そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏によるエッセー

107-1

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周りにいない同級生
~見た目が違うだけ~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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先日、大阪に出張してきました。大きな理由のひとつが、以前ここでも紹介した「TECH募金プロジェクト」選考会のためです。さまざまな課題や困難を抱える高校生に対して、新品のパソコンと夏休みのプログラミングキャンプを提供します。

認定NPO法人育て上げネットと認定NPO法人D×P(ディーピー)が協働で200万円の寄付を集め、5名の高校生を選ぶことになっています。応募者は総じて経済的に厳しい家庭の高校生でしたが、それだけではなくさまざまな「生きづらさ」を抱えていました。

応募者の中には外国にルーツがある高校生も複数含まれていました。外国にルーツがあるといってもピンと来ないかもしれませんが、例えば、ご両親のどちらかが日本人ではない高校生です。

いまでは両親のどちらかが外国の方というのは珍しくはないかもしれませんし、みなさんの同級生にもたくさんいるかもしれませんし、そんなことは気にせずに友だちとして付き合っているのかもしれません。

それでも両親がともに日本人であるひとが大多数のなかで、彼らや彼女らの存在はどのように社会に映っているでしょうか。また、社会は彼らをどのように見ているでしょうか。

「日本人」とは何か?
「ハーフ」たちの目に映る日本社会と人種差別の実際
下地ローレンス吉孝(「ニッポン複雑紀行」より)

私がいつも読んでいるウェブサイトでは、それについての記事が描かれていました。みなさんはわかりませんが、日本には日本人でありながら日本人であることについて悩んだり、苦しんだりしているひとがいます。

TECH募金プロジェクトでも、幼少期は外国で暮らし、小学生や中学生に来日してずっと日本人として暮らしている高校生がいました。しかし、周囲からは言葉や肌の色などで、明確にいじめや差別を受けたり、心内言葉を投げかけられたりして、悲しい思いをしています。

先生を選べない以上、非常に親身になってくれる担任になる場合も、そうでない場合もあります。そんなとき、彼らが安全で安心であると実感できるのが、言葉や肌の色など一切無関係に笑いあう仲間の存在です。

いまや肌の色が異なるから日本人ではない、という判断をする時代ではありません。いまの高校生は私の時代よりずっとルーツが外国にあったり、「ハーフ」であったりする同級生が多いかもしれませんが、地理的にまったくいないこともありえます。

これから働き始めたり、大学や専門学校に進学をしたりしていくと、これまで比較的近い場所で生活をしていたひとが集まる世界から大きく環境が変わることもあるでしょう。

言うまでもありませんが、他者のことを知るには実際に話をしたり、行動をともにしたりするのが一番です。誰かの噂や、自分の知っている範囲の世界を前提にして他者を判断することは、みなさん自身のさまざまな可能性を狭めてしまいます。

新しい世界に飛び出していくにあたって、この日本にも本当に多様な日本人がいるということを心に留めておいてほしいです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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