況、2000年頃のITバブル崩壊など個別業界の不振が影響した面もある。要するに、旧来型の製造業や建設業、あるいはIT関連企業などへの就職が敬遠された結果、それらの業界に直結する分野への入学者が減少したということだ。

一方で医療は、人材ニーズが増大を続けていたこと、好不況の影響を受けにくいこと、資格(必須)職であることなどから高校生の人気を集めることになった。

衛生と教育・社会福祉も人気
文化・教養は入学者数2位を維持

衛生、教育・社会福祉も、2005年までは長く増加基調が続いていた。どちらも、医療と同様に資格職に就けることが人気を集める大きな要因であり、衛生では製菓の人気が高まったことも要因の1つになっている。

ただ、資格職でも介護については、2005年(学校基本調査に「介護」という分類で数値が出るようになった年)には入学者が1万1,065人だったが、2008年には5,896人でほぼ半分に急減している。これは、介護現場での人材ニーズは依然として高いものの、介護職の労働環境や待遇が必ずしも仕事に見合ったものになっていないことが影響していると考えられている。

文化・教養はこの20年間、堅調な推移を見せている。2003年には工業を抜いて2位となり、現在までその位置を保っている。文化・教養はもともと、そこに含まれるジャンルが多様であり、なかでも音楽、デザイン、演劇・映画、外国語などはコンスタントに入学者を集めている。さらに、時代の変化に合わせた新傾向の学科をいち早く設置する傾向も強い。最近では、スポーツ、動物などが代表例で、人気も高い。

服飾・家政はこの20年間、入学者の減少傾向が続いている。各年ごとの減少率は大きくはないが、1989年には入学者が2万8,065人だったものが、2008年には9,761人で、ついに1万人を割り込んだ。もともとこの分野は、職業人をめざすだけでなく、家庭人としての知識・技術を習得しようとする人も少なくなかった。しかし、時代とともにそうした志向の入学者は減少した。また、大学志向が強まるなかで、大学の家政・生活科学系に進む高校生が増えたことも影響しているようだ。

農業は、おおむね上昇基調が続いている。2003年にいったん減少するものの、翌年から再び上昇に転じ、2008年は20年間で最高の1,749人となっている。これは、バイオ関連学科が人気を集めていることによるものだ。

なお、農業以外の分野は2005年頃から入学者数が減少しているが、これは高校卒業者数の減少と専門学校進学率の低下というダブルパンチによるもので、やむを得ない面がある。

20年にわたり高い就職率を保つ
ここ2年は80%を超える実績

次に就職率を見てみよう。これも数値が出ている2008年までの学校基本調査から算出したものだ(図表5参照。全卒業者総数を100%として、就職者の占める比率を算出)。

2008年の就職率は、専門学校は80.9%、大学は69.9%、短期大学は72.0%となっている。専門学校が最も就職率が高く、短期大学が大学をやや上回るかたちだが、実はこれは20年間ほぼ変わらない構図だ。

就職率の推移を振り返ってみよう。20年前の1989年。時代はまだ「バブル」だった。そのためもあって、就職率は専門学校が88.0%、大学が79.6%、短期大学が85.1%と非常に高いレベルになっている。この状態は1992年まで続く。しかし、バブル崩壊後の不況色が強まる1993年から、とくに大学・短期大学の就職率は下降線を描き始め、2000年には大学が55.8%、短期大学が56.0%まで下がってしまう。大学はピークの1991年に比べて25.5ポイント、短期大学はピークの同年に比べて31ポイントも低下している。

ところが、専門学校の就職率推移はかなり異なる。1993年から1995年にかけてやや低下するものの、1996年、1997年には微増に転じ、1998年も82.9%で、この年まで就職率は80%台を維持。1999年には78.4%となり80%を割り込むが、それもわずかな低下だ。その後もほぼ横ばいを保ち、2007年、2008年と再び80%台に盛り返してきた。

このように高い就職率を維持している大きな要因としては、企業が求める能力を備えた人材を育てていること、学校が就職先の確保や新規開拓に力を入れていること、入学時から内定が決まるまで学生の就職支援をきめ細かく進めることなどがあげられる。

また、専門学校は学んだことに関係する分野への就職率も高い。2008年の場合、就職率は前記のように80.9%で、関係分野への就職率は75.2%となっている。これを就職者のうち関係分野に就職した者の比率に直すと、実に93.0%にもなる。就職に強いことが特色、魅力になっている専門学校の面目躍如といったところだろう。

専門学校の2008年の就職率を分野別に見てみよう(図表6参照。分野別に全卒業者総数を100%として、就職者の占める比率を算出)。

服飾・家政、文化・教養は就職率がやや低い。服飾・家政の場合は、入学者数のところで触れたように、減ってきたとはいえ、もともと就職志向ではない学生もいることなどが影響している面もある。文化・教養の場合は、クリエイターや表現者をめざす学生が必ずしも正社員としての就職にこだわらないことや、新傾向の学科では人材の受け皿としての産業がまだ大きくなっていないことなどが影響しているとみられる。

国家試験合格率も高いレベル
細かな試験対策で学生を指導

最後に、専門学校の国家試験での実績も確認しておこう。専門学校の各分野のなかでも医療などは、希望する職種に就くには国家資格が必須であり、その資格は国家試験に合格しないと取得できない。したがって、国家試験の合格率は非常に重要な意味を持つ。

ここでは、医療関係の主な職種と管理栄養士について、2008年度(2009年2月頃実施)の国家試験合格率を算出してみた(図表7参照)。なお、いずれも新卒だけを抽出した。また、看護師については准看護師免許取得者が学ぶ課程などは除いた。

その結果、看護師は95.9%、臨床検査技師は83.1%、診療放射線技師は82.3%、臨床工学技士は89.5%、理学療法士は93.7%、作業療法士は84.6%となっている。また、管理栄養士は82.9%となっている。いずれも全体平均と比べて遜色ない合格率であり、なかには全体平均を上回っているケースもある。

こうした国家試験合格率の高さは、各専門学校の指導に支えられている部分が大きい。たとえば、看護系のある専門学校では、国家試験対策テストを実施して各学生の弱点を明確化したうえで、それを補うための学習計画を立てたり、特別講義を行うなどきめ細かくサポートしている。学校によって多少の違いはあるにしても、このような指導の積み重ねが国家試験合格への道を開くことにつながるといえるだろう。

《Part.2 につづく》

〔資料出所:学校基本調査〕

〔資料出所:学校基本調査〕

〔資料出所:学校基本調査〕

〔資料出所:学校基本調査〕

※全卒業者数を100%とした場合 〔資料出所:学校基本調査〕

※分野別に全卒業者数を100%とした場合 〔資料出所:学校基本調査〕

〔資料出所:厚生労働省〕

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