そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏によるエッセー

102-2

102-2
応援されること
~自分から声をかけていく~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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周囲に陰ながらでも、目に見えていても、がんばっているひとはいませんか。部活でいい成績を残すためでも、誰かのためのボランティア活動でも、「おっ、いいことしているな」という瞬間的なことでも構いません。

先日、自転車置き場で駐輪していると、少し離れたところで駐輪しようとしていた年配の女性の自転車が倒れてしまい、まさにドミノ倒しのように私の方まで自転車が倒れてきました。朝だったのでみんな急いでいます。心の中では助けてあげたいと思っていても、会社や学校に遅刻してしまうので手を差し伸べられないひともいるでしょう。

私は特に急いでいたわけではないため、私が駐輪したところから一台ずつ自転車を起こしていました。その女性は「すいません…」といいながら、自ら懸命に自転車を起こそうとしています。そのとき、ひとりの男子高校生が来て、何も言わず自転車を起こしていきました。女性が「ありがとうございます」とすまなそうな声で御礼を伝えても特に反応はありません。

無視していたのか、聞こえなかっただけなのかもわかりませんが、黙々と(すごいスピードで)自転車を起こして、その場を立ち去ろうとしました。私は少し近くにいましたので、「おはよう。自転車すごい倒れたねー」と声をかけたところ、「そうっすね」と小さく返事をしてくれました。

続けて、「なかなかできないことだし、女性も大変そうだったし、すごく助かったと思うよ。きみのこと尊敬するよ」と伝えました。本当にそう思ったというのもありますが、彼の行動を見ていたのが私とその女性だけだったので、ちゃんと声をかけないといけないと、そのときは思ったんです。

すると彼は、「女性の声は聞こえていたけれど、返事をするのが恥ずかしかったんですよ。そういってくれて嬉しかったです」と言って歩いていきました。彼は誰かに見られているから手助けしたわけでも、応援されるから行動したわけでもありません。

しかし、そういうちょっとした行動はすごく価値あるものだとちゃんと伝えることも大切だと思うんです。きっと彼は同じ状況に出くわしたら手助けをするでしょう。もしかしたら、誰かのよい行動や努力を見たとき、それに対して声をかけるようになるかもしれません。そういう輪の広がりか、一生懸命なひとを(他人であっても)応援する社会につながっていくのではないでしょうか。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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