若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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文化祭で感じた、
人が集まる場のやさしさ
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
公開:
9月の末に、育て上げネットで文化祭を開きました。今年で3回目になります。もともとは、日頃からさまざまな形で若者を支えてくださっている地域のみなさんに、感謝を伝えたいと始めたものです。そのコンセプトは変わらないまま、少しずつできることが増えてきました。
今年もたくさんの方が来てくださいました。書籍の配布企画やゲームイベントには子ども連れの方が集まり、最近力を入れている「売らない珈琲屋さん」は、この日だけチョコブラウニーがセットになったカフェスタイルです。多くの方がおいしそうに召し上がっていました。
手作りのアクセサリーや小物を販売するブースもあれば、絵心のある若者が子どもたちに絵を教える講座もあります。3年目ともなると、それぞれの好きなことや得意なことが、文化祭の中身を豊かにしてくれるのだなと感じます。
この日は小さな音楽ライブも開かれました。普段は10人も入れば多いなと感じる部屋に、30人近くが肩を寄せ合っていました。練習してきた曲を披露する友人に声援が飛びます。ちょっとした照明も用意して、実際のライブ会場のような雰囲気になってくると、明らかにみんながノってきているのがわかります。場所の雰囲気が変わるだけでも、人の楽しみ方はずいぶん変わるものです。
別の部屋では、普段、家族相談プログラムを利用している保護者の方々が、年に1回の集会に参加されていました。近しい境遇の親同士で話せる、閉じられた場だからでしょうか。会話が止まらない様子で、どこよりも和気あいあいとしていたように思います。
コロナという言葉を日常的に聞かなくなって、ずいぶん時間がたちました。それでも、こうした場を見るたびに、人と人が集まって楽しむことは、こんなにも大切だったのだなと感じます。同じ日に同じ場所へ来て、一緒に過ごす。その機会があるからこそ生まれるつながりがあります。
この日は、私たちを支えてくださる寄付者向けの報告会も開催しました。若者にも登壇してもらい、自身の状況や、普段ここでどのように過ごしているかを話してもらいました。
ある若者は「自分は30代半ばで利用者の中では年長に近いけれど、ここではみんながフラットに関わってくれる」と話していました。高校生が「ため口」で話しかけてくることもあるそうで、「それも心地よい」というのです。
年齢も、これまでの経験も、いま置かれている状況も違います。それぞれの方にさまざまな背景があるのは確かですが、ここではそうしたことをいったん脇に置いて、一緒に過ごせる。ため口が心地よいという言葉には、その関係性がよく表れているように思いました。社会の分断を感じることも多いなかで、こうして関われる場の存在は大切なのでしょう。
報告会が終わったあと、寄付者のおひとりが「育て上げネットの良いところはやさしさですね」と感想を教えてくださいました。うれしい言葉です。同時に、この日のいろいろな場面を思い返して、誰もが孤立せずにいられる社会を考えるうえで、大事な言葉をいただいた気がしました。
演奏する友人に声援を送ることも、近しい境遇の人と話し続けられることも、年齢を気にせず声をかけてもらえることも、そのやさしさは、集まった人たちの関わりの中にあったのだと思います。
こちらが感謝を伝えるために開いた文化祭ですが、この機会を大切にしてくださるみなさんに、改めて感謝する1日になりました。こうして人が集まり、気兼ねなく過ごせる場が、社会の中にもっと増えていってくれたらうれしいです。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 事務局次長
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を行い、広報担当マネージャーを経て、現在、事務局次長。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)


