第11回 Part.3

スポーツビジネスのあり方を科学的に考察(3)


早稲田大学 スポーツ科学学術院
原田 宗彦 研究室
※部署名、役職名、研究内容などは取材当時のものです
更新::2009/02/16
第3回
スポーツによる地域の経済効果を研究する

前回は、日本のプロスポーツは、もともと企業スポーツから発展してきた歴史があるため、ヨーロッパのサッカーリーグに比べてスポンサーシップの割合が高いという話をした。では、スポーツチームを作ることで、地域にどんな経済効果があるのだろうか。

1試合の平均観客数1万8,000人でも
各チームの経営には厳しさが

次に、メゾの視点での研究について伺ってみた。Jリーグでいえば、各チームレベルのテーマになる。リーグ全体としてはここ数年、1試合の平均観客数が1万8,000人台で安定し、年間の観客数は約860万人に達するなど人気を保っているそうだが、個々のチームの状況はどうなのだろうか。

「Jリーグの各チームの経営状態を見ると、赤字のチームが多いですね。その赤字は、親会社のあるチームなら補填される場合もありますが、そうでないチームは赤字がそのまま累積されていくこともあります。

これは、Jリーグのチームが地域密着型で発展してきた宿命ともいえます。地域に根ざしたチームづくりをしているぶん、その地域では強く支持されやすいけれども、なかなか全国ブランドには育たない。だから、収益も限定されてくる。唯一の例外といえるのが浦和レッズで、年間の売り上げが70億円ぐらいに達しています。それでも、プロ野球と比べると少ない。そういう中で、各チームとも何とか踏ん張り、Jリーグとしても短期的な貸し付けなどさまざまな方法で支援しているのが実情です」

Jリーグをめざすチームの存在が
地域活性化にもつながる

チーム経営の厳しさは分かっていても、各地域からJリーグ入りをめざすチームが次々に出てきている。なぜなのだろうか。

「Jリーグには現在、J1に18チーム、J2に15チームがあります。その下にJFL(日本フットボールリーグ)があり、さらにその下に地域リーグがあるのですが、地域リーグからステップアップしていってJ1をめざすことができるシステムになっているのです。

だから、いまは地域リーグで戦っているチームの中にも、いつかはJリーグへという夢を抱き、それを実現しようと頑張っているところが少なくないのです」

Jリーグをめざすチームの存在は、地域にイノベーション(変革)を引き起こすものでもあると原田先生は指摘する。

「いま、日本の地方都市はどこも似たような光景が広がっています。郊外に大型商業施設や全国チェーンの飲食店が建ち並び、中心部は『シャッター街』になってしまっている。その結果、地方経済は停滞し、住民の気分まで沈みがちになってしまいます。

そうした状況の中で、Jリーグをめざすチームをつくり、事業化していくことは、地域の活性化につながるのです。名前に地域名を冠した地域密着型のチームは、住民はもちろん自治体や地元企業などの共感や協力を得やすく、その地域の象徴となって人々の誇りをかき立てる力も持っているのです」

また、原田先生は、もともとスポーツ自体が持っている魅力も大きいと話す。

「スポーツは多くの人の心を鷲づかみにして揺らすことができます。そこが文化や芸術とはちょっと違うところです。文化や芸術で本当に感動するためには、それなりの素養が必要になります。とくに、クラシック音楽とか絵画などは、普通の人にはなかなか分からない。ところが、スポーツは特別な素養がなくてもパッと見ただけで分かり、感動を与えてくれる民主的なコンテンツなのです。

だから、方法を知っていてボタンの押し方さえ間違えなければ、地域にスポーツチームをつくって、ファンを獲得していくことは可能だと思います」

《つづく》

●次回はスポーツ消費者と「ファンビジネス成功」の方程式についてです。

注:「Jリーグファンの経験価値マネジメント」(早稲田大学スポーツビジネス・マネジメント研究室)を
基に作成。(基のグラフはJリーグ調査データより原田研究室作成)

■早稲田大学 スポーツ科学学術院
Lineup

第15回
工学院大学
工学部電気システム工学科

第14回
日本女子大学
家政学部被服学科

第13回
慶應義塾大学 経済学部

第12回
成蹊大学
理工学部情報科学科

第11回
早稲田大学
スポーツ科学学術院

第10回
首都大学東京大学院
都市環境科学研究科

第9回
明治大学
情報コミュニケーション学部

第8回
実践女子大学 生活科学部

第7回
東京工業大学大学院
理工学研究科

第6回
早稲田大学
教育学部地球科学教室

第5回
埼玉大学 教養学部

第4回
東京農工大学大学院
工学教育府応用化学専攻

第3回
青山学院大学
文学部日本文学科

第2回
東京理科大学
薬学部生命創薬科学科

第1回
東京大学大学院
情報理工学系研究科