シリーズ25

看護教育最前線ルポ

Part.1
専門職としての実践的な力を備え
患者の心に寄り添える看護師を育成


東京女子医科大学看護専門学校
学校長
髙木 耕一郎(たかぎ・こういちろう) 先生
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
更新:2015/06/08
東京女子医科大学看護専門学校は、1930年に設立された東京女子医学専門学校附属産婆看護婦養成所を母体として、長年にわたり優秀な看護職員を医療現場に送り出してきた。現在は、東京女子医科大学東医療センターに隣接した場所で、大学の医師を含む教育スタッフによる授業、実践的な臨地実習などの看護教育が行われている。看護師国家試験の合格率も高く、教育レベルの高さを物語る。専門学校の看護教育の特徴、どのような看護師を育てようとしているのか、教育の特色、どのような入学者を求めているのかなどについて、学校長で東医療センター産婦人科部長(教授)でもある髙木耕一郎先生に話を伺った。

一人前の看護師を育てる
専門学校の看護教育

専門学校の看護教育は、目的が非常にはっきりしているのが特徴だと思います。その目的とは、実践的な力を備えた一人前の看護師を育てることです。学生のほうも、3年間しっかり学んで看護師になるという目的意識がはっきりしています。

大学の場合、もちろん卒業して看護師になる人は多いのですが、教育分野に進む人、看護研究の道に進む人など、めざしているものは多様です。入学時点でも、一般的な学部と同じような感覚で看護学部に入ってくる人もいます。その点、専門学校の学生は、目的は一つ。その辺りは大きな違いではないでしょうか。

本校についてお話しすると、看護を学ぶのに適した環境にあることが特色の一つです。医師の教育もそうなのですが、看護の教育は臨床現場での実習を通した学びが大きな意味を持っています。

その点において本校は地の利に恵まれています。東京女子医科大学東医療センターに隣接していて、東京の下町という人情味あふれる地域のなかにあるからです。

東医療センターは地域の中核病院なので、さまざまな病気を持った患者さんがいらっしゃり、臨地実習のときには幅広い看護を経験することができます。また、看護は患者さんから学ぶ面が大きいのですが、患者さんは下町独特の人情味のある方が多いので、そういう方たちと接することによって、知識や技術を身につけると同時に、人間として患者さんから学ぶことが多いといえるでしょう。

私の専門は産婦人科なのですが、患者さんたちが退院されるときに投書を残してくれることがあります。それを読んでいてちょっと驚いたのは「看護師さんにとてもお世話になりました」「看護師さんがすごく気遣いをしてくれました」「看護師さんがやさしかったです」といった内容が多いことです。

これは、本校の看護教育が反映されたものだと思います。つまり、患者さんの心に寄り添う看護師が養成されていることの表れだと感じています。

人情味あふれる土地柄のなかで学ぶことによって、思いやりのあるやさしい看護師が育っているのではないでしょうか。

医師を含むレベルの高い教育スタッフ
演習やグループワークなど参加型の授業

教育スタッフが充実しているのも本校の特色の一つです。東京女子医科大学の専門学校ということで、大学の医師も授業をしているのです。

女子医大には看護学部もあり、私たち医師はそちらでも教えています。つまり、内容的には看護学部と同じような、高いレベルの授業を受けることができるのです。

医師から臨床医学を学ぶ意義は大きく、看護の現場で役立ちます。

たとえば、手術室にも看護師がいますが、いまハサミがほしいとかピンセットを出してほしいというときに、言われたら出す看護師と言われなくても自然に出してくれる看護師がいます。言われなくても出す人は手術の手順が全部頭に入っているんですね。

私は、校長になってから機会があれば学生たちに次のような話をしています。それは、自分がいまやっていることにどういう意味があるのか、ドクターが何をやりたいのか、なぜその手術が必要なのかといったことをきちんと理解しておく必要があり、そのためには臨床医学の部分もしっかり勉強することがとても大事だ、ということです。

そういう意味でも、臨床経験ゆたかな医師の授業を受けることができるのは大きなメリットだと思います。

もちろん、医師だけでなくすべての教員が非常に熱心に教育に取り組み、それぞれに授業の内容も工夫しています。

普段の授業でも、学生が受け身で講義を聴くだけでなく、演習スタイルをたくさん取り入れたり、グループワークやディスカッションで学生同士が意見を出し合いながら学習することも多くなっています。

学ぶ科目も本校ならではの内容を盛り込んでいます。その一つは「医療倫理」です。私が校長になってから、医療倫理の本を読んで学ぶだけでなく、産婦人科の師長や手術室の師長などに後輩のために講義をしていただきたいとお願いをしたら、皆さん快く引き受けてくださいました。

