EYE's Journal

いま知りたい教育関連のテーマについて、ドリコムアイ編集部が取材・調査

38-8

シリーズ38 新しい大学入試
Part.8 
文部科学省に聞く
今後の動向と高校の対応(後編)
試行調査検証し共通テストに反映
生徒の学力三要素育む教育を

文部科学省 高等教育局高等教育企画課 専門官
大塚 千尋(おおつか・ちひろ)
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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今年4月の高校入学者から、2020年度実施の大学入学共通テストを受けることになる。昨年11月には試行調査(プレテスト)も実施された。新しい大学入試はもう動き出したといっても過言ではない。そこで、文部科学省で高大接続改革を担当する大塚千尋専門官に、試行調査の評価、今後のスケジュール、高校における対応のあり方などについて話を伺った(全2回)。

《 Part.7「今後の動向と高校の対応(前編)」からの続き 》

英語民間試験の実施先決定へ 
受検機会や受検料にも配慮

▲大塚 千尋 氏

高校も大学も、共通テストには非常に大きな関心を寄せているが、これまでにどのような意見や要望などが出てきているのか、それにどのように対応していくのかについても伺ってみた。

「高校からは、共通テストの全貌を早く知りたいというお声をいただいています。それについては、我々もスピード感を持ちつつ拙速にならないように準備を進め、全貌が見えるようにしていきたいと考えています。

たとえば、英語については、11月下旬から、共通テストに参加する民間の資格・検定試験の申請の受付を開始しました。2017年中に申請が出そろうので、まず、どこから申請があったのかという情報を公開していくつもりです(注…2017年12月26日に大学入試センターのHPで、申請のあった試験について公表済)。そして、2017年度中を目途に参加する資格・検定試験を決定し、公表する方向で検討しています。

英語については、へき地や離島では均等な受検機会が得られないのではないかということや、経済的な負担増になるのではないかといったご心配もいただいています。

これについては、今回の成績提供システムへの参加の要件として、受検機会の確保や受検料に配慮することも盛り込んでおり、それを満たしているかを含めて審査を行います。

共通テストそのものについては、やはり記述式の採点が公平に行えるのかというご懸念がありますので、試行調査でいろいろな観点からチェックと評価を行い、精度の高い公平な採点ができる体制を組めるようにしていきたいと考えています」

記述式段階評価のあり方を検討 
高校・大学の意見も踏まえて

全貌を早く知りたいという声は、高校と同様に大学からも寄せられているそうだ。

「国立大学協会など大学側からも、早く全貌を示してほしいといわれています。そして、記述式の採点基準や成績提供のあり方についても、早く情報がほしいというお声を寄せていただいています。

記述式については、段階評価になる予定ですが、その段階も例えば3段階にするのか5段階にするのかといったことを詰めなくてはいけません。

これについても、今回と次回の試行調査で実際に採点をしてみて、どういうかたちがいいのかを検証していきます。さらに、マークシート式の問題も併存しますので、成績提供に当たってそちらとの関係をどうするかという問題もあります。

こうした成績提供のあり方については、大学関係者、高校関係者の皆様とも適時ご相談して、ご意見を伺いながら、さらに検討していきたいと考えています」

経済的な負担については、共通テスト自体の検定料も課題になっているという。センター試験の検定料は二段階だが、共通テストの検定料の設定をどうするか、さらに「このほかにも何らかの負担軽減策があり得るか、文科省としても考えていきたい」としている。

各大学の選抜方法公表は2年程度前 
生徒に向き合い三要素育む授業を

2020年度の共通テスト実施に向けて、今後の大きなステップとしてはどのようなものがあるのだろうか。

「大きなステップとしては11月に実施する2回目の試行調査、2019年度初頭をメドにした『実施大綱』の策定と公表があります。2019年度には必要に応じて『確認試行調査』を実施する可能性もあります。

各大学については、入学者選抜の大きな変更については2年程度前までに公表していただくことになっているので、共通テストの利用科目や配点、個別試験との組み合わせ方など選抜方法を適切なタイミングで明らかにできるように、文科省としてもそのために必要な情報を提供し、サポートしていくつもりです」

共通テストの実施は3年後。高校では、今年の入学者から共通テストを受験することになる。当然、共通テストに向けた準備を本格的に進めていく必要があるが、どういう考え方で、どのような準備をしていけばいいのだろうか。

「高校からは、どういう対策が必要かというご質問もいただくのですが、何か特別な対策が必要というわけではないと思います。

今回の入試改革は、生徒1人ひとりの学力の三要素、つまり、知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を、高大一貫して、そして、高校と大学をつなぐ入試のなかで評価し、生徒・学生を育てていくという高大接続改革の理念に基づくものです。

したがって、高校においては、学習指導要領に沿って、1日1日の授業を、学力の三要素を育みながら生徒の多面的・総合的な評価を行うような方向で進めていただくことが重要ではないかなと思います。

共通テスト自体も、何か受験テクニックのようなものがあって、それを使えば簡単に高得点がとれるというような内容にはなりません。

激動の時代のなかで、生徒1人ひとりが学力の三要素を身につけて、ゆたかな人生を切り開いていくためにはどうしたらいいか。それを、それぞれの高校ごとにご検討いただいて、1人ひとりの生徒に向き合っていただくことが、結果的には共通テストの対策にもつながるのではないでしょうか」

24年度にはより包括的な改革 
CBTも視野に準備を進める

当面の関心は2020年度に向けられているが、今回の入試改革全体を見ると、2020年度はスタート地点であり通過地点といえる。より本格的に改革された入試が実施されるのは2024年度になるからだ。そのとき、大学入試はどのような姿になり、そこに至るまでにはどのような準備を進めていくのだろうか。

「2024年度からは、新しい学習指導要領を基に、さらに改革を進めた入試を実施する方針になっています。たとえば、記述式についても、当面は国語と数学の2教科ということになっていますが、2024年度以降は地理歴史、公民、理科の分野でも記述式を導入する方向で検討していきたいと思っています。

英語についても、共通テストと資格・検定試験が2023年度まで併存しますが、2024年度以降は資格・検定試験による4技能評価に移行する方向で検討したいと考えています。

このように、2024年度以降は、今回の改革の理念をより包括的なかたちで実現できる入試を実施していくことになります。文科省としては、まずは2020年度からの改革を円滑に進め、生徒さん1人ひとりが安心して試験を受けられるような準備を着実に進めていくことが第一歩になります。

さらに、それを踏まえて、新たに出てくる課題などの改善も進めながら、2024年度からのより包括的な入試改革のフェーズに備えていきたいと考えています」

2024年度以降、CBTの導入も想定されているが、その点についてはどうお考えなのかも伺ってみた。

「CBTについては、多様な表現形態による様々な資料や動画等を活用した問題などにより、ペーパーテスト以上に思考力・判断力・表現力を評価できる可能性もあります。また、複数回受験ということが今後の検討課題の1つですが、複数回受験を実現するにはペーパーテストでは難しいので、CBTにしていく必要があると考えています。

ただ、CBTにするには、膨大な問題の蓄積をしなければならないことや、環境整備などの導入のためのコスト、1回目に受けた試験と2回目に受けた試験で有利不利が生じないようにすることなど課題もあり、実施は簡単ではありません。とはいえ、将来的にCBTを導入することは重要な検討課題の1つになっているので、必要な準備を着実に進めていきたいと考えています」

平成30年度 試行調査(プレテスト)計画

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出典:独立行政法人 大学入試センター

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