シリーズ8

魅力ある短期大学づくり
Part.2 事例研究【埼玉女子短期大学】

学生のキャリア意識形成を全力で支援


埼玉女子短期大学 学長
桾沢(ぐみさわ)栄一氏にきく
※施策、カリキュラム、役職名などは取材当時のものです
更新:2009/07/21
短期大学は、18歳人口の減少や4年制大学の増加などこれまでにない環境の中で、全体としては厳しい状況に直面している。しかし、そうした状況の中でも、カリキュラムや教育内容などに工夫を凝らし、魅力ある学校づくりを進めている短期大学も少なくない。当シリーズの第2回目と第3回目は、そうした短期大学の実例を探っていく。
今回は、2004年度に「キャリア短大」を宣言し、その取り組みが文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)にも採択された埼玉女子短期大学を訪ね、桾沢(ぐみさわ)栄一学長に「キャリア短大」の考え方や具体的な取り組み、これまでの成果などについて話を伺った。

文科省の現代GPに採択された
キャリア短大構想

埼玉女子短期大学は2004年度に「キャリア短大」を宣言するとともに、それを具体化していく取り組みとして「インターンシップとキャリア短大構想」を打ち出した。この取り組みは文科省の現代GPに採択され、「キャリア短大」として教育内容などの改善を進めてきた。キャリア短大宣言の背景や目的について、桾沢学長は次のように説明する。

「本学は開学以来、実務教育を重視し、社会で即戦力となるような人材の育成に努めてきました。その実績を踏まえたうえで、私たちがめざしているものをより具体的なテーマとして掲げたのが『キャリア短大』なのです。こうした明確なテーマがあるほうが、教員の側も教育目標がハッキリするし、学生の側も目的を持って学びやすくなると考えたのです」

では、キャリア短大とはどのようなものなのだろうか?

「キャリア短大とは、キャリア意識の形成を支援する短期大学という意味です。キャリア意識の中味は2つあります。1つは自立意識で、親から自立し自信を持って生きていくことです。もう1つは、職業意識。仕事とは何かを考えるところから始まり、仕事を通して自己実現したり社会貢献をしたりしていくことです。この2つを合わせてキャリア意識と定義づけています」

将来の目標に沿って学べる
多彩なコースを設置

キャリア短大としての大きな特色の1つが、多彩なコース制による学びだ。同短期大学は、商学科、国際コミュニケーション学科の2学科があり、商学科には、ファッション・トレンド、ブランドマーケティング、会計事務コンピュータ、医療事務コンピュータの4コースを設置。

国際コミュニケーション学科には、観光・ホテル、ブライダル・コーディネート、エアライン・ホスピタリティ、国際交流・英会話・留学の4コースを設置。さらに、どちらの学科でも選べる共通コースとして、ビューティー・キャリア、健康心理、子ども文化の3コースを設置している。

「コース制自体は、1997年度から導入していました。ただ、当時は商学科ならマーケティングコース、経営・会計コースといったクラシックなかたちで、現在のようなユニークなものではなかったですね。コースの内容や名称を大きく変え始めたのは、やはり2004年度のキャリア短大宣言が契機になっています」

どのコースも、将来の職業や身につける専門性をイメージしやすいのが特徴だが、当然、これにも明確な目的がある。

「短期大学は2年間です。その限られた期間の中で、将来、仕事に就いたときにすぐ役立つような力を身につけさせたい、というのが大きな目的です。もちろん、仕事に就くには関門、つまり就職試験があります。それを突破する力をつけなければなりません。

さらに、仕事に就いたあと、本学以外の学生と比べて少しでも先に進んでいるといえるだけの知識や実力を身につけてもらいたい、と考えているのです」

専門性を高めるとともに幅広い知識も身につく

コース制といっても、狭い領域だけを学ぶわけではない。実際はむしろ逆で、幅広い学びができるようになっている。

学生は入学時にコースを選び、そのコースの専門科目をすべて履修しても、それだけでは卒業必要単位数に満たない設定になっていて、ほかのコースの専門科目も自由に選んで学ぶことができる。また、一般教育科目も充実しているので、そちらを多めに履修することも可能だ。さらに、他学科の科目も14単位まで履修できるようになっている。

コース自体も途中で変更することができる。入学時、1年次の秋、2年次の春、2年次の秋と計4回、コース選択のチャンスを設けている。

「私どもでは、『ゆるやかなコース制』といっているのですが、自由度の高いカリキュラムにしているのが特徴です。これは、選んだコースで専門性を高めつつ、幅広い知識も身につけられるようにと考えているからです。また、入学時点では将来の進路について迷うこともありますから、学びながらより適したコースに移ることもできるようにしているのです」

所属する学科が違っても選択できる3つの共通コースを設けているのも、同様の考えからだ。経営や簿記などに関心のある人なら商学科、英語をしっかり勉強したいという人なら国際コミュニケーション学科に所属し、その学科のベースになる専門科目を学ぶとともに選択したコースの専門科目を学んでいくことになる。

テスト中心に学力を伸ばす
コース別基礎ゼミ

キャリア短大宣言以来、キャリア意識の形成を直接的に支援する科目群を充実させてきた。その代表例といえるのが「コース別基礎ゼミ」と「キャリアデザイン1・2」。いずれも一般教育科目に位置付けられ、必修になっているのが特徴だ。

