そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏によるエッセー

94-1

94-1
挑戦すること
~周囲の反対に負けない意志~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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先日、友人が結婚の報告をくれました。友人といっても15歳近く年下です。偶然の出会いでした。別の友人から、留学するか悩んでいる大学生がいるので相談に乗ってほしいと言われたのがきっかけです。留学の理由を聞くと、「英語が話せるようになった方がいいかと思って」ということなので、「なぜ、英語が話せるようになりたいの?」と聞くと、あまり明確な理由はなく、将来的に英語が話せるようになっていないと仕事などで不安ということでした。

彼は理系の学部生で、研究が非常に多忙でアルバイトをする余裕もないようでした。それでも社会経験の一環として育て上げネットに少しだけインターンシップに来るようになりました。時間をやりくりしてアルバイトも始めました。

その後、さまざまな話をする中で、大学を一年休学してNPOで働いてみようと思うに至りました。親に相談をしてもなかなか受け入れられず、大学の担当教授からは一年休んでしまうと、その後の面倒は見られないかもしれないと突き放されました。理系の学生として休学をする例は、彼の大学にほとんどなかったようです。

周囲の反対、親の不安の中、彼も悩みぬきました。休学するもしないも彼次第で、私が決められるものではありません。私ができることは彼の決断を尊重し、その決断が後悔につながらないように少し助言することくらいです。

休学を決断して一年、彼はNPO活動を通じてさまざまな社会人と出会い、企業や大学との協働研究に尽力し、その成果が大きく新聞に取り上げるなど、周囲も少しずつ彼の挑戦に理解を示し始めました。また、海外への道も開きました。アジアを歩き回る知人を見つけ、世界に飛び出しました。

多くのひとが心配した就職についてはどうだったでしょうか。いくつもの内定をもらい、まだ就職が厳しいと言われていた時期に、彼は選べる立場になっていました。その理由は休学したことでも、NPOで働いたことでも、海外に行ったことでもないと考えます。

いま、言われたことだけをする人材は重宝されません(言われたことをすることは重要です)。それ以上に、周囲が理解できなくても、まだ誰もやっていなくても、それに負けない意志を持って挑戦する、挑戦し続ける人間性が評価されるのです。周りの友人と違う道を選ぶことは勇気がいります。たくさんの「うまくいかなかった話」も「成功につながった話」も、ここかしこから入ってくるでしょう。そこに正解はなく、あるのは自分の意志だけです。

久々に会った彼は、出会った頃とは見違えるほどの大人に成長していました。きっと、勇気ともっていくつもの意思決定と失敗を繰り返してきたのでしょう。やさしく、おっとりしたタイプではありますが、彼の口から発せられる言葉の端々に、意志の強さを感じることができました。

何かを選ぶこと、決めることは、自分事です。そして、そこに強い意志があれば、意思決定の結果がどうあれ後悔することはないでしょう。私も彼のように勇気を持って人生を歩んでいきたいと思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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