研究室はオモシロイ

大学、専門学校や企業などの研究室を訪問し、研究テーマや実験の様子をレポート

第29回 Part.4

第29回 コミュニティカフェ・プロジェクト
~イチから企画を考え、実践で学ぶ~(4)
Part.4
「学問から学ぶ」「企業から学ぶ」
「活動から学ぶ」サービス創造学部

千葉商科大学 サービス創造学部 学部長
今井 重男 教授
専門:ブライダル産業、人的資源管理
主担当科目:ブライダルサービス論、サービス人的資源管理論
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
公開:

千葉商科大学 サービス創造学部では「学問から学ぶ」「企業から学ぶ」「活動から学ぶ」を3つの柱に学ぶ。その学びのひとつである「プロジェクト実践」は、単位認定される正課授業の一環として、公式サポーター企業等のサポートを受けながら、学生自身が新しいサービスを企画・実行するプロジェクト活動だ。コミュニティカフェ・プロジェクトをはじめとした各プロジェクト活動や学部の特長、めざす学生の人材像、大学として推進するSDGsの取り組みついて、サービス創造学部長(2020年12月取材時点)の今井教授に話を伺った。(Part.4/全4回)

Part.1 地域の人たちとSDGs12「つくる責任 つかう責任」を考えるコミュニティカフェ はこちら

Part.2 生産者と消費者を想いでつなぐためのエシカル消費啓発活動 はこちら

Part.3 地域の方々に「幸せを生むバナナと不幸を生むバナナ」があることを伝える はこちら

▲今井 重男 教授

サービス創造学部では学問から理論を学び、企業から刺激を受け、活動を通じて実践する。この繰り返しで理解を深め、次の学びに生かしている。具体的には学問を通じて基礎から応用までの知識と理論を体系的に学び、公式サポーター企業を中心としたビジネスの第一線で活躍する企業の方がゲストスピーカーとして特別講義を実施。最先端のサービスについて学ぶと同時に貴重なエピソードが学生たちのチャレンジ精神と社会を見る目を育てている。

そして学問や企業から得た知識をプロジェクト活動を通じて実践することでビジネスの現場に必要な新たな気づきや課題の発見につながっている。

学生は実践する上で上手く行かないことに頻繁に遭遇する。企画書が通らないなど、課題や失敗に直面しては、学問や企業からの学びに戻り解決策を探して克服していく。自分の都合だけで物事を捉えたり、仕事を進めたりすることは、実際のビジネスの場ではあまりないことだと実感するだろう。

教員やプロジェクトメンバーとコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めることで、問題解決型の思考を身につけていくのだ。

プロジェクトの魅力

2020年度のプロジェクトはコミュニティカフェ・プロジェクトをはじめ8つ。学生食堂の活用、スポーツ、メディアなどさまざまなテーマでプロジェクト活動を展開している。

学生食堂を活動の場とし、フードロスの削減や地産地消に寄与する商品の共同開発などを行う「THE UD・プロジェクト」。プロスポーツチームと公式戦の企画をプロデュースする「スポーツビジネスBB/FB・プロジェクト」。地域の魅力を発見し、情報発信するためにメディア制作を行う「メディア・プロジェクト」など多様だ。

それぞれのプロジェクトでは広報・会計など役割分担があり、マーケティングの知識を深堀りしたり、マネジメントについて学んだことを実践したり、授業での学びや各ゼミで学んだ知見も総動員してプロジェクト活動を行う。また、公式サポーター企業の講義でのリアルなビジネス事例も、応用・工夫のアイデアの源となる。

コミュニティカフェ・プロジェクトメンバーの学生は、公式サポーター企業が行う「サービス企業セミナー科目」などで、多くの企業の担当者から企業の事例を学び、大きな刺激になっていると教えてくれた。

日本の社会を支える一員として
実務力と創造力のある人材を育てる

千葉商科大学の教育の理念は、「実学教育」を通して治道家(ちどうか)を育成することを使命としている。治道家とは、大局的見地に立ち、時代の変化を捉え、社会の諸問題を解決する高い倫理観を備えた指導者のことだ。

「本学部は『学問から学ぶ』『企業から学ぶ』『活動から学ぶ』の3つの学びを柱としている。卒業後は、大学で学んだことを活かして、日本を支える仲間として働ける人になることを期待しています。

卒業後に働く場では、当たり前に提供している商品・サービスのさらなる進化・改善、また新しい創造を発露していってほしい。社会に出て日本を支える仲間として求められることを100%で返し、さらに2・3%上積みができる、実務力と創造力のある人材育成が、サービス創造学部がめざす人材像だ」と話す。

千葉商科大学とSDGs
教員がともに学び、学生と目標に向けて歩む

千葉商科大学では、建学の理念に基づく本学の事業活動において、SDGsへの取り組み方針を学内外に共有・公表することにより、社会的責任を果たす際の指針とすることを目的に「千葉商科大学SDGs行動憲章」を策定し、その教育研究及び事業活動において、国連が提唱する国際的な枠組みであるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する行動を推進する。

建学の祖である文学博士 遠藤隆吉は、商業道徳、武士道精神を身につけさせること、実業教育に力を入れることを理念とした。その理念の礎となった商業道徳と武士道精神は、今日のSDGsに通じている。

千葉商科大学はSDGsの取り組みに力を入れる理由として、以下のように述べている。

本学は、高い倫理観を持つ「治道家」の育成を教育理念としています。
「治道家」とは、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組み、エシカルでサステナブルな事業を追求することと捉えることができます。
(出典:「千葉商科大学SDGsへの取り組み」)

2017年にはSDGsを幅広くカバーする教育研究活動「学長プロジェクト」がスタート。4つのテーマから地域を志向した持続可能な社会づくりに全学で取り組んでいる。テーマの1つである「環境・エネルギー」では自然エネルギー100%大学をめざし、様々な試みやプロジェクトが行われている。教育機関として自然エネルギー100%プラットフォームに初登録された。

学長プロジェクトにより学部を横断した教員の学びが活性化。SDGsやエシカルの重要性を感じ、積極的に学んだ知識が学生への教育にフィードバックされている。SDGsの考えは各授業のなかに盛り込まれ、ビジネスを行う上での必須の考えとして学生に意識を促し、実際のプロジェクト活動で実践される。

「SDGsの考え方、学びを学生の頃から感じ理解して卒業していってもらえると嬉しい。一方で、強制的にSDGsを推し進めようとすると、窮屈になってしまう。まずはできる範囲で、できることからはじめよう」と学生には話しているという。

2021年春からは、学部長の任を収め、自ら担当する新規ビジネス商品化の新しいプロジェクトの準備を進めているという。他にもサービス創造学部では新たなプロジェクトが準備されている。引き続き、千葉商科大学 サービス創造学部の「プロジェクト実践」が注目を集めそうだ。

コミュニティカフェ・プロジェクト開催時の様子

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