研究室はオモシロイ

大学、専門学校や企業などの研究室を訪問し、研究テーマや実験の様子をレポート

第1回 Part.4

第1回 ロボットによる日常作業の可能性を探る(4)
Part.4
食器洗いや掃除機がけなどの
動作を実現

東京大学大学院
情報理工学系研究科 稲葉 雅幸研究室
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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日本はロボット先進国だ。かつては産業用ロボットが日本の製造業を躍進させ、最近はより人間の生活に近いところでロボットが活躍を始めている。ホビーの世界ではすでに産業化が進み、家庭やオフィスなどにヒューマノイド(等身大の人間型ロボット)が入ってくるのも、それほど遠い将来のことではないかもしれない。そこで、東京大学大学院情報理工学研究科の稲葉雅幸先生の研究室を訪ね、最先端のロボット研究について話をうかがうことにした。(Part.4/全4回)

▲稲葉 雅幸 教授

家庭内日常作業支援の研究は、より具体的な日常生活を想定し、ロボットに役立つ行動をさせることをめざしている。

「これは、いま重点的に進めているものですが、キッチンなど家のなかでHRP2はどういう動作ができるか調べていく研究といえます。何をやらせてみるかは研究室のメンバーが考え、これができたら次はこれという具合にどんどん発展させていきます。

たとえば、ロボットの手を使って食器洗いの動作をさせましたが、手が直接水に触れないようにロボット用の防水手袋も開発しました。掃除機がけの動作もできるようになりましたが、両腕を扱うのは難しいし、動かすと変形する掃除機のパイプを目で認識できる機能が必要という問題もあります。テーブル上の雑巾がけでは、力の入れ具合をどのように覚えていけばいいのか考えることが必要です」

このほかにも、床のほうきがけ、食器洗浄器への食器入れ、前述したやかんからカップへの水注ぎなどの動作などが可能になっている。ただ、これらはまだ、そういう動作ができることを確認したという段階だ。

「次の段階として、動作に意味を付随させたり、判断ができるようにすることがあります。

食器洗いなら、食器がきれいになっていなかったらどうするかという問題があります。掃除機がけも、いまはゴミのない状態で動作をしていますが、ゴミがあったときにそれを掃除できるようにする、あるいはゴミかどうかを判断させるという問題が出てきます。水注ぎの場合も、カップにどれくらい水を入れたらいいのかという判断が必要になります。

本当に人の役に立つ動作ができるようになるために、次に何をしないといけないかを考え、研究を進めていくということです」

日常生活支援ロボットの実用化は近い?

▲HRP2

HRP2の話を聞いていると、ロボットの進化に驚かされると同時に、人間レベルの行動をさせるには多くの課題が残されていることもうかがえる。それでも稲葉先生は、比較的近いうちに実用化が始まる可能性を指摘する。

「HRP2の研究では、このロボットでどういう動作ができるかを実証的に示すことをめざしてます。その実証例ができれば、このタイプのロボットをつくろうという企業が出てくるでしょう。そうなると、短時間で実用化に向けた開発が進む可能性があります。

やがてロボットは、自動車の次を担う産業として発展していくことになるかもしれませんね」

暮らしのなかに入ってくるロボット。アニメや映画ではお馴染みの光景だが、それが現実のものになるなら、私たち人間もロボットとの上手な付き合い方を「研究」しておいたほうがいいのかもしれない。

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