EYE's Journal

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24-4

シリーズ24 動き出した大学ポートレート
Part.4
興味や目的から大学を探し、
特色への理解を深める(後編)

独立行政法人大学評価・学位授与機構 大学ポートレートセンター事務室長
小山田 享史(おやまだ・りょうじ)
日本私立学校振興・共済事業団 私学経営情報センター 私学情報室
副主幹:南 浩司(みなみ・こうじ)
主任:土屋 哲樹(つちや・さとき)
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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大学ポートレートは、2015年3月10日に国公私そろっての情報提供がスタートした。大学ポートレートをどのように活用すればいいのか、大学ポートレートセンター事務室長の小山田亨史氏、日本私立学校振興・共済事業団の南浩司氏、土屋哲樹氏に話を伺った。

国公立トップページは「基本情報」
私立トップページは「本学の特色」

▲小山田氏

ここで、大学ポートレートの国公立大と私立大それぞれの画面構成を確認しておこう。

国公立大を検索すると、まず「基本情報」のページが表示される。ここは1ページで、名称や所在地などの基本情報、学部・研究科名など大学の概要を見ることができる。画面左の学部名または文中の学部名の部分をクリックすると各学部のページに入る。

ここでは、特色、教育課程、入試など9つの項目を1ページずつ掲載しているので、調べたい項目をクリックすれば、その内容を見ることができる。

私立大は、大学全体の情報を8項目(各1ページ)、学部・研究科の内容を9項目(同)に分けて掲載している。大学の画面を開くと、最初は「本学の特色」のページ(トップページ)が表示される。ほかの項目を見たいときは画面上部の項目名から選ぶ。学部・研究科は画面右に載っているので、名称の部分をクリックすれば、それぞれの内容を見ることができる。

「特色の目的」と「取組」から大学を検索することが可能

▲南氏

私立大のページは「本学の特色」をトップページにしているように、特色をわかりやすく伝える工夫をしている。南氏は次のように話す。

「私学は、『学校を作ってこのような人材を育成したい』という強い想い、いわゆる建学の精神を持った個人が私財を投じて創設していることもあって、大学ごとに建学の精神に基づいた特色がより色濃く表れていると思います。そういったさまざまな特色を持つ大学の中から、自分に適したところを探していただきたいと考えて情報を提供しています」

特色を知る方法として、私立大は「特色の目的」と「取組」で検索できるのが特徴だ。

「各大学のページには、特色の説明がありますが、その内容を、わかりやすく、そして、検索しやすくするために、その特色がどのような『目的』を持つものなのかを、あらかじめ用意されている9種類の目的から大学が選択できるようになっています。

さらに、その特色を実現するためにどのような『取組』を行っているのかも同様に、46種類の取組から選択できるようになっています。利用者はここで選択された『特色の目的』と『取組』から大学を検索することができるのです」

▼特色の目的で検索

横スクロールしてご覧ください

南氏の説明をもとに、検索例を示すと次のようになる。

就職について調べてみたい場合、詳細検索画面の「特色の目的」欄のなかから「就職支援・進学支援」をチェックする。さらに、「取組」欄のなかから「就職支援」を選ぶ。そして検索すると、関連する情報を載せている大学名が表示されるので、そのなかから見たい大学を選ぶ。

最初に表示されるのは前述したように「本学の特色」のページ。特色は「建学の精神」の下に最大3つ載っていて、それぞれの特色の部分は3つの要素で構成されている。

まず、①特色のタイトルと内容を説明する文章があり、その下に②「特色の目的」名を表示。これによって、上に書かれている特色が何を目的にしたものかわかるようになっている。そして、その下に③特色を実現するための主な「取組」が表示されている。

したがって、「特色の目的」欄に「就職支援・進学支援」と表示されている特色が検索対象である。そして、特色を実現するための主な取組については、取組名をクリックすれば詳細が書かれたページに移動する。たとえば「就職支援(サポート体制)」をクリックすると「進路・就職情報」のページが開き、「就職支援(サポート体制)」の具体的な内容を見ることができる。

