シリーズ5

忙しい先生の業務効率化と円滑な学校運営
Part.5 行政の対応を探る①

教育再生会議インタビュー

教員の事務負担軽減を提言に盛り込む


内閣官房 教育再生会議担当室
久芳全晴(くば まさはる)主査
※組織名称、施策、役職名などは取材当時のものです
更新:2008/05/19
教員の勤務実態が具体的なデータとなって明らかになり、中央教育審議会や教育再生会議など、行政側から教員の勤務負担軽減が必要との提言が相次いで出された。その具体的な内容について、内閣官房教育再生会議担当室の・久芳全晴主査(取材当時※)に、報告に盛り込まれた教員の事務負担軽減の必要性や実現に向けた道筋などを中心に話を伺った。

子供と向き合う時間を増やすため
教員の事務負担軽減などが必要

――第2次報告では、教員が子どもと向き合う時間を増やすことについて触れていますが、こうした提言が出てきた背景には何があるのでしょうか。

「ここ数年、新聞などで学校の教員が非常に多忙であることが報道されています。教育再生会議でも、教育委員会の方、小学校副校長の方、教員をなさっていた方などをはじめ各委員の方々が、教員が多忙であることは教育問題の一つの根っこであろうという認識を持たれておられました。

ちょうど第2次報告のまとめに向けた議論をしているとき、文部科学省から教員勤務実態調査の結果が発表されたのですが、それを見ると、1日あたりの教員の残業時間は平均で約2時間、月にすると平均34時間の残業をしていることが明らかになりました。

教員が多忙である状況も当然改善していかなくてはいけませんが、それとともに、頑張っている教員の処遇を充実させることも必要です。

教員は、その職務と勤務態様の特殊性から、一般企業と違って時間外勤務手当は支給されず、給料の4%を教職調整額として一律に支給されていますが、長時間に及んでいる残業の実態に鑑みると現状に合っていません。

ただ、処遇の充実といっても一律に考えるのではなく、提言ではメリハリのある給与体系の実現を求めています。文部科学省の教員勤務実態調査を見ても、残業時間の長い教員もいれば短い教員もいます。たとえば、教頭・副校長は最も忙しく、教諭より約1時間残業時間が長くなっています。若手の教員の残業時間も長くなっています。そういう実態を踏まえながら、第2次報告ではメリハリある給与体系にすべきとの提言がまとめられました。これについては、08年4月を目途に制度改正をしていくように提言しています」

学校の事務の共同実施や
外部委託も有効な手段

――第2次報告の提言では、教員の事務負担軽減につながるものとして、学校の事務の共同実施や外部委託なども具体的に示していますが、これはどのような経緯で出てきたのでしょうか。

「委員の方々が、マネジメントという観点から、調査や事務的なことは各分野の専門の職員に任せるなどして教員が授業に集中できる体制をつくるべきではないか、という意見を会議の中で述べられました。

議論を積み重ねていったところ、事務負担軽減の方法として、各種調査や提出書類の簡素化・軽減、複数の小・中学校の事務を共同実施する体制の整備、事務の外部委託、地域の人材の協力、教育現場のIT化を進めることなどが提言に盛り込まれました」

――教員の事務負担軽減に関連することで、第3次報告に盛り込まれたものはありますか。

「第3次報告には7つの柱があります。そのうち4つめの柱である『学校の責任体制の確立』の中で、『ITの導入、事務の共同処理等により現場の無駄を廃し、事務体制の効率化を図る』などを提言しています。

また、事務負担軽減とは異なりますが、5つめの柱である「現場の自主性を活かすシステムの構築」の中で、社会人等から教員を大量採用することによる学校の活性化、教員養成の抜本的な改革などについて提言しています」

文部科学省や教育委員会が
提言実現へ動き出す

――教員の事務負担軽減は、実際にはどのように進めていくのでしょう?

「教育再生会議の提言を踏まえ、文部科学省や各自治体の教育委員会に取り組んでいただくことになります」

――たとえば、事務の共同化や外部委託について、教育再生会議から文部科学省の特定の部署に事業としての取り組みを申し入れているのですか。

「教育再生会議は総理大臣、官房長官、文部科学大臣、有識者委員で構成されていますので、教育再生会議の報告を踏まえ、内閣として取り組んでいくことになります。すでに、文部科学省から学校に対して出される調査依頼の削減統合や、08年度予算において事務の外部化などのための予算が計上されていると聞いています。また、教育委員会レベルで取り組むべきことについては、各教育委員会でも取り組んでいくことになります。

※教育再生会議は08年2月26日付で解散し、提言のフォローアップを行う教育再生懇談会が同日付で設置されている。久芳氏は現在、教育再生懇談会担当室主査だが、本文は教育再生会議についてインタビューしたものであるため、当時の役職名を使用した。

教育再生会議とは

【目的】
教育再生会議は、21世紀にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を図っていくため、教育の基本にさかのぼった改革を推進することを使命とする。

【開設期間】
2006(平成18)年10月10日に閣議決定で設置。08年2月26日付で解散。同日、教育再生懇談会を設置。

【構成メンバー】
内閣総理大臣、官房長官、文部科学大臣、有識者委員で構成される。

【分科会と議論されるテーマについて】
「学校再生分科会」学力や教員など学校の問題を議論する
「規範意識・家庭・地域教育再生分科会」規範意識や家庭、地域社会の教育力の問題を議論する
「教育再生分科会」より大きな教育の改革の問題を議論する

