EYE's Journal

いま知りたい教育関連のテーマについて、ドリコムアイ編集部が取材・調査

1-9

シリーズ1 教員を育てる
Part.9 
レポート④
「教員養成推進プログラム(教員養成GP)」とは(前編)

編集部
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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文部科学省では現在、「高度な専門性と実践的指導力を兼ね備えた教員の養成及び現職教員の再教育の一層の充実」をめざして、「大学・大学院における教員養成推進プログラム(教員養成GP)」を実施している。

これは、「大学・大学院修士課程を中心とした義務教育段階の教員養成機関における、資質の高い教員を養成するための教育内容・方法の開発・充実等を行う特色ある教育プロジェクトについて、国公私立大学を通じた競争的な環境の中で選定し、重点的な財政支援を行うもの。すでに共同申請、単独申請を含めて数多くのプロジェクトが2005年の「選定プロジェクト」として進行している(図表1参照)。

選定されるだけあって、どのプロジェクトもそれぞれ、個性的な内容となっている。特徴的なプロジェクトをいくつか紹介する。

「ちゃぶ台」など個性的なプロジェクトが

まず国立では、千葉大学(教育学部・教育学研究科)の「プレ10・ポスト10教育研修プログラム-教員スタンダードの策定と教員養成の改革-」というプロジェクトが目につく。

これは、教員生活を初期10年(プレ10)と中・後期(ポスト10)に分け、それぞれの段階で必要とされる資質・能力を新たに「千葉県教員スタンダード」として策定。それに即応した職能成長を支援するため、①プレ10研修、②ポスト10研修、③ケアプログラムによる支援を重点3研修として、千葉県・千葉市教育委員会との連携研究によって、開発・検証を行い、その成果を再び教員養成の改善にフィードバックさせるというもの。

お茶の水女子大学(文教育学部・理学部・生活科学部・人間文化研究科)の「科学コミュニケーション能力を持つ教員養成」が狙うのは、「科学教育指導者の養成」。同プログラムは「現職の小・中学校教員と大学院生を対象として、地域社会から尊敬される科学教育指導者の養成を目標」としており、「理数と生活環境分野の実践的指導力と児童だけではなく、保護者・社会人をも納得させられる高度の専門性を持った修士レベルの人材を養成する」という。

そのために大学の研究者、教育委員会、博物館やNPO等の実務者が緊密に連携することでカリキュラムを作成し実践する。

選定プロジェクトのなかで、もっともユニークな名称を持つのが山口大学(教育学部・教育学研究科)申請の「『ちゃぶ台』方式による協働型教職研修計画」というプロジェクト。

これは、従来の地域協働体験事業をさらに拡充し、学生が子どもと継続的にかかわる多様な場を提供するとともに、学生、現職教員、大学教員が協働して課題や失敗を分析・評価する省察の場として「ちゃぶ台ルーム」を設けるもの。実際、ちゃぶ台が備えられている。

「ちゃぶ庵」と名づけられたちゃぶ台ルームは「教育実践を多様な視点から振り返る日常的に解放された空間」であり、そこは、講演、研修会、勉強会、シンポジウム意見交換、相談、教材作成などさまざまな用途で利用することが可能。8時から17時の間なら誰でも利用することができる。

さらに、時間的・空間的制約を超えた幅広い意見交換や討議の場として、インターネット上に「電子版ちゃぶ台(e-ちゃぶ)」も設置されている。

熊本大学(教育学研究科)のプロジェクトのテーマは、「不登校の改善・解決に資する教育力の養成-大学院教育における系統的カリキュラムの創出と試行実践-」。

これは、大学院における教員養成カリキュラムとして、教育現場における重要課題である不登校の改善・解決に資する実践的能力を育成する系統的カリキュラムを提案し試行実践を行う、というもの。具体的には、「教育学部の不登校支援活動の実績と医学部の不登校予防体験を基礎とし、不登校支援理論を創出するとともに、不登校児童生徒の情動、行動、認知にアプローチする教科教育の特性を活かした実地研修を行い、その有用性を検証する」という。

《Part.10 後編へつづく》

図表1 2005年度「教員養成GP」選定プロジェクト(国立大)

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