シリーズ32

高校におけるアクティブラーニング

Part.1 実態調査からみた現状
「高等学校における
アクティブラーニングの視点に立った
参加型授業に関する実態調査2015」から


編集部
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
更新:2017/01/23
アクティブラーニング(AL)は高等学校でも注目され、導入が進みつつあるといわれるが、実態はどうなのか。ここでは、東京大学大学総合教育研究センターの中原淳研究室と、日本教育研究イノベーションセンターが共同研究として実施した高校におけるALの実態調査から、実施率、イメージ、課題などについてまとめた。

学校全体で目標掲げているのは23%
校内研修実施率は都道府県で大きな差

この調査は、高校におけるアクティブラーニングの現状を把握する目的で実施され、調査結果の一部を速報値としてまとめた第一次報告書(報告書の詳細は文末)が公表されている。

調査時期は、2015年7月〜9月。調査対象校は、普通科またはそれに準ずる学科、および総合学科を設置する全国の高等学校。校数は3893校で、調査票の回収率は62.0%。実技や演習等の授業に力を入れてきたと考えられる実業学校は対象に含めていない。同様の理由で、調査教科については国語、地歴・公民、数学、理科、外国語の6教科以外は対象に含めていない。

各校の調査は、①校長、②教科主任、③アクティブラーニング(以下、AL)の視点に立った参加型授業を実施している教員を対象に、それぞれ調査項目が一部異なる調査票を配布するかたちで行った。

調査内容のうち、「ALの視点に立った参加型授業の実施率」は、校長調査では「教科として参加型学習に取り組んでいる教科がある」と回答した高校は75.5%で、多くの学校で取り組みが広がっていることが伺える【図表1】

図表1 ALの視点に立った参加型授業の実施率
アクティブラーニングの視点に立った参加型授業の実施率

その一方で「学校全体として参加型学習に関する目標を掲げている」「参加型学習に関する具体的な計画を策定している」と回答した高校は、それぞれ22.8%、13.4%にとどまっている。

報告書では、学校全体として推進する体制は整っておらず、それぞれの教科・教員が個別に取り組んでいる現状がうかがえる、としている。「教科別ALの視点に立った参加型授業の実施率」(教科主任調査による)をみると、国語が53.6%で最も高く、外国語51.6%、地歴・公民44.4%、理科43.7%と続き、数学が26.0%で最も低かった【図表2】

図表2 教科別ALの視点に立った参加型学習の実施率
(教科主任調査による)
教科別アクティブラーニングの視点に立った参加型学習の実施率

報告書では、各教科の特性等により、同調査の参加型学習の定義に該当しやすい教科もあれば、そうでない教科もあるため、この結果が一概にどの教科で授業の改善が進んでいるかを示すものではない、としている。

「都道府県別参加型学習に関する校内研修の実施率」(校長調査)をみると、研修を行っている学校の割合は、群馬県が77.1%で最も多く、広島県が66.2%、石川県が56.0%と続いている【図表3】。この3県は「学校全体として参加型学習に関する目標を掲げている」「参加型学習の推進に関する具体的な計画を策定している」「教員に対し、参加型学習に関する校外研修や勉強会への参加を推奨している」「参加型学習の実施について、校内の会議など積極的な呼びかけを行っている」と回答した学校の割合も高かった。

図表3 都道府県別参加型学習の内容を含む校内研修の実施率
順位 県名 実施率
群馬77.1%
広島66.2%
石川56.0%
三重48.6%
神奈川44.2%
43茨城11.7%
44新潟8.0%
45福島7.3%
46愛媛6.7%
47香川6.3%

全体をみると、都道府県による差がかなりあり、上記3県以外は、40%台、30%台、20%台、10%台、さらには1ケタ台まで幅広く分布している。

報告書では、この結果を解釈する際には、都道府県による回収率のばらつき、回答した学校の属性等の違いを考慮する必要があり、さらなる分析が必要、としている。

ALにはポジティブなイメージ
教員の負担増や授業進度など課題も

「『アクティブ・ラーニング』という言葉に対するイメージ」は次のようになっている。

校長は「生徒の力の向上に効果的な学習である」が68.0%、「積極的に取り組むべき学習である」が52.1%と高く、「いまさら取り上げるまでもなく、以前から取り組んできた学習である」が34.4%となっている。その一方で、「教員の時間的な負担が増えそうだ」が30.4%、「教員は困惑するだろう」が22.0%あり、なかには「あまり効果があるとは思えない」(2.5%)、「イメージが湧かない」(2.5%)とする回答もある【図表4】

