第1回 Part.3

ロボットによる日常作業の可能性を探る(3)


東京大学大学院 情報理工学系研究科
稲葉 雅幸 研究室
※部署名、役職名、研究内容などは取材当時のものです
更新::2006/05/22

その場で必要な動作を手と言葉で教える

全身動作プランナは、何らかの目的を果たすにはどのように動けばいいかをロボットが考えるものだが、複雑な動作や意味の判断を伴うような動作は、プランナだけでは実現が難しい場合もある。

そこで、身体誘導にもとづく全身行動教示の研究に取り組んでいる。この研究は、ロボットにとって未知の行動をその都度教え、ロボットがその行動を獲得できるようにすることをめざすもの。これまでに、手を引いて移動させることや、手で教えた動作を覚えさせることに成功している。

「わかりやすくいうと、子どもの手を引いて歩かせたり、子どもの手を握って動作を教えるようなものです。手を引く移動の場合、引っ張られる力をセンサーで感知したら、その方向に動くようにプログラムしています。そして、たとえば流し台まで引っ張って連れていって、やかんを持って水を注ぐ動作を教えます。このとき、音声と組み合わせて動作を教えるようにしています。『持って』『注ぐ』といった言葉と動作を対応づけて覚えさせるのです」

手取り足取り
子どもに教えるように

教え方は、子どもを相手にするように、手取り足取りといった感じになる。やかんの取っ手を握らせる場合なら、ロボットの手を取って力を加え、握るという動作を言葉とともに教える。ロボットは、そこで発生した動作を言葉と対応させて記憶する。そして、その動作を獲得させることによって、次に「やかんを持って」といわれたらロボットだけで動作ができるようにしていくのだ。

また、いろいろな動作を覚えさせても人間からの指示があいまいだと、ロボットが質問してくるようになっている。

「これは、HRP2の下半身を車輪型にしたロボットでよく研究しています。人間が『それを取って』といっても、ロボットには『それ』が何かわかりません。そういう場合は物の属性、つまり色やサイズなどを質問してくるようになっています。『赤い物ですか』とか『小さい物ですか』といった定型文を覚えさせておきますが、どの属性について質問するのがいいかはロボットが判断します」

行動教示の研究は、ロボットの実用段階を想定したものでもある。将来、家庭にロボットが入ったとき、家のなかの環境も、求められる動作も一律ではない。その場その場で必要な動作を教え、それを覚えることが不可欠になってくるからだ。

《つづく》

●次回は最終回「生活支援ロボットの実用化に向けて」です。

■東京大学大学院情報理工学系研究科
■東京大学

▲稲葉 雅幸 教授

 

▲HRP2W

Lineup

第15回
工学院大学
工学部電気システム工学科

第14回
日本女子大学
家政学部被服学科

第13回
慶應義塾大学 経済学部

第12回
成蹊大学
理工学部情報科学科

第11回
早稲田大学
スポーツ科学学術院

第10回
首都大学東京大学院
都市環境科学研究科

第9回
明治大学
情報コミュニケーション学部

第8回
実践女子大学 生活科学部

第7回
東京工業大学大学院
理工学研究科

第6回
早稲田大学
教育学部地球科学教室

第5回
埼玉大学 教養学部

第4回
東京農工大学大学院
工学教育府応用化学専攻

第3回
青山学院大学
文学部日本文学科

第2回
東京理科大学
薬学部生命創薬科学科

第1回
東京大学大学院
情報理工学系研究科