第4回 Part.1

安価な生分解性プラスチックを
畑のなかからつくり出す(1)


東京農工大学大学院 工学教育府応用化学専攻
国眼 孝雄 研究室
※部署名、役職名、研究内容などは取材当時のものです
更新::2007/01/15

微生物によって分解され自然に返る
生分解性プラスチック

私たちの身の回りにはプラスチック製品があふれている。家電、情報機器、文具事務用品、日用品、容器類などプラスチック製品に囲まれて生活しているといっても過言ではない。そのなかでも毎日のように、使っては捨てるというパターンを繰り返しているのがプラスチック容器類だ。

現在はプラスチック容器類のリサイクル率が上がったとはいえ、分別されないままゴミとして捨てられ、最終処分場に埋められるものも多い。これでは、環境に負荷をかける一方だ。そのため、分解されて自然に返っていく生分解性プラスチックが注目を集めている。そこで今回は、生分解性プラスチックの研究に取り組んでいる東京農工大学の国眼孝雄先生の研究室を訪ね、お話をうかがった。

生分解性プラスチックという言葉自体は、新聞やテレビなどでもよく使われているが、実際はどのようなものなのか。まず、そこから教えていただくことにした。

「石油(石炭や天然ガスの場合もある)からつくる一般のプラスチックは、自然には分解されない、つまり腐らないのが長所の1つです。その反面、リサイクルされないでゴミとして捨てられた場合、いつまでも自然界に残ってしまいます。それに対して、生分解性プラスチックは微生物によって分解されます。したがって、生ゴミと一緒に土のなかに埋めても、やがては分解されて自然に返っていく。そういう意味では環境にやさしいプラスチックということができます」

バイオマスを原料にすることで
カーボンニュートラルを実現

この生分解性プラスチックには、微生物によって分解されることとは別に重要なポイントがあるという。それはバイオマス(生物資源)からつくることだ。

「生分解性ということだけなら、石油由来のプラスチックでも、そういう性質を持たせることは可能です。たとえば、我々が研究しているポリ乳酸(乳酸のポリマー。ポリマーは分子量の大きい高分子の有機化合物のこと)は石油からつくることもできます。ですから、たんに生分解性ということだけでなく、バイオマス由来であることが重要なのです。

我々は、イモの一種(後述)をバイオマスとして使っています。そのバイオマスはどのようにしてつくられるかというと、炭酸ガスと水があれば、葉緑体が光合成でつくってくれます。しかも、でんぷんというポリマーをつくってくれるのです。また、通常のプラスチックは、300〜500気圧、500〜1,000度というシビアな条件でつくりますが、植物は常温、常圧ででんぷんをつくり、おまけに酸素を出してくれます。

つまり、炭酸ガスを原料にしているので、生分解性プラスチックをつくっても炭酸ガスは出ない。これをカーボンニュートラルと呼んでいて、環境への負荷を軽減しながら社会を持続的に発展させるうえで重要な考え方になっているのです」

また、バイオマスには、石油に代わる原料としての期待もある。

「石油は、いまと同じ状態で生産され消費されれば、あと40年でなくなるといわれています。バイオマス由来のプラスチックが普及すれば、石油をセーブすることにもつながるのです」

《つづく》

●次回は「生分解性プラスチックの原料の研究について」です。

■東京農工大学

▲国眼 孝雄 教授

Lineup

第15回
工学院大学
工学部電気システム工学科

第14回
日本女子大学
家政学部被服学科

第13回
慶應義塾大学 経済学部

第12回
成蹊大学
理工学部情報科学科

第11回
早稲田大学
スポーツ科学学術院

第10回
首都大学東京大学院
都市環境科学研究科

第9回
明治大学
情報コミュニケーション学部

第8回
実践女子大学 生活科学部

第7回
東京工業大学大学院
理工学研究科

第6回
早稲田大学
教育学部地球科学教室

第5回
埼玉大学 教養学部

第4回
東京農工大学大学院
工学教育府応用化学専攻

第3回
青山学院大学
文学部日本文学科

第2回
東京理科大学
薬学部生命創薬科学科

第1回
東京大学大学院
情報理工学系研究科