EYE's Journal

いま知りたい教育関連のテーマについて、ドリコムアイ編集部が取材・調査

23-2

シリーズ23 早期進路決定者はクラスにどんな影響をもたらすか
Part.2 
高等学校アンケート調査
設問4~設問6

編集部
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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 更新:

ドリコムアイ.net編集部では、2014年9月1日・2日両日、受験シーズンを目前に控える、関東1都6県と山梨、長野、新潟県の高等学校1,583校を対象にした「早期進路決定者のやる気づくり調査」を実施した。このページでは後半Q4~Q6の集計結果を報告する。

Q4 Q3で「モチベーションの差を感じる」と回答された場合、どのような影響が出ていますか(複数回答可)
①進路決定済生徒の授業態度の悪化や出席率が下がる
②進路決定済生徒のモチベーションの低さが、これから受験する生徒のやる気を削ぐ ③その他

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進路決定の時期によってモチベーションの差異を感じる場合、生徒にどのような影響が出るかを聞いた結果が図表6(複数回答可)。

「モチベーションの差異を感じる」と回答した学校について、どのような悪影響があるかをみると、「授業態度の悪化」が84校(54.5%)、「生徒のやる気を削ぐ」が104校(67.5%)で、態度よりやる気の影響が大きい。

進学先による差異はどうか。値を詳しくみると、大学進学60%以上の学校では「授業態度の悪化」が36校(48.6%)、「生徒のやる気を削ぐ」が54校(73%)。

一方、大学進学60%未満の学校では「授業態度の悪化」が44校(58.7%)で大学進学60%以上の学校より大きく、「生徒のやる気を削ぐ」は49校(65.3%)で大学進学60%以上の学校より小さくなっている。大学進学60%未満の学校においては、大学進学60%以上の学校に比べて態度面での悪化がやや大きいことが分かる。

ちなみに就職者が10%以上の学校でモチベーションの差を感じると回答した学校は65中47校(72.3%)と、全体の割合202校中154校(76.2%)と比較してやや小さく、その影響については「授業態度の悪化」27校(57.4%)、「生徒のやる気を削ぐ」28校(59.6%)で態度よりやる気の悪化が大きくなっている。

「その他」の影響について大学進学60%以上の学校では「教室の空気がまったりする」、「明らかに合格確定後は学習時間が減ってしまう」、「楽になりたいと思いAOなど考える生徒が少数だが出る」などの意見があった。

また、「一般受験の生徒の方が総体的にモチベーションが高い」、「進路決定済生徒の精神的なゆとりが生まれた」、「進路決定済の生徒もそれなりに入学後の準備を行っている」などの意見があった。

大学進学者が60%未満の学校では「受験生が楽な方に進路を変更する」、「一般入試生徒に影響は与えないが本人の学習意欲は低下する」、「人数が少ないので目立ちはしないが、決まった本人は当然まわりとは違う」などがあった。また、「一般入試の生徒が多く、特別進学クラスに集中するため、あまり授業に影響が出ることは少ない」、「やる生徒はやるので悪影響はない」という学校もあった。

Q5 Q4のような事態に対し、その後のフォローとしての進路決定済の生徒に指導を行っていますか(複数回答可)
①資格取得などの目標を与える ②レポート提出などの課題を与える ③進路決定者用の補講を行う ④特に行っていない ⑤その他

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進路早期進路決定者に対するフォローとして「資格取得」が203校中68校(33.5%)、「レポート提出」が50校(24.6%)、「補講を行う」が38校(18.7%)、「自習させる」が24校(11.8%)、「特に行わない」が37校(18.2%)、「その他」が86校(42.4%)であった(図表7)。

「特に行わない」と「自習させる」を合わせると61校(30.2%)の学校が特に生徒へのフォローを行っていないことがわかった。

「その他」の内容としては、大学進学者が60%以上の学校では「センター試験受験を義務づけている」とする学校が17校、「TOEICを受けさせる」とする学校が2校あった。

大学進学者が60%未満の学校でも「センター試験を受験させる」とする学校が6校、「進学先からの課題に取り組ませる」とるする学校が6校あった。

そのほか「進学後の学び方について早くから考えさせ、一般入試でも合格できるレベルでないと進学先で困ることを浸透させるようにしている」「クラス経営に力を入れ仲間を思いやれるクラスづくりに力を入れる」「決定者中心で卒業イベントを企画・実施させている→最後まで学校に目が向く」などがあった。そのほかの事例では、「合格内定者集会を11月、12月、1月と3回実施」「保護者を交えての全体指導」など、定期的に合格者対象の集会や指導を行っている学校もあった。

