シリーズ32

高校におけるアクティブラーニング

Part.2 現場に聞く
アクティブな教育活動の伝統生かし
多様なスタイルの協調授業を展開


埼玉県立浦和高等学校
教頭:山﨑 正義先生
英語:池野 智史先生、生物:菅野 治虫先生
数学:木戸 俊吾先生・齋藤 教雄先生
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
更新:2017/02/06
埼玉県立浦和高等学校では、アクティブラーニングの一形態である「協調学習」の取り組みを進め、現在では多くの教科で協調学習を取り入れた授業を行っている。教頭の山?正義先生をはじめ英語、生物、数学の先生方に、アクティブラーニングによる授業の内容や成果、教科内および教科を超えた連携などについて話を伺った。

アクティブラーニングを推進
英語ではジグソー法による授業も

浦和高校は、埼玉県が2010年度から実施した「県立高校学力向上基盤形成事業(現在の「未来を拓く学びプロジェクト」につながる)の研究推進校に指定され、学校としてアクティブラーニングに取り組んできた。しかし、もともと同校では教育活動全体がアクティブラーニング的なものだったという。山﨑先生は次のように説明する。

「本校では以前から、授業だけでなく学校行事や部活なども含めて教育活動全般が生徒の主体性を重視した参加型で、アクティブなものでした。たとえば、数学では生徒が教師のように説明しながら授業を進めるスタイルも多く取り入れていました。

工芸の授業では、何もないところから設計図をつくり、材料や道具も自分でそろえて作品をつくったりしていました。ですから、アクティブラーニングという言葉は最近になって出てきましたが、それに相当する教育活動を展開してきたといえるでしょう。

2010年度からは県の事業として協調学習(ジグソー教材)への取組みを推進することになったので、校内で研究推進委員を募り、初年度は数学科2名、英語科2名、国語科1名の参加でスタートしました。それを年々広げて、昨年は25名、今年は36名が取り組んでいます」

現在は多くの教科でアクティブラーニングが行われているが、英語の池野先生、生物の菅野先生、数学の木戸先生と齋藤先生にアクティブラーニングの内容や成果について教えていただくことにした。

英語の池野先生は、ジグソー法を取り入れた授業などを行っている。

▲山﨑 正義先生

「通常の授業では毎時間、ペアで話したり、グループで話したりする機会を設けています。また、各学期に1回程度、クラス全体、50分間を全て用いてジグソー法による授業を行っています。

たとえば、直近の英語表現では生徒を3人ずつのグループにして、3種類のテーマを各グループに1種類ずつ振り分けて、それを生徒たちに考えさせました(エキスパート活動)。

次に各種類1人ずつ3人で構成するグループに再編成し、最初のグループで学んだことを持ち寄り次の課題を考えさせ(ジグソー活動)、最後に1人ずつに戻り、60語程度の英作文を書かせました。

この授業では、英語の発話と書く英文の量が増えてくるというかたちで成果が出ています。また、いろいろな書き方、答えがあることをうまく共有できるようになっています」

生物は生徒自身が考えることを重視
数学では「ひとりジグソー」で学習

生物の菅野先生は、生徒自身の学習活動を重視した授業を行っている。

▲池野 智史先生

「私は毎授業、その日のテーマの概要や課題をまとめたプリントを用意しています。最初の10分ぐらいで概要を説明して、あとは生徒が教科書や資料を見たり、仲間と相談したりしながら課題を解いていきます。そして、最後に各自がその日の学習活動の振り返りを書きます。

もちろん、内容を理解することが授業の目標ですが、生徒が協力しながら勉強して学力を高めあえるようになってほしいと考えて、こういう授業を行うようになりました。

点数で表す学力でいうと、平均点では従来の授業とそれほど差はないのですが、ついていけないという生徒がほとんどいなくなりました。それが一番大きな変化ですね。そして、先生が話したことだけ理解すればいいというのではなく、一歩進んで自分で問いを立て自分で答えを見つけようとする学習姿勢が身についていくのを感じます」

数学の木戸先生は3年生を担当していて、ジグソー法を応用した学習活動を考案している。

▲菅野 治虫先生

「3年生は問題演習がメインで、事前に問題ごとに担当を決め、その生徒が予習してきた内容を解説し、みんなで議論します。

その学習を進めるうえで私は《ひとりジグソー》という方法を考えました。

ジグソー法を1人でやろうということです。

問題を解く過程を、解法の構造を考える『分解』、内容の理解を深める『深化』(エキスパート活動)、答案としてつくり直す『再構築』(ジグソー活動、クロストーク活動)に分け、自ら考える力を伸ばすようにしています」

齋藤先生は1年生の担当なので、3年生とは授業の進め方が異なっているという。

▲木戸 俊吾先生

「1年生はまず各単元の内容に習熟することが必要です。そのため、予習の着眼点をまとめたものを生徒に配っています。

授業では基本的な説明をしたうえで、着眼点について条件が変わったらどうなるかといったことをみんなで考えます。

1年生でも1単元12回のうち3〜4回は問題演習的な授業になるので、そのときは3〜4人のグループで、①何を求めるか、②どう求めるか、③決定した方針で計算という3ステップをループすることで問題を考え解いていく協働的な学びをしています。

こういう学習でテストの平均点がそれほど変わるわけではありませんが、菅野先生がいわれたように、自ら問いを立てて考えていく力を育てることにつながっていると思います」

教科内の情報共有や連携を図り
教科を超えた授業改善も可能に

同校では従来型の授業も行われている。そこで、教科内での授業に関する情報共有や連携をどのように行っているのか伺ってみた。

「ジグソー法による授業を行うときには英語科のほかの先生方にも見にきていただいたり、授業の方法やワークシートなどを英語科の全教員で共有できるようにしています。そういうことを通じて、生徒の対話する機会を増やすようになったケースも出てきています」(池野先生)

「生物は私を含めて教員が3人いますが、頻繁に情報交換をして授業内容や指導の考え方についてディスカッションしています。水曜日を授業を見合う日にし、それぞれの授業についてコメントし合いながら授業改善を考えています」(菅野先生)

「いま、こういう授業、こういう取り組みをしているということについて数学科の教員間で常に話をしています。新しい取り組みを考えているときなどは、ほかの先生からアドバイスをいただくこともあります。そうした取り組みは、授業を見ていただいたり結果を伝えるなどして共有化も心がけています」(木戸先生)

「私は今年、県の事業の公開授業をジグソー法で行ったのですが、教材シートを作成するとき、ほかの先生に相談して自分とは違う視点からアドバイスをいただき、それを取り入れました。授業の方法論は先生ごとに異なりますが、連携はしっかりとれています」(齋藤先生)

さらに、同じ教科内だけでなく教科を超えた情報共有や連携も行われている。

木戸先生は次のように話す。

「年に数回、各教科の授業を公開して教員が相互に見る期間を設定しています。たとえば、英語の教員がジグソー法の授業をするから、数学や理科などの英語以外の教員も見にいこう、という感じですね。そのあとに当該教科以外の教員も参加する授業検討会を開いて、授業の方法や進め方などについて議論しています。

教科を超えた情報の共有や連携を図っているので、異なる教科の授業をヒントにして担当教科の授業改善につなげていくこともできます。教員同士が相互作用で学んでいる状況があります」

《 Part.3「識者に聞く/東京大学 大学総合教育研究センター 中原淳准教授」につづく 》

■埼玉県立浦和高等学校

▲齋藤 教雄先生

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シリーズ2
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シリーズ1
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