そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏によるエッセー

94-2

94-2
挑戦すること
~自らの挑戦を他者に生かす~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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先日、東京マラソンに出場してきました。今回からゴール地点が東京駅近くに変わり、2020年の東京オリンピックマラソン競技と同じコースだったようです。私は自分のペースで走っているだけですが、トップ集団が走るスピードを間近で見て、「ひとは42.195キロをこんなにも速く走れるものなんだ……」と驚きました。

私は小学校三年生から高校三年生までサッカー部でした。留学中にも在籍しました。たいしたスキルはありませんが、サッカーに限らずボールや道具を扱うスポーツが好きで、走るや飛ぶといった競技が苦手です。特に、長距離を走ることはとてもつらいことでした。不得意だからというのもありますが、長い時間を一定のリズムで動き続けることをとても苦しく感じるからです。

転機は三年前。毎年、大阪で行われる大阪マラソンの寄付先指定団体に育て上げネットが選ばれたのです。大阪マラソンの出場権獲得には抽選倍率5倍を突破する必要があります。つまり、走りたいひとの5人にひとりしか走れません。

しかし、大阪マラソンには「チャリティランナー」という制度があり、自分が42.195キロに挑戦するにあたり、寄付という応援を募ることで別枠の出場権を得ることができます。チャリティランナーにお金は入りませんが、そのチャリティランナーが応援するNPOなど寄付先指定団体に寄附金が入ります。チャリティランナーの挑戦を通じてNPOに寄付が入り、NPOはその寄付を活用して社会課題を解決するのです。

自らの挑戦を他者に生かすことは、NPO業界ではかなりメジャーになってきました。例えば、JapanGiving(ジャパンギビング)という日本最大のNPO支援サイトを見てみてください。アーティストから一般のひとまでが、NPOに寄付を集めるために何かに挑戦しています。それはマラソンでも、ダイエットでも、禁煙禁酒など多岐に渡ります。

決めた目標に向かって着実に努力を重ねられるひともいますが、周囲の理解や応援があった方が頑張れるひとも少なくないのではないでしょうか。SNSで写真などをあげるとき、誰かに理解してほしい、認めてほしいという気持ちはないでしょうか。そこでたくさんの応援(いいね!など)をもらえると嬉しくなって、また頑張ろうと思えます。

そこまでであれば個人と友人や家族の範囲ですが、それをもっとオープンにして、自分のチャレンジに、誰か困っているひとを助けることも加えてみる。そうすると、もっとたくさんの、もっと大きな応援をもらえます。

先日、東京マラソンを走ったのも、私自身の挑戦と、その応援として育て上げネットに寄付を集めるためでした。一番苦しいとき、私を応援してくれたひとたちのために、私が指定したNPO活動を支えてくれたひとたちのことが思い出され、ひとりであったら諦めて歩いていたかもしれないところを走り切ることができました。

部活で勝利を目指すことや、受験で合格をする、宿題を忘れない、早寝早起きをする。人生を左右する挑戦も、日々の生活の何気ない挑戦も、他者を生かすためという視点を組み込むことで、まったく異なる世界が開けるというのが非常に興味深いのです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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