「以前はそれぞれのゼミに、いろいろなコースの学生が入っていました。それはそれでいい面もあるのですが、同じコースの学生だけにしたほうが、そのコースに関連する情報を共有できたり、就職活動時に学生同士で励まし合ったりできるのではないかと考えて、コース別にしたのです」

基礎ゼミでは基礎学力テストも活用している。テストの問題は、教務委員会で1年分を作成。1年次は、高校までの履修を意識した問題、2年次は常識・教養問題になっている。基礎ゼミをこのような内容にした意図について桾沢学長は次のように説明する。

「いま、どの学校でも基礎学力の低下が問題になっています。一方で、就職試験では基礎学力的な試験を課すところが増えています。そのため、本学入学後に基礎学力の向上を図り、就職活動時はもちろん就職後にも役立つ実力を身につけさせることをめざしているのです」

基礎ゼミは、テストを行うだけではない。テスト後の時間は、担当する教員ごとに工夫して、就職関連の話や企業に関する話をしたり、面接やプレゼンテーションの指導などを行ったりしている。

キャリア意識形成のために
特色ある科目を数多く開講

キャリアデザイン1は、1年次の春学期に開講。この科目自体のオリエンテーションから始まり、女性にとってのキャリアの考察、性格検査、コミュニケーション能力の向上、職業適性検査、SPI模擬試験、キャリアプランシートの作成などを行う。

秋学期には、引き続きキャリアデザイン2を開講。自己PR作文、履歴書の書き方、エントリーシートの書き方、企業研究、業界研究、面接対策など実践的な授業が行われる。

このほかにも、キャリア形成を支援するため、一般教育科目の中に「キャリア基礎選択科目」を設けている。「コンピュータ」「文章表現法」「マナーとホスピタリティ」「現代社会と企業」など10科目があり、自由に履修できる。このうち、マナーとホスピタリティの授業は全員スーツ着用で行うのが特色で、人気は高く、ほとんどの学生が履修しているそうだ。

また、ANAグループのシンクタンクである(株)ANA総合研究所と産学提携しており、現場経験豊富な人材を専任の教員として招いて、エアラインスタイルのホスピタリティやマナーについて学ぶ体験型授業を行っている。インターンシップの受け入れも行っており、ビジネスの現場で活躍するためのスキルを実学的に学ぶことが可能になっている。

学生の60%以上が参加するインターンシップ

各学科・コースでの学びとともに、キャリア短大のもう1つの大きな柱になっているのがインターンシップだ。現在は、夏季3週間と春季3週間をメインに、秋期3週間、冬期2か月まで4つのプログラムがある。

「インターンシップを始めたのは1999年度からです。当初、期間は3週間で、参加人数は30名ぐらいでした。その後、少しずつ内容を拡充してきましたが、2004年度のキャリア短大宣言以降は、参加人数も受入企業数も大幅に増え、本学の大きな特色といえるものになりました。

たとえば2008年度の場合、1年生のうち60数%の学生がインターンシップに参加しています。今年はさらに増えそうです。去年は夏のインターンシップに90数名が参加しましたが、今年は150名近くが申し込んでいます」

このインターンシップの意義について桾沢学長は次のように話す。

「企業などの現場で実際の仕事を体験して、その仕事の内容や働き方を知ることは、キャリア意識を形成していくうえで非常に役立つと考えています。参加した学生を見ていても、言葉遣いやマナー、働くことに対する意識の持ち方などが変わってきて、確実に成果が出ているといえるでしょう」

インターンシップは、オープンキャンパスなどで紹介し、説明しているが、高校生の関心は年々高まっているという。

1人ひとりをきめ細かく支援する
キャリアサポートセンター

通常の科目やインターンシップに加えて、資格取得講座も学生のキャリア意識形成を支援するしくみの1つだ。これは有料の課外講座で、4・5時間目や土曜日に集中的に開講している。

さらに、キャリアサポートセンター(事務職員で構成)も、キャリアサポート委員会(教員で構成)との連携によるインターンシップの企画・実施、模擬面接やメイクアップなど独自の就職関連講座の開講、学生1人ひとりのキャリアカウンセリング、就職活動支援まで幅広い活動を行い、キャリア短大を支える重要な役割を果たしている。

濃密に過ごす2年間で
実力ある社会人に育成

最後に、桾沢学長にキャリア短大としての取り組みの評価と今後の展開について伺ってみた。

「私どもは、短期大学の2年間を非常に濃密に過ごせば、4年制大学卒業者と同等の立派な社会人を育成できるという確信のもとに、ここまでキャリア短大としての取り組みを推進してきました。

その成果は、確実に出ているのではないかと思います。学生たちは、学内で学んだことやインターンシップで経験したことをしっかり身につけて卒業していきます。

企業からも、本学の卒業生は職業意識が高く、社会人としての基礎力があると即戦力的な力を持った学生が入ってくるということで評価をいただいています。今後も、基本的にはこれまでの路線を引き継ぎながら、内容をさらに充実させていきたいと考えています。

現実には、学力低下など難しい問題もありますが、入学時点で実力が不足している学生でも実力をつけて社会に送り出すのがわれわれの役目です。そのために何をすべきか常に考え、新たな手段も探りながら、学生のキャリア意識の形成を支援していきます」

■埼玉女子短期大学

▲埼玉女子短期大学
桾沢栄一 学長

 
 
 
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