研究室はオモシロイ

大学、専門学校や企業などの研究室を訪問し、研究テーマや実験の様子をレポート

第24回 Part.3

第24回 夜空を彩る人工流れ星を開発(3)
Part.3
宇宙空間で使われる装置について

人工流れ星プロジェクト 代表(株式会社ALE CEO)
岡島 礼奈(おかじま・れな)
【研究チーム】
首都大学東京 准教授 佐原 宏典氏
帝京大学 講師 渡部 武夫氏
日本大学 准教授 阿部 新助氏
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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流れ星。その存在は古代から知られ、現代では音楽、小説、ドラマなどのタイトルやそのなかのフレーズとしてもよく使われる。もちろん、流れ星は自然現象の1つだが、見る機会の少なさや見えたとしても一瞬であるという希少性、そして美しさなどが、時代を超えて、見た人々に強い印象を残すのだろう。そんな自然の流れ星とは別に、人工的に流れ星をつくり出すプロジェクトが、そのために設立した企業と大学の研究室などのチームによって進められている。そこで今回は、人工流れ星プロジェクトの発案者である株式会社ALE(エール)の岡島礼奈さんを訪ね、プロジェクトの全体像や研究内容などについて話を伺った(Part.3/全4回)

1粒ごとに「個室」を用意した
供給装置を開発

▲岡島 礼奈 氏

帝京大の渡部先生の専門は、衛星など宇宙機を紐状のもの(テザー)でつないだ宇宙構造物「テザーシステム」や宇宙機搭載品などの研究だ。渡部先生がプロジェクトで担っている役割と研究内容についても教えていただくことにしよう。

「渡部先生には、人工流れ星の元になる粒を供給する装置と放出する装置の研究を担っていただいています。

人工衛星には1,000個ぐらいの粒を載せる予定なのですが、その粒を宇宙まで無事に運ぶことや、放出装置に指定した粒を供給することがテーマになっています。

そのための装置として、粒1つひとつに個室があって部屋番号が決まっているようなものを開発していただいています。

人工衛星を打ち上げるときはかなりの振動があります。もし、粒を1つの大きなケースに入れていると、粒同士がぶつかり合って壊れる可能性があります。そこで、1粒1部屋というシステムにしているのです」

これには、粒を1つずつコントロールする意味もある。

「人工流れ星は何種類かの色を用意するつもりです。当然、それぞれの色ごとに粒は異なります。先ほどお話ししたように、大学の先生などに依頼された素材の粒を載せることもあると思います。

ですから、粒をミッションに応じて選び、順番も指定して放出装置に供給できるようにコントロールする必要があるのです」

▼人工流れ星用の小型人工衛星(イメージ)*中央の穴から人工流れ星の元になる粒を放出

放出装置でも
粒を1つひとつコントロール

無重力でのコントロールということもポイントになっている。地上のように重力を利用したしくみ、たとえば下の粒を動かせば上の粒が落ちてくるといったしくみは成り立たない。そこで、重力に頼ることなく、目的の粒を放出装置に供給できるようにしているそうだ。

「放出装置でも、粒は1つずつコントロールできるようになっています。放出自体はガス圧で行うのですが、佐原先生の軌道計算の話で触れたたように、放出速度や角度を調節する必要があるので、そういうことができるメカニズムにしています」

人工衛星は宇宙空間に上がってしまうと、システムに何か不具合が起こっても修理するというわけにはいかない。そのため、粒の供給装置や放出装置には、一部が故障しても別な方法で供給や放出ができるようなしくみも組み込んでいるそうだ。

エンジニアリングモデルは完成し 
振動実験や無重力実験を予定

供給装置と放出装置は、すでにエンジニアリングモデルができていて、今後はロケットの打ち上げや宇宙空間での運用を想定した実験を進めていく。

「1つは振動実験です。ロケットを打ち上げる振動に耐えられるか確かめます。それから真空実験。真空という条件のなかで装置がきちんと動くかどうかも実験をして確認します。さらに、無重力の状態で動くかどうかの実験も予定しています。

振動実験と真空実験は大学の研究設備でできますが、無重力は飛行機によるフリーフォールで実験する予定です」

《つづく》

●次回は最終回、『人工流れ星の明るさや色も改良』についてです。

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