若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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「支援を望まない」若者と、
どうつながりを作るか
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
公開:
マンガ『みいちゃんと山田さん』のアニメ化が発表され、SNSで大きな話題になっています。舞台は2012年の新宿・歌舞伎町。主人公のみいちゃんは、学校にも仕事にもなじみにくく、周囲との行き違いやトラブルを重ねながら生きています。
作品の内容や表現をめぐっては、さまざまな意見があります。今回はその是非ではなく、読み進めるなかで考えた「支援とのつながり方」について書いてみたいと思います。作品の核心の部分は触れないようにしていますが、ネタバレが気になる方はぜひ先に作品を手に取ってください。
作中、みいちゃんには何度か福祉や支援につながるきっかけが訪れます。学生時代には特別支援学級を勧められ、大人になってからも似た境遇の友人に「一緒に働こう」と誘われます。しかし、みいちゃんや家族は、いずれの提案も受け入れません。作品はスマホアプリなどで連載されているのですが、読者から寄せられるコメント欄には、毎回のように「福祉につながっていれば⋯」という声が寄せられています。
支援は周囲の気持ちだけでは成立しません。私も、登場人物が何らかの支援につながれたらと願いながら読みましたが、本人が必要性を感じていなかったり、過去の体験から支援にはいい思い出が無かったりすれば、提案そのものが拒まれることもあります。支援者が正しさを強く伝えるほど、かえって距離が生まれる場合もあります。
終盤には福祉との接点になり得る場面が描かれます。実家に戻ったみいちゃんが、スーパーで障がい者雇用に取り組む農家と出会う場面です。そこにあるのは「支援が必要だ」と迫る関係ではなく、日常の延長にある仕事を介した関わりです。みいちゃんがトラブルを起こしても、農家の方は関係をすぐに断ち切らず、本人の言葉をひろって次の約束につなげます。
結果として、農家で働き続けることは叶わなかったのですが、この場面に支援を望まない若者とつながるヒントがあるように感じました。
支援への入り口は必ずしも相談窓口でなくてよく、買い物や趣味、雑談、短い仕事体験でもよいのだと思います。「支援」という看板を先に掲げるのではなく、本人が関心を持てる日常のなかに接点をつくること。そのうえで、出会った人が特性や事情を理解し、うまくいかないときにも関わり直せる余白を持つことが大切です。そして支援をする側が最初の接点を“終わり”にしない姿勢も欠かせません。
相談や支援の前に人と人との関係を作る。支援にはサービスの側面もありますが、別の面では対人関係の延長でもあります。つながり方を一つに決めず、小さな接点を残し続けることが、いつか本人の選べる道を増やすきっかけになるやもしれません。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 事務局次長
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を行い、広報担当マネージャーを経て、現在、事務局次長。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)