その講義では現場で起こっていることをテーマにしています。学生にそうした講義の感想文を書いてもらったのですが、非常に好評で、学生のモチベーションが高まったことがわかりました。

社会人入学の学生が多いことも特色だと思います。一度社会に出たけれど看護師になろうと考え直して入学してくる人たちが1学年のうち40%ぐらいを占めているのです。

高校を卒業して入学してくる18歳の人たちと社会人経験者たちが一緒に授業を受けたり実習したり、切磋琢磨しています。

とくに18歳の人たちは高校まで同世代の人と過ごしてきたわけですが、年上の人たちの考え方や価値観に触れることで刺激を受け、共に学んだり話をすることがコミュニケーション能力を高めることにもつながっていると思います。

臨地実習はグループごとにきめ細かく指導
主体性を重視し現場ですぐ役立つ実践力を養成

臨地実習もきめ細かく行っています。6~7人ぐらいで一つのグループをつくり、それぞれのグループごとに教員が付きます。そして、病院の実習担当者と連携しながら実習を進めていきます。

実習場所は東医療センターが多いのですが、新宿の女子医大病院を始め、外部の医療施設や老人施設などで実習することもあります。病院では、各診療科で1週間ずつぐらい実習して、それぞれの看護を学んでいきます。

本校では主体的な学びを重視しているので、学生に看護上の問題点や患者さんへの接し方などについて考えさせたうえで実習を行い、それを教員や臨床実習担当者がきめ細かくフォローしています。

接し方一つにしても、あそこはよかった、ここは改善したほうがいいといった指摘をしていて、現場に出てすぐ一線で働くことができるような実習になっています。

こんなふうにお話しすると、勉強だけの3年間なのかなと思われるかもしれませんが、そういうわけではありません。たしかに、学ぶべきことが多く忙しい3年間ですが、体育祭や学園祭をはじめ学生生活を彩る行事などもあります。

とくに学園祭は、地域の方々にもきていただくもので、学生たちは非常に生き生きと取り組んでいます。同級生や先輩たちと一緒になって演し物を考え、準備段階から当日の運営まで主体的にかかわっていますね。しかも、お祭り的な要素だけでなく、学習成果を地域に広げていくため、看護や健康に関するプレゼンテーションなども行っています。

このようにして3年間学び卒業したあとは、8割以上の学生が女子医大の関連施設に就職しています。東医療センター、新宿の本院、八千代医療センターですね。それ以外の学生は、地元の医療施設に就職したり、大学の看護学部に編入学しています。

入学試験の面接などで感じることは、例えば高校生の場合、いい学生だなと思う人が必ずしも学習成績がいいとは限らないということです。たとえば、高校ではスポーツに打ち込んでいたため勉強にあまり時間を使えず、成績自体はそれほどよくないのだけれど、人間的にすぐれているし情緒的にもしっかりしている受験生がいます。こういう人は入学してから伸びるなと思いました。

もちろん、成績は参考にするのですが、高校時代に運動や文化的な活動など何か一所懸命に頑張ったものを持っていることも大切だなという感じがします。

面接では、自分の言葉で話すことが大事ですね。とくに高校生は面接のための指導を受けてきていると思いますが、型どおりの受け答えをしているだけですと不自然さが出てきます。10分ぐらい話をしていると、その人の人間性が見えてきますから、自分の考えを自分の言葉で伝えていただきたいと思います。

冒頭でお話ししたように、看護師になるためには本を読んで勉強したり、実習の場で指導を受けることも大切ですが、患者さんからの学びがもっとも重要だということです。

医学は教科書どおりには行かないことが多く、患者さんの訴えを傾聴し、詳細な観察と分析を行って、応用問題を解くようなことがしばしばあります。私自身、いまでも日々、患者さんから学ぶことを糧にして、もっといい医師になろうと思っています。

しっかりした知識や技術を用いて患者さんのお世話をしながら、同時に患者さんからいろいろなことを学ばせていただく。すなわち、患者さんと医療者との相互関係が非常に大事なのです。

ですから、学生のときから患者さんへの感謝の気持ちを持ちながら学び、看護師として医療現場に出てもその気持ちを持ち続ける。そういう学生さんに本校にきていただき、患者さんに寄り添うことができる看護師を育てたいと思っています。

次回Part.2は、看護師の仕事や人材ニーズの最新事情についてご紹介します。

■東京女子医科大学看護専門学校

▲髙木 耕一郎校長

 
 
 
 
 
 
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