シリーズ17

自立進学 〈親がかりでない大学進学の可能性〉
Part.4 自立進学シミュレーション①

〔2〕タイプ別シミュレーション


企画・構成
田中 俊亘(教育ジャーナリスト)
※制度内容、金額等は執筆時のものです。現在の制度詳細についてはご確認ください
更新:2013/04/08

タイプ別シミュレーション

自立進学を考える場合は、在学中の費用ばかりでなく、大学卒業後の返済できるかどうかを考慮する必要があります。大卒者の初任給は20万円程度です。教育ローンと奨学金を利用した場合の返済額をシミュレーションしてみました。返済の可能性を探る参考にしてください。

〈シミュレーション基本条件〉

1.進学先はすべて4年制大学昼間部とする。

2.かかる費用は日本政策金融公庫の「国の教育ローン」と日本学生支援機構の「奨学金」、およびアルバイト収入で賄うものとする。アルバイトでは月額3万円で年36万円を調達するものとする(日本学生支援機構の平成22年度調査では、大学昼間部自宅生のアルバイト収入平均は年34万8,800円)。

3.教育ローンは、入学年の2月に15年返済で借り入れ、在学中は元金据え置きで返済は利子のみ、借入から4年2か月後の卒業と同時に、約11年をかけて均等返済(ボーナス加算なし)すると想定。また、奨学金の返還は卒業して半年後からスタートするため、現実には半年間は教育ローンのみの返済となるが、下記の返済シミュレーションではそれは考慮しない。

4.利率は国の教育ローン2.45%、日本学生支援機構の奨学金1.5%で試算。

5.教育ローン、奨学金とも、保証料の必要な保証制度は利用しないものとする(この場合、保護者が借り入れる教育ローンには連帯保証人1人が必要。奨学金には連帯保証人〈父母等〉1人と、生計を別にする4等身以内の保証人1人が必要)。

ケース1 国立大学・自宅通学

◆4年間の大学納付金/242万5,200円
◆修学・生活費/年56万円
(4年間で224万円)

4年間で必要な金額は約467万円。入学前に必要な前期納付金の約55万円を国の教育ローンで調達し、計画通り月平均3万円(4年間計144万円)のアルバイト収入が得られるとするなら、あわせて199万円。残りは268万円となり、4年間48回で割ると、月5万5,800円の奨学金が必要となります。日本学生支援機構の国公立・自宅生向けの第一種(無利息)奨学金の貸与月額が4万5,000円。これだけだと月10,800円、4年間で50万円ほど不足するため、50万円まで増額して貸与が受けられる日本学生支援機構の「入学時特別増額貸与奨学金」(利息付)を利用することにします。

以下は、教育ローン55万円、第一種奨学金月4万5,000円+入学時特別増額貸与奨学金50万円の返済シミュレーションです。

【ケース1】国立大学・自宅通学
・教育ローンの返済月額:4,821円 ※在学中は月1,122円の利子返済
・奨学金返済月額:1万7,424円(14年)
・合計返済月額:
 当初約11年間:2万2,245円、12年〜14年:1万7,424円
ケース2 私立大学(文科系)・自宅通学

◆4年間の大学納付金/422万円
◆修学・生活費/年56万円
(4年間で224万円)

4年間の見込み費用は約646万円。初年度納付金128万円を教育ローンで調達すれば、残りは518万円となり、これが奨学金とアルバイト収入で賄うことになる金額です。年額にして約130万円、月換算で約10万8,000円。アルバイト収入を月3万円とするなら、奨学金は7万8,000円ほど必要です。私大・自宅生に対する日本学生支援機構の第一種(無利息)奨学金は5万4,000円ですから2万円以上足りません。第二種(有利子)奨学金で8万円を受給したケースで考えてみます。

1年次の奨学金(96万円)+アルバイト収入(36万円)の132万円から、1年次の修学・生活費56万円を引くと、残りは76万円。ここから2年次前期の納付金(学費の半金49万円)を支払っても、まだ27万円ほど残ります。これに、2年次前期の収入(奨学金半年分+アルバイト半年分=66万円)から生活費半期分(28万円)を引いてあわせた65万円で後期納付金を納め……という具合に繰り返していくと、卒業時には59万円ほど残ります。その59万円を教育ローンの繰り上げ返済をした場合のシミュレーションは次の通りです。

【ケース2】私立大学(文化系)・自宅通学
・教育ローンの返済月額:6,008円 ※在学中は月2,613円の利子返済
・奨学金返済月額:1万8,646円(20年)
・合計返済月額:
 当初約11年間:2万4,654円、12〜20年:1万8,646円
ケース3 私立大学(理工学部)・自宅通学

◆4年間の大学納付金/542万円
◆修学・生活費/年56万円
(4年間で224万円)

4年間の見込み費用は約766万円。初年度納付金155万円を教育ローンで調達すれば、残りは611万円。奨学金とアルバイト収入で年約153万円、月換算で約12万8,000円必要です。想定通りアルバイト収入を月3万円とするなら、奨学金の必要月額は9万8,000円。日本学生支援機構の第2種(有利子)10万円で賄います。

