そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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「昨日までそれがなかったように
丁寧に話す」ということ

認定特定非営利活動法人 育て上げネット
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

広報という立場で仕事をしていると、さまざまな場で説明を求められます。「若者支援」はまだまだ知られていないこともあって、育て上げネットの設立から20年近くたったいまも、聞かれる質問は当時とさほど変わらないと聞きます。

一体いつまで同じ話をしなければならないのか⋯。ゼロからスタートする話って、いい加減、相手も期待していないのではないか⋯なんて思ってしまうこともあるのですが、そんなときに新しい気付きがありました。

最近、私たちはふるさと納税を活用して寄付を募る機会をいただきました。「ガバメントクラウドファンディング」という比較的新しい取り組みです。この制度について職員にも知ってもらいたいからと内部向けに説明会を開いたところ、大きな間違いがありました。

直近のニュースによると、ふるさと納税を通じた寄付の流通額は年間1兆円を超える勢いなのだそうです。大学時代の友人も家族も以前から使っていた制度でしたから、すでに多くの人はふるさと納税のことを知っているのだと思っていました。

ですが、実際に説明会を始めると想像していなかったリアクションが届くようになりました。
「そもそもふるさと納税ってなに?」
「“還付”や“控除”ってどういうこと?」
「どこから寄付するの?」
そんな基礎的な質問がほとんどだったのです。

私はふるさと納税の制度そのものについての説明は省こうとしていました。あくまでガバメントクラウドファンディングの制度について、またそれが普通のクラウドファンディングとどう異なっているのか⋯という話をしようとしていました。

それは「ふるさと納税のことはもうみんな知っているよね」という誤った認識が私にあったためでした。「これは省いてもわかってもらえるよね」と説明を怠ったために何歩も先の話から始めてしまったのです。

ふるさと納税のことについてゼロベースで話すようになって、その理解は非常に進んだと思います。多くの人が「みんなふるさと納税やっているけど、今更聞けないな」と踏みとどまっていたのです。

どんなときでも新鮮な気持ちで。昨日までそれがなかったように丁寧に説明しなければならないなと反省していたとき、あるお笑い芸人さんがラジオで「やってる本人が持ちギャグに飽きたらダメなんだよ」と話していました。この言葉にはとても近しいものを感じました。

説明することに飽きてはいけませんね。みんなが知っているよねと決め込んだのも、私の思い込みでしかありません。

「昨日までそれがなかったように丁寧に」

来年の標語に良いかもしれませんね。

2023年はコロナ禍を過去と捉えられるような日々が続き、本当の意味で日常を感じさせる時間がありました。一方で、世界は混乱が続き、いつ、次の緊急事態がやってくるかもわからない日が続いています。来年が、日常を貴重なものと思わなくていい日々であることを願っています。

みなさまもよいお年をお過ごしください。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか


認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)

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