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チャレンジしてみる
~私の「好き」を言葉にする~


工藤 啓
更新:2017/09/25

8月の暑い日、私は中学生二人とともにJFAハウス(日本サッカー協会ビル)に行きました。高校受験を控える二人の男子学生は、サッカーに明け暮れた日々が勉強に変わったことに苦笑しながらも、言葉の端々から「サッカーが本当に好きなんだな」ということがわかります。

JFAハウスには、Jリーグの村井チェアマンやさまざまなプロサッカークラブや企業、NPO関係者が集まって会議が開かれます。二人にはオブザーバーとしての席と資料が準備され、「おっ、中学生が来ている」ということで、会議参加者の方々が声をかけてくれます。

日本のサッカー界を支えるひとたちを前に、ガチガチになった二人は名刺を渡されてもどうしていいのかわからず、会釈をして受け取っていました。緊張感がこちらにもしっかり伝わります。しかし、そこで交わされるのは当然サッカーの話であり、彼らが大好きなスポーツについてです。

好きなチームはどこか。好きな選手は誰か。ポジションはどこだったのか。そんな質問に対して一生懸命言葉をつむぎます。会議では日本サッカーがどのようにホームタウン活動を促進させ、社会と連携をしていけるのか。どのようにサッカーというスポーツが社会に貢献できるのかが真剣に話し合われました。

最後に、「今日は中学生が二人来てくれたことにより、いつも以上に緊張感があり、また、彼らのようなサッカーを好きな中学生でも理解できる平易な言葉を意識していた。このような場に来てくれてありがとう」とチェアマンが言われました。

そして、今日の感想を求められ、一斉に関係者が二人を見ます。連れてきた私もドキドキしました。このような環境で突然コメントを求められたら言葉が出てこないのではないかと。しかし、二人はしっかりとした態度、言葉で感想を伝え、彼らがどれだけサッカーが好きなのかが伝わるものでした。

日本サッカーの未来に向けた重要な会議に参加してみることだけでも大きなチャレンジであるのに、そのような場でコメントを求められるとは想像しないのではないでしょうか。それでも彼らが立派に発言した根底には「サッカーが好き」があり、だからこそ懸命にその想いを持って言葉にしていったのだと思います。

チャンスはいつ訪れるかわかりません。それでもチャンスが目の前に現れたとき、そこから逃げ出さず、私の「好き」をしっかりと言葉にすることで新たな学びや経験の獲得につながります。本当に素晴らしい二人のチャレンジでした。

■ 公益財団法人 日本サッカー協会(JFA)公式サイト

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1