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「違う」を考える
~さまざまな観点を持つ~


工藤 啓
更新:2016/10/31

誰もが個性を持っている(はず)。ひととは違う何かを持っている(はず)。そう言われても、なかなか自分と他者の「違い」をポジティブに捉えられないこともあります。テストや100m走のように点数やタイムで明確に順位がついたり、野球やバスケのように得点差で勝ち負けを決めたりすると、どうしても上には上がいるという話になります。

若者支援をしていると、地域で一目置かれたサッカー選手が、特待生や推薦で高校に入学してみたら、自分よりもずっと上手く実績のある選手に囲まれ、挫折したところからいろいろうまくいかなくなったという相談は少なくありません。

この「上手さ」にもさまざまな観点があります。強さや速さでも、重いものを動かせる強さもあれば、長時間持続的に力を発揮できる強さもあります。速さにしても、走力における速さがあれば、判断力における速さも「上手さ」につながるものでしょう。

このような考え方は言われれば「それはそうだ」となりますが、例えば、目の前にプロ選手がいる、芸能人がいる、社会的に成功したひとがいる場面では、「このひとはすべての面において自分より“上”だ」と考えてしまう。

こういう考え方の癖がついてしまうと、本当はそうではないにもかかわらず、自分はできない人間であると錯覚し、苦しくなってしまいます。友人や知人の素晴らしい部分には惜しみない、心からの拍手を送るとともに、さまざまな観点で物事を見ることで自分の良さや違いを理解できるようになりたいものです。

最後に、私の第三子、第四子が一卵性の双子です。二人はまったく同じDNAを持っています。基本的に食事も、行く場所も、暮らしている環境も限りなく同じです。まだ1歳になったばかりですが、生活のなかでしっかり差異が出てきています。遺伝子と成育環境が同じであっても、まったく別の人間になります。

しかし、二人をパっと見ると、多くのひとたちから「そっくり」「瓜二つ」「違いがない」と言われます。将来、二人には「またか!」ではなく、「このひとは見た目という観点で判断しているのだな」と冷静に受け止められる人間に成長してほしいと思っています。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1