第2回 Part.4

バイオインフォマティクスで
ゲノム創薬への道を切り開く(4)


東京理科大学 薬学部 生命創薬科学科
宮崎 智 研究室
※部署名、役職名、研究内容などは取材当時のものです
更新::2006/09/25

情報科学の手法で
人間特有の遺伝子を探る

創薬のためのゲノム情報解析手法の創造についても話をうかがうことにしよう。この研究テーマには3つの柱があるそうだ。

「1つは、人間特有の遺伝子の働きを探る道筋をつけることです。異なる生物同士で同じ遺伝子があるかどうかは、ATGCという文字情報の一致度を調べることでわかります。同じ文字パターンのものがあれば、それはA生物とB生物で同じ遺伝子であろうと考えられるわけです。

ところが、種の違いというのは、その種にしかない遺伝子があることによって生まれてきます。そうすると、ある生物種に特有の遺伝子がどのようなもので、どのような役割を果たしているかは、異なる生物種のゲノムの文字情報を比較するという手法では解明することができないのです。

ただ、特有の遺伝子がそれぞれ単独で働いているということは考えにくい。分子情報ネットワークの話にもつながるのですが、タンパク質をつくるための制御とは違うメカニズムで、同じような機能に関与している遺伝子があると考えられます。そこで、文字の並び方は違うけれど、機能としては同じという人間特有の遺伝子を情報科学の手法で見つけたいのです。ただ、それは仮定になりますから、ある程度の分類群をつくったら、本当にそうなのか実験で確かめたいと思っています。

タンパク質の中枢や細胞の働きを
シミュレーションで突き止める

2つ目は、タンパク質の中枢を見つけることです。タンパク質が働くときには活性中心というもの、人間でいえば脳に相当する部分があるのですが、それがどこなのかはわかっていない。実験で調べるのは難しいので、コンピュータのシミュレーションで、いちばん可能性が高い部分を突き止めたいと思っています。それが明らかになれば、そこをターゲットにした仮の薬をつくってブロックしてみる。

もし、タンパク質の働きが抑えられれば、そこが活性中心ということになりますから、仮の薬をもっと洗練されたものにしていくことができるでしょう。

3つ目は、遺伝子発現や細胞の働きをコンピュータ上で再現することです。細胞内にどういうタンパク質があるかということは、遺伝子の情報からわかります。それから、このタンパク質とこのタンパク質がこう関わっているというデータが出ているものもあります。それは大体、AとB、CとDといった2項的な関係になっています。

しかし、遺伝子の情報からつくられるタンパク質を一度に一緒にしたら全体としてどういうことが起こるかはわからない。それをコンピュータ上のシミュレーションで明らかにしようと考えているのです。

というのも、細胞が何らかの物質をつくる場合、1通りのやり方だけではないんです。あるタンパク質をブロックしても、ほかの道を見つける。それがどのようなものか確かめるには、全体の動きを見る必要があります。たとえば、AはBとかかわるだけでなくCとも関わり、AとCという関係もできるということが明らかになっています。ですから、ある道筋をブロックしたら、どういう道筋で目的の物質をつくるのか、もしくはその物質はできないのかということをシミュレーションで解明したいと思っています」

宮崎先生の「ドライな研究室」は、たしかに一般的な薬学部のイメージとはかけ離れている。

取材に訪れたとき、ゆったりした空間にテーブルが並び、学生たちがノートパソコンを操作している様子を見て、ラウンジか何かと思ったが、実はそこが研究室だった。イメージの違いは、研究テーマや研究手法がこれまでにない新しいものであることを物語ってもいる。

動き出して間もない宮崎研究室だが、バイオインフォマティクスによって薬学の未来をどのように切り開いていくのか大いに注目される。

■東京理科大学 薬学部
■東京理科大学

▲宮崎 智 教授

 

Lineup

第15回
工学院大学
工学部電気システム工学科

第14回
日本女子大学
家政学部被服学科

第13回
慶應義塾大学 経済学部

第12回
成蹊大学
理工学部情報科学科

第11回
早稲田大学
スポーツ科学学術院

第10回
首都大学東京大学院
都市環境科学研究科

第9回
明治大学
情報コミュニケーション学部

第8回
実践女子大学 生活科学部

第7回
東京工業大学大学院
理工学研究科

第6回
早稲田大学
教育学部地球科学教室

第5回
埼玉大学 教養学部

第4回
東京農工大学大学院
工学教育府応用化学専攻

第3回
青山学院大学
文学部日本文学科

第2回
東京理科大学
薬学部生命創薬科学科

第1回
東京大学大学院
情報理工学系研究科