なお、「取組」は、このページにある特色を実現するための主なものに限らず、実際に各大学が行っているものがいろいろなページに分かれて載っている。他のページへは上部に並んでいるタブをクリックすれば移動できる。

また、「特色の目的」だけで検索することもできるが、「取組」と組み合わせて検索したほうが該当する大学を絞り込みやすい。

逆に、「取組」だけからの検索も可能だ。たとえば「教養・リベラルアーツ教育」「課題解決型学習(PBL)」など気になるものを選んで検索すれば、それを行っている大学を探すことができる。

興味のある言葉から大学を探す
フリーワード検索

南氏は「フリーワード」検索も私立大の検索の特徴だという。

「私立大の検索は、特色の目的や取組の実施状況などから探す目的別検索と、大学ポートレートで公表されている全ての文字情報を検索対象としたフリーワードによる検索に分かれています。フリーワード検索は、何らかのワードを入力して検索すれば、そのワードを載せている大学のページがヒットするので、興味のあることやなりたい職業から大学を探すのに適しています」

▼フリーワード検索

横スクロールしてご覧ください

こちらも、南氏の説明をもとに検索例を示してみよう。

たとえば、介護支援ロボットの研究に関心がある場合なら「介護支援ロボット」「研究」と2つのワードを入力して検索する。

この場合、目的別検索と違って、大学名や学部名などに加え、そのワードが含まれる文章が出てくる。そこをクリックすると該当ページを開くことができる。そして、ページをスクロールさせて、目的のワードが載っている部分を探す。これは、日常的にインターネットで情報検索するのとほぼ同じ感覚だ。

大学ポートレートを活用して
夢が叶えられる大学選びを

情報の探し方とは別に、高校生が私学版をどのように活用すればいいのか、南氏に伺ってみた。

「それぞれに特色がある大学のなかから、自分の夢を叶えられる大学を探していただきたいですね。大学ポートレートを使って、生徒さんが学んでみたいことや、なりたい職業に適した大学を選んでいただきたいと思っています。

将来像や大学について、ある程度のイメージを持っている場合は、特色などの目的別検索を使えば、大学を絞り込んで探すことができます。

まだイメージが漠然としている場合は、フリーワード検索が適していると思います。興味のあること、職業など思いついたワードを入力して検索してみると、こんなことが学べるんだ、こんな大学があるんだ、という発見ができます。そのようにして、いままで知らなかったような大学に巡り会っていただきたいですね」

土屋氏も、同様の指摘をする。

▲土屋氏

「フリーワード検索を設けた理由は興味や職業から大学を探してもらいたかったからです。とくに高校1年生ぐらいだと、フリーワードでいろいろ検索して、大学について視野を広げることも大切だと思います。そうすると、地元でこんなことを学べる大学があったんだ、と気づくこともあるのではないでしょうか。

高学年や進路指導の先生方であれば、調べる項目を決めて目的別検索で大学を探し、各大学の内容を比較してみるのもいいと思います」

私立大検索のPRパンフレットを作成 
本格稼働の周知を図る

本格稼働した大学ポートレートを広く使ってもらうため、広報活動にもさらに力を入れていく計画だという。

「私立大検索のPR用として、高校生向けと進路指導の先生方向けの2種類のパンフレットを作成しました。文部科学省に相談したところ、各都道府県教育委員会等へ、このパンフレットを用いた広報の依頼をしていただくことができました。今後も、いろいろな機会を利用してパンフレットを配付したいと思っています」(南)

「大学ポートレートが国公私そろって情報発信を始めましたので、あらためて各都道府県教育委員会への周知を図りたいと考えています。プレスリリースを出したり、進学説明会などさまざまな場での広報活動も進めていくつもりです」(小山田)

小山田氏、南氏、土屋氏の話のとおり、大学ポートレートは、さまざまな項目ごとに大学の情報を検索したり、興味や職業から大学を探すことができる。

そのしくみを知り、有効に活用すれば、数多くの大学への理解を深めながら、より幅広い視点で大学選びをすることも可能になりそうだ。

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