就職者が10%以上ある学校では、「通常の授業をすすめ、進学後の学力の充実を図る」、「1月授業より進路決定者と受験者を分けて授業を行う」という学校もあった。

また、「高等学校の課題研究発表が卒業間際(1月末)にあり、これを達成しないと卒業認定されないことが歯止めになっている」という例もあった。

Q6 AO入試や推薦入試の定員増加の影響で、3年生の早い段階で進路を決定する生徒が増加する傾向にありますが、これに対し何かご意見・ご感想はありますか(自由記述)

推薦入試やAO入試で進路が早期決定する生徒が増加することに対する所感を、記述式で答えてもらった。

■良いと思う意見(抜粋)

本校の場合は非常に助かっている。
進路決定が早いことに関しては悪いことではない。残りの学校生活を充実させることが必要。
本校にとっては次の準備に繋がるので好都合である。
多様な生徒に対応した入試として好ましいことだと思う。
推薦に合った生徒もいるので、それはいいと思う。
AO入試や推薦入試は大学合格・進学のチャンスを増やす取り組みであると考えている。そのため、本学院にはあくまでも一般入試の挑戦を軸とした進路指導・学習支援に力を入れている。
影響が出るのはごく少数であり気にならない。
生徒の能力には個人差がある。したがってそれぞれの入試形態に対し、適切に対応してもらえれば良いと思う。
附属高なので、あまり大きな影響を感じていない。

■対策を立てている学校の意見(抜粋)

「どの時期に進路が決定しても、卒業するまでは最善を尽くして学習することに変わりはない」「進学先においても社会人になってからも学びは続く」ということを普段の授業で伝えるのみ。
一般入試での学力不足をAO入試や指定校推薦入試・公募推薦入試で受験させている。
本校では「行ける大学より行きたい大学」をモットーに指導している。
入学前指導の充実。センター試験などの大学独自で試験を課す。
本校では早く決まった生徒は他の生徒を応援する態度で日々過ごしている。中高一貫校の仲の良さならではかもしれない。
一般受験の生徒との差は大きくついているのが現状だと思う。
近年では大学からの課題や講義も義務付けられているので継続してほしいと思う。
推薦・AO等で合格した生徒には、3学期さきがけ授業をおこなっている。
AOや推薦入試を利用する注意点として第一志望であること、ダメだった際の一般受験の準備を並行させる覚悟を確認してからの指導としている。

■何らかの対策が必要という意見(抜粋)

進学先の学校でも、課題(レポート)を出すなど、バックアップをお願いしたい。
早すぎる決定は学習意欲低下につながるので、せめて10月以降にして欲しい。
早く進路を決定して安心したいと考える生徒が多くなった。専門学校でも早い時期からAOを受けたがる。安易に進路を考えてしまう生徒が増えることを危惧する。
自由に使える時間を有意義なものとできるような目標が必要。
一部専門学校でのオープンキャンパスがAO入試になっている状況はなんとかしてもらいたい。
基礎学力が低下してしまうので、やはり一般入試を中心とする入試方法の方が良いと思われる。
専門学校のAO入試が早すぎる。このことで、生徒が浮足立ってしまう。
生徒がじっくり学校選びをする時間を与えない状態で合格をちらつかせる学校があり困っている。
学校の年間行事予定に悪影響を及ぼしている。
推薦・AOで受験・合格する生徒は学力的にやや不足している者が多いような感じがあり、さらに合格後勉強しなくなると大学でついていけるか心配である。
クラス全体、広くは学校全体に、これから受験する生徒を支えるような集団作りが必要。
在学中における学習意欲の維持も大きな課題であるが、進学先に入学後の学生生活が心配である。
大学は毅然とした態度で一般入試の割合を広げて欲しい。
高3時がAO・推薦のための勉強になってしまう。秋に合格してしまうとそれ以降成績は伸びない。
一般入試に向けて頑張ることで、学力だけでなく精神力も大きくなるのに…。
保護者にも早い段階での進路決定を望む傾向がある。
反対である。AOは廃止すべき。推薦入試も定員を絞って縮小していってほしい。
受験料の高騰のため複数受験(一般受験)を敬遠する者も多い。AO、推薦枠を減少、受験料を下げてもらいたい。
定員割れを防ぐためには仕方のない傾向とは思うが、受験生としてはこの流れに踊らされて安易な選択をしないような強い目的意識、メンタリティーを養う必要がある。

■アンケートにご回答いただいた高等学校およびご担当者の皆さま、ご協力ありがとうございました。この場を借りて、あらためてお礼申し上げます。

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