【報告書】
議論の内容は、07年1月から1次〜3次にわたって報告が出され、2008年1月31日に、それらをまとめた最終報告を出している。

《第一次報告の概要》

■7つの提言(初等中等教育を中心に)
〈教育内容の改革〉
1.「ゆとり教育」を見直し、学力を向上する
2.学校を再生し、安心して学べる規律ある教室にする
3.すべての子供に規範を教え、社会人としての基本を徹底する
〈教員の質の向上〉
4.あらゆる手だてを総動員し、魅力的で尊敬できる先生を育てる
〈教育システムの改革〉
5.保護者や地域の信頼に真に応える学校にする
6.教育委員会の在り方そのものを抜本的に問い直す〈地方教育行政法の改正〉
〈「社会総がかり」での全国民的な参画〉
7.「社会総がかり」で子供の教育にあたる

■4つの緊急対応
①暴力など反社会的行動をとる子供に対する毅然たる指導のための法令等で出来ることの断行と、通知等の見直し(いじめ問題対応)
②教育教員免許法の改正(教員免許更新制導入)
③地方教育行政法の改正(教育委員会制度の抜本改革)
④学校教育法の改正(学習指導要領の改訂及び学校の責任体制の確立のため)

《第二次報告の概要》

1.学力向上にあらゆる手立てで取り組む -ゆとり教育見直しの具体策-
提言1 授業時数10%増の具体策
提言2 全ての子供にとって分かりやすく、魅力ある授業にする
提言3 教員の質を高める、子供と向き合う時間を大幅に増やす
提言4 学校が抱える問題に機動的に対処する
提言5 学校現場の創意工夫による取組を支援する

2.心と体-調和の取れた人間形成を目指す
提言1 全ての子供たちに高い規範意識を身につけさせる
提言2 様々な体験活動を通じ、子供たちの社会性、感性を養い、視野を広げる
提言3 親の学びと子育てを応援する社会へ
提言4 地域ぐるみの教育再生に向けた拠点をつくる
提言5 社会総がかりでの教育再生のためのネットワークをつくる

3.地域、世界に貢献する大学・大学院の再生 -徹底した大学・大学院改革-
提言1 大学教育の質の保証
提言2 国際化・多様化を通じ、世界から優秀な学生が集まる大学にする
提言3 世界トップレベルの教育水準を目指す大学院教育の改革
提言4 国公私立大学の連携により、地方の大学教育を充実する
提言5 時代や社会の要請に応える国立大学の更なる改革

4.「教育新時代」にふさわしい財政基盤の在り方
〈初等中等教育再生のための3つの具体策〉
具体策1 必要なところに重点的な支援
具体策2 メリハリある教員給与体系の実現
具体策3 地方における教育費の確保
〈大学・大学院改革実現のための3つの具体策〉
具体策1 競争的資金の拡充と効率的な配分
具体策2 大学による自助努力を可能とするシステム改革
具体策3 国立大学法人運営費交付金の改革

《第三次報告の概要》

■7つの柱
1.学力向上に徹底的に取り組む 〜未来を切り拓く学力の育成〜
①全国学力調査、PISA調査の結果を徹底的に検証し、学力向上に取り組む
②「6-3-3-4制」を弾力化する
③英語教育を抜本的に改革する、今の時代に求められる教育を充実させる
④「大学発教育支援コンソーシアム」の推進により新しい教育モデルを創出し、実証する

2.徳育と体育で、健全な子供を育てる 〜子供たちに感動を与える教育を〜
①徳育を「教科」とし、感動を与える教科書を作る
②運動・食育・生活慣習が一体となった体力向上とスポーツの振興を図る
③体験活動により子供の心と体を育てる

3.大学・大学院の抜本的な改革 〜世界トップレベルの大学・大学院を作る〜
①大学・大学院教育の充実と、成績評価の厳格化により、卒業者の質を担保する
②国立大学法人は、学部の壁を破り、学長リーダーシップによる徹底したマネジメント改革を自ら進める
③「国際化」「地域再生」に貢献する大学を目指す
④大学・大学院を適正に評価するとともに、高等教育への投資を充実させる

4.学校の責任体制の確立 〜頑張る校長、教員を徹底的に応援する〜
①学校のマネジメント改革を行い、校長がリーダーシップを発揮できるようにする
②子供の教育に専念できるよう教員を応援する

5.現場の自主性を活かすシステムの構築 〜情報を公開し、現場の切磋琢磨を促し、努力する学校に報いる〜
①学校の情報を公開し、保護者、地域の評価、参加により、学校の質を向上する
②適正な競争原理の導入により、学校の質を高める
③多様な分野の優れた社会人等から教員を大量に採用し、学校を活性化させる
④教員養成を抜本的に改革する
⑤学校の適正配置を進め、教育効果を高める

6.社会総がかりでの子供、若者、家庭への支援 〜青少年を健全に育成する仕組みと環境を〜
①子供、若者、家庭に対し、教育、福祉、警察、労働、法務等の連携システムを作り、総合的に支援する
②有害情報から子供を守るため、全ての子供の携帯電話にフィルタリングを設定する
③幼児教育を充実する、子育て家庭、親の学びを地域で支援する

7.教育再生の着実な実行
①動き出す教育再生
②教育再生の実効性の担保、フォローアップ

▲内閣官房 教育再生会議担当室 久芳全晴 主査

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