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第7回 Part.1

第7回 多様な惑星系の統一的な形成理論を追究(1)
Part.1
コンピュータ・シミュレーションで
惑星系形成理論を研究

東京工業大学大学院
理工学研究科 井田 茂研究室
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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2006年8月、国際天文学連合総会で冥王星が太陽系の「惑星」から外されたことは記憶に新しい。教科書に載っていて、一般的には常識になっていることも、常に検証が行われ、新しい考え方が提示されるということだ。それは、もちろん1つの惑星に限ったことではない。太陽系全体、そして太陽系以外の惑星系(系外惑星系)についても、世界中で研究が進められ、次々に新しい事実が発見されたり新しい学説が発表されたりしている。そこで今回は、東京工業大学大学院理工学研究科(地球惑星科学専攻)の井田茂先生の研究室を訪ね、太陽系や系外惑星系について、どのような研究が行われているのか教えていただくことにした。(Part.1/全4回)

太陽系以外の惑星発見によって
惑星系形成理論の再構築が必要に

▲井田 茂 教授

宇宙に関する研究は、理論と観測に大別されるが、井田先生は理論面から太陽系の形成や系外惑星系の形成について研究している。

その手段となっているのは、コンピュータによるシミュレーション。コンピュータのなかで数値による「実験」を行い、何が起こるかを「観測」し、その結果を分析するものだ。

井田先生が取り組んでいる研究のうち、まず太陽系の形成にかかわるテーマについて教えていただくことにした。

太陽系がどのようにして形成されたのかが、おおよそ明らかになってきたのは、実はそれほど昔のことではないという。1980年代から1990年代にかけて「太陽系形成標準モデル」とされるものが確立されたのだ。ところが、1995年に、その標準モデルを揺るがすような出来事が起きた。太陽系以外での惑星の発見だ(後述)。

「我々は、惑星系としては太陽系しか知らなかったので、惑星系形成理論イコール太陽系形成理論でした。しかし、1995年に初めて太陽系以外の惑星(系外惑星)がみつかり、その後も次々に系外惑星が発見されました。しかも、それらの姿は多種多様で、太陽系形成標準モデルを適用するだけでは説明がつかない。

そこで、惑星系形成理論は、太陽系とともに多様な惑星系の形成も統一的に説明することが求められ、再構築を迫られることになりました。そのためには、太陽系形成標準モデルを徹底的に洗い直し、隠れていたり抜けていたりする新たな可能性を探り出し、それを系外惑星系に適用することが必要になってきたのです」

▼太陽系形成標準モデルの概略

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【用語解説】 『デジタル大辞泉』小学館(//kotobank.jp/dictionary/daijisen/)より引用

*惑星系(わくせいけい):
恒星、およびその引力によって運行している天体の集団。太陽系以外の恒星にも惑星が存在することが明らかになり、太陽系は太陽を中心とする惑星系の一つと見なされている。中心天体が恒星ではなく、中性子星や白色矮星という例も知られる。

*太陽系(たいようけい):
太陽、およびその引力によって太陽を中心に運行している天体の集団。水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の8個の惑星とその衛星、さらに準惑星・太陽系小天体(小惑星・彗星や流星物質・ガス状の惑星間物質など)からなる。海王星のさらに外側を回る冥王星は、長く惑星とされていたが、2006年に国際天文学連合により新たに準惑星に分類された。

*恒星(こうせい):
太陽と同様、自ら熱と光を出し、天球上の相互の位置をほとんど変えない星。

*惑星(わくせい):
恒星の周囲を公転する、比較的大きな天体。国際天文学連合はこのほか、自己重力のため球形であることと、公転軌道近くに衛星以外の天体がないことを惑星の要件としている。太陽系では太陽に近い順に、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の八つがある。海王星の外側を回る冥王星も長く惑星とされていたが、2006年に同連合によって新たに準惑星に分類された。遊星。

《つづく》

●次回は「太陽系惑星の形成について」です。

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