図表4 アクティブラーニングに対するイメージ
  学校代表者 教科主任
 生徒の力の向上に効果的な学習である 68.0% 54.9%
 積極的に取り組むべき学習である 52.1% 36.4%
 いまさら取り上げるまでもなく、
 以前から取り組んできた学習である
34.4% 27.9%
 教員の時間的負担が増えそうだ 30.4% 33.5%
 教員は困惑するだろう 22.0% 17.7%
 授業が混乱するだろう 6.4% 10.0%
 あまり効果があると思えない 2.5% 6.0%
 イメージが湧かない 2.5% 5.8%

教科主任でも「生徒の力の向上に効果的な学習である」が54.9%と最も高く、「積極的に取り組むべき学習である」が36.4%、「いまさら取り上げるまでもなく、以前から取り組んできた学習である」が27.9%となっている。その一方で、「教員の時間的な負担が増えそうだ」が33.5%、「教員は困惑するだろう」が17.7%、「あまり効果があるとは思えない」が6.0%、「イメージが湧かない」が5.8%などとなっている。

報告書では、全般的に「アクティブ・ラーニング」という言葉にはポジティブなイメージを持っており、校長のほうが教科主任よりも、よりポジティブなイメージを持っていた、としている。

「ALの視点に立った参加型授業実施上の困難や課題、不安」は、設定した質問項目に対する5段階(「1:あてはまらない」から「5:あてはまる」)までの評価を得点化して集計している。

教科主任は「授業前後の教員の負担が増加する」が3.76(平均値、以下同)、「授業の進度が遅くなる」が3.73、「授業の時数が足りない」が3.63、「生徒の学習活動を客観的に評価することが難しい」が 3.45、「各教員の進度にばらつきが生じる」が3.37で、上位になっている。

校長は「授業前後の教員の負担が増加する」が3.75、「必要な施設・設備が足りない」が3.60、「授業の時数が足りない」が3.52、教員の授業スキルが不足している」が3.52、「予算が足りない」が3.43で、上位になっている【図表5】

図表5 アクティブラーニングの視点に立った参加型授業実施上の困難や課題、不安
  学校代表者 教科主任
 授業前後の教員の負担が増加する 3.75 3.76
 必要な施設・設備が足りない 3.60 3.33
 授業の時数が足りない 3.52 3.63
 教員の授業スキルが不足している 3.52 3.28
 予算が足りない 3.43 3.02
 授業の進度が遅くなる 3.38 3.73
 生徒の学習活動を客観的に評価が難しい 3.37 3.45
 各教員の授業進度にばらつきが生じる 3.18 3.37
1:あてはまらない/2:あまりあてはまらない/3:どちらともいえない/4:ややあてはまる/5:あてはまるの選択肢から、あてはまるものを1つ選んでもらう形式で尋ねた(単一選択)

報告書では、教科主任、校長ともに、教員の負担が増加することを最も懸念している点は共通しているが、その他は職階による特徴がみられる、としている。

「研究指定・重点指定の有無とALの視点に立った参加型授業への現在の取り組み状況」のうち、「参加型学習の内容を含む校内研修を行っている」のは「文科省指定あり」が32.9%、「文科省以外指定あり」が38.5%、「指定なし」が25.1%となっている【図表6】

図表6 研究指定・重点校指定の有無とALの視点に立った参加型授業の現在の取り組み状況
  文科省指定
あり
文科省以外
指定あり
指定なし
参加型学習の内容を含む校内研修を行っている 32.9% 38.5% 25.1%
教員に対し、参加型学習に関する校外研修や勉強会への参加を推奨している 54.1% 49.8% 42.2%
参加型学習の実施について、校内の会議などで積極的な呼びかけを行っている 33.8% 36.6% 26.5%

「教員に対し、参加型学習に関する校外研修や勉強会への参加を奨励している」のは「文科省指定あり」が54.1%、「文科省以外指定あり」が49.8%、「指定なし」が42.2%。

「参加型学習の実施について、校内の会議などで積極的な呼びかけを行っている」のは「文科省指定あり」が33.8%、「文科省以外指定あり」が36.6%、「指定なし」が26.5%。

この3項目については、いずれも「文科省指定あり」「文科省以外指定あり」が「指定なし」を上回る結果になっている。

《 Part.2「現場に聞く/埼玉県立浦和高等学校」につづく 》

《 本記事内掲載の図表の出典 》
木村充, 山辺恵理子, 中原淳(2015)東京大学─日本教育研究イノベーションセンター共同調査研究「高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った参加型授業に関する実態調査:第一次報告書」

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