EYE's Journal

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17-2

シリーズ17 自立進学〈親がかりでない大学進学の可能性〉
Part.2
日本政策金融公庫の
「国の教育ローン」(2013年度)

企画・構成
田中 俊亘(教育ジャーナリスト)
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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入学前に必要な初年度納入金

奨学金の代表格ともいえる日本学生支援機構の奨学金は、一般に「貸与」といわれます。しかし、「貸与」は同機構を主体とした表現であり、利用者にとっては、いずれ返済しなければならない「借入」にほかなりません。まして、貸与条件がゆるやか(成績条件なし、保護者の所得上限が高い)で、貸与金額の幅も広い(3~12万円)第二種には、返済時に利息が加算されます。返済がはじまってからの基本的な仕組みは、借り入れたお金に利子をのせ、分割して返していく教育ローンと同じです。ちなみに、ローンは、その一方の主体者である金融機関の表現では「融資」ということになります。

奨学金制度と教育ローンの違いは、必要なお金が、いつ、どのように利用者にわたるかに絞って考えるとわかりやすくなります。日本学生支援機構の奨学金は月々にわけて貸与。対して教育ローンは一括して融資されます。

その返済計画については後に詳しく見つめる必要がありますが、奨学金を利用すれば、親がかりでない「自立進学」の可能性が大きく広がります。しかし、奨学金の貸与は入学後にスタートするため、奨学金は進学支援というよりも、就学支援といった方が実情に近いといえるでしょう。

このとき、ネックとなるのが入学前に納入を求められる入学金や授業料です。国立大学が入学金と授業料で81万7,800円。私立大学の場合は入学金、授業料に加えて施設設備費等が必要で、文科系平均が約123万円、理工学部平均が約164万円。ほとんどの大学が前・後期の分割納入を認めているとはいえ、入学前に相応の資金が必要なことはいうまでもありません。

その前期分の納入期限は合格発表から間もなくやってきます。日本学生支援機構には50万円を上限に増額して一括貸与する「入学時特別増額貸与奨学金制度」がありますが、それも入学後の貸与であるため、入学前に支払う初年度納金としては使えません。

300万円まで借入可能

入学初年度の学費調達には教育ローンが役立ちます。教育ローンには、ほとんどの銀行やJA、労働金庫、また、「国の教育ローン」といわれる日本政策金融公庫(以下・公庫)による貸付制度があります。以下では国の教育ローンに絞ってお話しします。

国の教育ローンの最大融資額は300万円ですから、私大の医学部や歯学部でもない限り、初年度納入金程度なら十分に賄うことができます。

借り入れ可能な保護者の年収上限は790万円です(表-(4))。

▼表-(4) 「国の教育ローン」の世帯年収上限額

国の教育ローンを利用できるのは進学者の保護者に限られます。その意味では親がかりでない自立進学の対象にはなりませんが、在学期間中は元金の返済を据え置くことも可能なため、保護者と連携すれば、卒業後に本人が返すことも可能です。ただし、据え置き期間中であっても金利だけは返済しなければなりません。

仮に、2月1日に80万円を借り入れて国立大学に進学。返済期間を公庫の最長である15年に設定して、在学中は金利だけを支払い、卒業後(借り入れから4年2か月後)から約11年間で元金を返済した場合のシミュレーションは次の通りです。

 在学中の金利返済月額=1,633円
 4年後からの返済月額=7,012円
 返済総額=99万3,210円

 ※平成25年3月現在の固定金利・年2.45%で試算

在学中の金利返済、4年後からの月返済とも、十分に可能と考えられる金額です。

また、教育ローンの金利相当分を、在学中に限って奨学金などとして支給する大学や地方自治体があります。こういった制度を利用できるなら、先の月額金利1,633円×4年分=78,384円は不要です。

ちなみに、国の教育ローンは保証人なしでも借り入れできますが、その場合は(財)教育資金融資保証基金の保証にともなう保証料が必要です。先のシミュレーション通りなら、その額11万3,918円が融資額から一括して差し引かれます。もちろん、連帯保証人1人を立てることができれば、保証料は必要ありません。

国の教育ローンの相談・申し込みは、公庫の各支店ほか、民間の金融機関でも受け付けているほか、公庫のホームページからオンラインで申し込むこともできます。

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