研究室はオモシロイ

大学、専門学校や企業などの研究室を訪問し、研究テーマや実験の様子をレポート

第5回 Part.1

第5回 
対象地域に継続的にかかわりながら人を中心に据えたまちづくりを研究(1)

Part.1
人々の生活や環境をつくり出し
充実させていく「まちづくり」

埼玉大学
教養学部 梶島 邦江研究室
※組織名称、施策、役職名などは原稿作成時のものです
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自分が生まれ育った地域、あるいは現在暮らしている地域には、どのような問題があり、どうすれば解決できるのか。そんなことを考える機会は意外に少ないかもしれない。とはいえ、それは行政や一部の専門家に任せておけばいいというものではなく、本来は私たち住民1人ひとりが考えなくてはならないことなのだろう。では、学問の立場からはどのようなアプローチがあり得るのだろうか?
今回は、地域が抱える問題やその解決策について実践的な研究を進めている埼玉大学教養学部・梶島邦江先生の研究室を訪ねて話をうかがってみた。(Part.1/全4回)

▲梶島 邦江 教授

梶島先生の研究室では「まちづくり」の研究に取り組んでいる。それも、まちづくりを第三者的にとらえるのではなく、各地のまちづくりにかかわりながら研究活動を進めているのが大きな特徴だ。そうした研究の具体例についてうかがう前に、そもそも「まちづくり」とはどのようなものかを教えていただくことにしよう。

「街(町)づくり」と表記する場合は、土地や建物を含めたハード的なニュアンスがあるが、それとはどう違うのだろうか?

「まちづくりというのは、人々が暮らす地域において、その生活や環境を新しくつくり出していく、あるいは充実させていく営み全般のことです。社会のしくみ、ルール、人と人との関係、人とモノとの関係などを新しくつくりあげたり、つくり直していく、ということですね。

私自身のことでいうと、研究の出発点は都市計画でした。でも、単にモノや空間をつくることよりも、人々がそれらをどのように使っていくのか、それによって人々の暮らしがどう変わっていくのかということのほうに関心が広がっていったので、まちづくりの研究に取り組むようになったのです」

大学所在地をテーマにした
プロジェクトに取り組む

梶島先生に、さまざまな研究活動のなかからいくつか具体例を教えていただくことにした。いずれも現在進行形のホットなものばかりだ。まず1つ目は「大久保プロジェクト」。大久保とは埼玉大学が所在する地域のことだが、なぜ大学所在地を研究テーマに取り上げたのだろうか?

「毎日通っているところなのですが、どうもこのまちはパッとしないよね(笑)という思いが私にも学生にもあって。なぜそう感じるのか考えていたのですが、学生たちと話をしているなかで、実は私たちがこの地域のことをよく知らないからだろうということに気づきました。それで、大久保という地域を調べてみようということになったのです。

このプロジェクトは、2003年度に大学院(文化科学研究科)の授業の一環としてスタートしました。初年度は、まず大久保がどういうところなのか歴史的に調べてみようということで、さいたま市立博物館にいったり、学芸員さんに手伝っていただきながら、まちを歩いて、何がどこにあって、それはなぜなのかということを実地に確かめました。

授業は4月から始まっていましたが、実際にまちを歩いたのは冬になってからでしたね。まちを歩いて確かめるプロセスはとてもおもしろかったので、近くの住民の方にも声をかけて、2004年の3月ころには住民の方と一緒にまちを歩いたりもしました。

それから、2003年秋には博物館が、大学からも近い荒川をテーマにした特別展を開催するというので、側面からサポートするために展示内容や学芸員さんの活動を日記風につづったものを私たちのWebサイトで紹介したりもしました」

《つづく》

●次回は「秩父地域プロジェクトについて」です。

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