第91回

社会問題としてのひきこもり
(前編)


久田 邦明
更新:2014/02/17

ひきこもりの捉え方が変わってきた。これまでひきこもりは若者世代の問題と考えられてきた。子どもから大人へ成長する時期の、つまずきの一つという理解だ。行政施策も市民団体の活動も、これを前提として、若者支援としてのひきこもり支援をおこなってきた。

それが、若者だけではない、幅広い世代の問題と捉えられるようになっている。保守的な性格の行政においても、さすがに、ひきこもりの現実を見過ごせなくなったのだ。今後、行政施策も市民団体の活動も、この方向ですすめられるだろう。

この問題を考える上で、見逃せないのは、秋田県藤里町の社会福祉協議会がおこなってきた、ひきこもり支援の活動だ。昨年、新聞やテレビで相次いで紹介されたが、その活動の全体については『ひきこもり 町おこしに発つ』(藤里町社会福祉協議会・秋田魁新報社編集/秋田魁新報社発行・2012)に詳しい。

藤里町の調査では、内閣府などの調査とはちがって、ひきこもりを、2年以上仕事をせず、家族以外と話をしていない18〜55歳の町民と定義した。すると、これに近い者も含めて、113人(8.74%)が確認されたという。

そのなかで、年長者の場合、都会で失職して帰省したが、就職活動もままならず、ひきこもりになった人がいる。また、老親の介護のために実家に戻ったが、その後就職できずに、ひきこもりになった人もいる。今日の社会状況をみるおもいがするではないか。そして、ここから、ひきこもりは、若者の問題というよりも、社会の仕組みが生み出す問題、すなわち社会問題だということが分かるだろう。

町の社会福祉協議会では、「こみっと」という施設を開設して、そば打ちの食堂を始めた。また「こみっとバンク」という職業紹介所を設けて、職場の斡旋を始めた。ここを訪れて、自分のことのように感じた、若い取材記者もいたという。若い世代には他人事ではないのだ。

久田 邦明
ひさだ くにあき

首都圏の複数の大学で講義を担当している。専門は青少年教育・地域文化論。この数年、全国各地を訪ねて地域活動の担い手に話を聞く。急速にすすむ市場化によって地域社会は大きく変貌している。しかし、生活共同体としての地域社会の記憶は、意外にしぶとく生き残っている。それを糸口に、復古主義とは異なる方向で、近未来社会の展望を探り出すことが可能ではないかと考えている。このコラムでは、子どもから高齢者まで幅広い世代とのあいだの〈世間話〉を糸口に、この時代を考察する。

Lineup

【2010年 掲載】
第78回 青年団が教えてくれること
〜第65回 大学をユースセンターへ

【2009年 掲載】
第64回 コミュニティビジネスの希望
〜第49回 地域で子どもを育てるスポーツ少年団

【2008年 掲載】
第48回 子どもの貧困
〜第33回 生涯学習を学ぶことの効用

【2007年 掲載】
第32回 期待されていない若者たち
〜第17回 地域文化の力

【2006年 掲載】
第16回 いじめをどうする
〜第1回 大学って何?