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ないなら創る
~双子が乗れる自転車~


工藤 啓
更新:2017/11/20

いつの時代も、私たちの頭のなかには「これがあったらいいのに」であふれています。そして、いまは“ない”ものが出てきたとき、私たちは“これがほしかった”ということでそのサービスや物を使います。

誰でも無料で使えるSNSであったり、簡単に使えるスケジュール管理アプリであったり、離れた場所にいても一緒に遊べるゲームであったり、それらはインターネット上のものに限りませんが、比較的手に取りやすいのはアプリかもしれません。

新しいサービスや物が創られるとき、そこには“ないなら創る”ひとがいます。大企業に所属するひとということもあれば、中高生が自宅で創ることだってあります。

話は変わりますが、私は4人の子どもがいて、三男と四男は双子です。街中で自転車の前と後ろに子どもを乗せて走っている自転車を見たことがあるでしょうか。とても便利な自転車ですが、前後に子どもを乗せると荷物や買い物袋を置くところがなくなってしまい、とても危険です。自分だけならまだしも、小さな子どもを乗せていると危険な行為はしません。

そのため、行動範囲は限られてしまい、少し遠くに行くことや買い物に出ることをあきらめてしまいます。双子家庭の親として「もう少し行動しやすいといいのにな」と、簡易で広範に移動できる手段を願います。

兵庫県尼崎市に「ふたごじてんしゃ」という会社があります。名前の通り、双子のための自転車を開発しています。社長の中原さんはご自身が双子のお子さんを持たれたとき、移動手段が限られていることに悩んでいました。それは同じ双子家庭の友人や知人も同じでした。

そこで中原さんは自ら“ないものを創る”ことを決めて、双子でも安全に乗れる自転車を創ることに決めました。私も新聞記事で中原さんの自転車を知ったとき、どうしても乗ってみたくなって連絡を取りました。先週、東京で開発中の自転車を試し乗りできるということだったので、実際に子どもたちを連れて行ってきました。

その自転車は、椅子が後ろに2つ付いていて、双子を後部座席に座らせます。がっちりベルトをはめるので不安もなく、何より前のカゴが使えるので、双子を連れて出かけるときの大きな荷物を置くこともでき、買い物袋もそこに入れることができます。双子用の自転車は来年の早い時期に販売されるところまで来ているそうです。それまで何度も試作品を創り、多くの双子家庭の意見を聞きながら改良を重ねています。

まさに、ご自身が考える“あったらいいな”を誰かが創ってくれるのを待つのではなく、自分で創ってしまおうとされています。彼女は技術者でも、ましてや自転車を創ったこともありません。それでも彼女の“ないものは創る”気持ちに共感した企業や個人、もちろん双子家庭の家族たちも惜しみない協力をすることで、もうすぐ彼女の創る自転車が双子家庭に届くところまで来ました。

いま、目の前にないものを創るのは特別な一握りのひとではなく、「これがあったら自分もみんなも助かるぞ、喜ぶぞ、創るぞ!」と行動したひとによって実現するものなのです。

■株式会社ふたごじてんしゃ

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1