1年次の奨学金(120万円)にアルバイト収入(36万円)をあわせた156万円から、1年次の修学・生活費56万円を引くと、残りは100万円。ここから2年前期の納付金65万円を納め、余った35万円と2年前期の収入78万円で前期の修学・生活費(28万円)を賄い、後期の納付金を納める……を繰り返すと、4年前期の納付金を納める際に6万円ほど、後期納付金納入時には13万円ほど不足してしまいます。しかし、その前段階の節約で毎月5千円程度を貯蓄していた想定すると、卒業時には50万円ほど残る計算です。この50万円を教育ローンの繰り上げ返済にあてます。

【ケース3】私立大学(理工学部)・自宅通学
・教育ローンの返済月額:9,142円 ※在学中は月3,164円の利子返済
・奨学金返済月額:2万3,309円(20年)
・合計返済月額:
 当初約11年間:3万2,451円、12〜20年:2万3,309円

奨学金の第一種(無利息/私立・自宅5万4,000円)を併用して、第二種(有利子)の借入額を月5万円にすれば、奨学金の月返済額は2万2,454円となり、加えて在学中に月4,000円の残額が出ます。

ケース4 国立大学・一人暮らし

◆4年間の大学納付金/242万5,200円
◆ひとり暮らしの準備金/25万円
◆修学・生活費/年116万円
(4年間で464万円)

4年間の見込み費用は約732万円。大学納付金は自宅生と同じですが、一人暮らしをはじめる準備金を加えた修学・生活費は倍以上かかってしまいます。自宅を離れて国立大学に通う学生に向けた日本学生支援機構の第一種(無利息)奨学金は月額5万1,000円。自宅生に比べて、月6,000円、4年間トータルで28万8,000円上回っているに過ぎません。ケース1の自宅生とはまったく違う計画を立てる必要がありそうです。

まずは教育ローンで初年度納付金にひとり暮らし準備金を加えた107万円を調達します。2年次以降3年間の納付金合計額は160万7,400円ですから、月3万円、4年間計144万円のアルバイト収入だけでは17万円ほど足りません。

日本学生支援機構の第一種(無利息/月5万1,000円)と第二種(有利子/50,000円)の併用で月10万1,000円を借りれば、4年間の奨学金合計は484万8,000円。ここから修学・生活費(464万円)を差し引いて余る20万円ほどで、納付金の不足額を埋めると想定します。

【ケース4】国立大学・一人暮らし
・教育ローンの返済月額:9,379円 ※在学中は月2,184円の利子返済
・奨学金返済月額:
 第一種10,200円+第二種11,654円=21,854円(20年)
・合計返済月額:
 当初約11年間:3万1,233円、12〜20年:2万1,854円
ケース5-1 私立大学(文科系)・一人暮らし

◆4年間の大学納付金/422万円
◆ひとり暮らしの準備金/25万円
◆修学・生活費/年116万円
(4年間で464万円)

4年間の見込み費用は911万円。ここから、教育ローンに頼らざるを得ない初年度納付金(123万円)と準備金(25万円)を除いた763万円を、奨学金+アルバイトで賄うと想定しました。月3万円のアルバイト計144万円を引いた619万円、1年間で約155万円が奨学金の必要額です。

日本学生支援機構の第二種奨学金の最高額(年144万円)では足りません。無利息の第一種(64,000円)と第二種80,000円の併用でシミュレーションしてみました。この場合の4年間の奨学金借入額は691万2,000円となり、必要額を72万円ほど上回ります。これを、教育ローンの繰り上げ返済にあてたシミュレーションです。

【ケース5-1】私立大学(文化系)・一人暮らし
・教育ローンの返済月額:6,617円 ※在学中は月3,021円の利子返済
・奨学金返済月額:
 第一種12,800円+第二種18,646円=31,446円(20年)
・合計返済月額:
 当初約11年間:3万8,063円、12〜20年:3万1,446円
ケース5-2 私立大学(理工学部)・一人暮らし

◆4年間の大学納付金/542万円
◆ひとり暮らしの準備金/25万円
◆修学・生活費/年116万円
(4年間で464万円)

4年間の見込み費用が1千万円を超えます(1,031万円)。教育ローンで調達する初年度納付金155万円と一人暮らし準備金25万円を引いた851万円から、さらに4年間のアルバイト収入144万円を引いた707万円が奨学金の必要額です。年額約177万円、月額だと15万円ほどです。

日本学生支援機構の第一種(無利息)の私大・自宅生の月額6万4,000円と、第二種(有利子)10万円を併用し、月額2万円の貯蓄計96万円を教育ローンの繰り上げ返済にあてたシミュレーションです。

【ケース5-2】私立大学(理工学部)・一人暮らし
・教育ローンの返済月額:7,314円 ※在学中は月3,675円の利子返済
・奨学金返済月額:
 第一種12,800円+第二種23,309円=36,109円(20年)
・合計返済月額:
 当初約11年間:4万3,423円、11〜20年:3万6,109円

■日本学生支援機構
■日本政策金融公庫「教育一般貸付(国の教育ローン)」
Lineup

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シリーズ4
専門学校とAO入試

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高校における
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