高等学校とキャリア教育

全国の高校で実施されているキャリア教育の取り組みを紹介

第8回

第8回
キャリア教育実践レポート
「産業社会と人間」 Part.5
筑波大学附属坂戸高等学校の実践例(2)

インタビュー
筑波大学附属坂戸高等学校3年生
Aさん、Bさん
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
公開:
 更新:

――入学して突然、2泊3日のキャンプに行くというのはどうでしたか?

Aさん 行く前はすごく不安でしたが、最初に「コミュニケーションキャンプ」に行って、しかもクラスとは関係なくバラバラに班になったので、人間関係の輪が広がったと思います。

Bさん 行きのバスの中はぎくしゃくしていましたが、帰りは全然違っていました。

――一番楽しかった活動は何ですか?

 「菜園づくり」で枝豆ととうもろこしを育てたのがとても楽しかったです。私は東京都に住んでいるので近くには市民農園くらいしかなく、今まで食物を育てる体験はしたことがありませんでした。始めてこういう広々とした環境で友だちと一緒に作業をしてみて、楽しいなと感じました。

今、「生物資源・環境科学系列」で学んでいるのですが、こういう選択をしたのはあの体験で作物を育てるのは楽しいと思い、とても感動して、もっと勉強したいと思ったことがきっかけでした。それから、環境のことを研究している先生のお話を聞いたことも、ますます興味を持つきっかけになりました。

 私は「ライフプラン」の発表が面白かったです。活動は全部楽しかったのですが、そのすべてを踏まえて自分が考えたことを文章にして、それをみんなに発表するというのが楽しかったですね。

クラスのみんなの発表を聞いて、この人はこんなことを思っているとわかったことも、刺激になりました。

――自分のライフプランをみんなの前で発表するということに、抵抗はなかったですか?

 全くなかったです。どんなことを言っても誰もバカにしたりする人はいないし。私は「ライフプラン」に、それまで親に反抗するようなことがよくあったけれど、障害のある方と接していくうちに自分が健康に生まれてきたことはすごいことなのだと気づいたこと、人と関わる仕事につきたいと思ったし、親にも感謝していること、などを書きました。今は親とすごく仲がいいです。

 私も「ライフプラン」作りは楽しかったです。希望を文字にするとやる気が出てくるのだなと感じました。

――それが刺激になって勉強もやる気が涌いてきましたか?

 はい(笑)。私はそれまで資格を取ることなど考えたことがなかったのですが、調理系の資格を取ろうと思うようになり、実際に取りました。

 私もライフプランが自分の中で整理できて、他の人からも刺激を受けて、やらなければいけないことはこんなにいっぱいあるのだということにも気づいて。それで資格試験も受けようと思いました。

それに、私はこの学校に来て始めて勉強が楽しいと感じるようになりました。先生たちと話すのもすごく楽しいです。先生たちもみんな好きなことがあるということがわかって、その「好き」という感情を学べるのが一番楽しいです。

 私は今までは自分に自信がなく、何事にもネガティブ派でした。でもこの学校で学んでいるうちにすごくポジティブになったと思います。

――他校の友だちはこの授業のことをどんなふうに言いますか?

 いいなって言われます。難しい勉強ではなく、役に立つことをやっているので。

 友だちから、自分の学校ではクラスの中で夢について話すことなんかないから、何を考えて、何をやっているのかわからない子がいっぱいいると言われました。この学校では自分の夢を話すから、あの子が頑張っているから自分もという気持ちになるし。他でもそういう機会があるといいのにと思います。

 うちの学校では、系列ごとに集まっているときはもちろんそういう話がすごく出るし、系列が違う子とでも話します。友だちと話していて、「へー、こんな職業もあるんだ」と思うようなことがよくあります。

――みなさんは早い時期にオープンキャンパスに行ったようですが、どんなところを注意して見ましたか?

 私は今までに5校くらい行ったのですが、直感で雰囲気が自分に合っていないと感じたところには行くのをやめようと思いました。4年間学んでいく学校なので、たとえやっていることが良くても、自分に合わなかったらだめだと思います。

オープンキャンパスで雰囲気がいいと感じたら、次は普通の授業をやっているときに行ってみて、この学校の卒業生に話を聞いたりしました。

 私はオープンキャンパスでは学生を見たり、実際にどんな研究をしているのかを見たりします。今まで気になっている学校に2回行ったのですが、実際に教授にお話を聞いたりもしました。

でも雰囲気も大事だと思います。校舎が新しいとか、キャンパスがきれいとかいうのではなくて、その学校に入ったときに感じた雰囲気がいいか悪いかは大きいです。それと、説明してくれる先生に熱意があると感動します。ぜひ入ってほしいという熱意ではなくて、「こんな研究しているんだよ、すごくない?」という感じの熱意に惹かれますね。

――授業で農業体験をするので、そういう方面に興味を持つ子が多いのかなと思いますがどうですか?

 そういう子もいますけど、障害のある人たちと交流して福祉に興味を持った子も大勢います。

 実際に特別支援学校の人たちに会ってみたら、障害があってもみんなとてもしっかりしていて。私たちとはまた違う視点で自分の夢を持っていることを知りました。

 私たちは何かあるとすぐに面倒くさいとか言うけれど、あの学校のみんなはそんなこと、全然言わないんですよ。教えられたことがたくさんあります。

――「職場体験」はどうでしたか?

 私は介護施設に行きました。そこで実際に食事の介護をさせてもらって、少しでも1回に口に入れる量が多かったり少なかったりするとだめだと知って、すごく難しいということを実感しました。それにそういうお年寄りとふれ合ったことで、自分がいかに恵まれているかを再発見しました。

 私は所沢にある「トトロの森」で森の自然を守っている人のところに行きました。みなさんのお話を聞いて、自然保護の方法にもいろいろな方法があるとわかったし、とてもいい経験ができました。

――今、夢を持てないという子どもが多いと言われていますが、この学校ではどうですか?

 うちの学校にはそんな子はいないですね。私もやりたいことが多すぎて困るくらいです。

 私もです!

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