そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

106-2

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言葉にしてみる
~また行きたいです~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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育て上げネットに通う中学生や高校生のなかには、さまざまな事情で学校にあまり通えなかったり、みんなが盛り上がる行事に参加できなかったりするひともいます。せっかく少なくない時間を同じ場所で過ごしたのだから、学校とは別の思い出づくりをしたいという声もありました。

そういう学校とは異なる場を大切にしたいということから、希望者で大学のキャンパスに行ってみたり、普段出入りすることのない企業に行って、社員さんらとランチをいただいたりします。地域のお祭りに「ガチ」で出店したり、サマーキャンプなどはとても盛り上がります。

中学生なら中学生、高校生なら高校生だけで何かをするのもいいのですが、さまざまな価値観を持つひとたちと混ざって何かにチャレンジするというのは、誰にとっても成長の源泉だと思うのです。

毎年2月か3月に子どもたちと旅行に行っています。修学旅行的でもあり、3年生にとっては卒業旅行的でもあります。私たちはこれらの行事を押し付けることはありません。「行ってみたい」「やってみたい」という声があれば実現できるよう努力しますし、全員が参加しなければならないということもありません。

サマーキャンプや旅行の希望はとても多いのですが、移動費や宿泊費など少なからずお金がかかります。それでも企業から助けていただいたり、クラウドファンディングなどを通じて寄付を集めたりして実現しています。

そしてイベントが終われば、「また行きたい」という声をもらったり、お手紙をいただいたりして、また次も実現できるように頑張ろうと思うわけです。私たちはそういう「やってみたい」を応援するためにいるからです。

今年も彼らの「行きたい!」「やってみたい!」が叶うように職員みんなで話し合いをしています。ここ数年の変化としては、子どもたちから「自分たちでも資金調達を手伝いたい」という話が出ることです。

何でも私たちに任せ、自分たちは楽しむだけでいいのかなと思ったのかもしれません。いまは立場を越えて、一緒にできることはともに頑張るスタンスでやっています。そして子どもたちも少し気が付いてきたようです。自分自身に直接お金が入るわけでもなく、自分たちを含む誰かのために知恵や時間を使うことは、「案外悪くない」ということを。

もしかしたら、ウチの卒業生のなかから、将来一緒に働く仲間が生まれるかもしれません。それもこれも「また行きたい」「今度はこれをやってみたい」と、彼らが素直な気持ちを伝えてくれるからに他なりません。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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