若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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大きな問題になる前に
早めの相談を期待する理由
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
公開:
35歳にして免許を取って約半年、いつかやると思っていた事故を起こしました。事故とはいっても、自宅駐車場の片方が擁壁のようになっているところで大げさに擦ってしまった⋯というだけで、誰もケガをしていないし、他人様のご迷惑にはまったくなっていません。その翌日から具合が悪くなり、しばらく風邪をひいていました。そうした体調の変化がいつもとは違う操作を起こしてしまったのでしょう。
この話は実に残念な裏話があります。私は、擁壁部分に貼るクッションを購入していたのです。それも半年前に。「いつかコイツは壁に擦るぞ」と、最初から自身に疑念を持っていたのです。
けれども子育ての慌ただしさや新年度早々の仕事の混乱のなかで、たった10分の作業を後回しにし続けてきてしまいました。あぁ、買ってからすぐにさっさと貼っておけば、こんなに大ごとにならなかったのに⋯。家を出るたび、反省の気持ちが湧いてきます。
目をそらしていた課題が急に大きな問題になる。私たちが日々直面する問題として聞くのは「8050問題」です。
子どもが社会的、経済的自立ができていない状態であるけれど、親も高齢化し、いわゆる「親亡き後」を考えなければならなくなった。いつか考えなければならないと思っていたけれど、親も健康そうでそのような話をしてこなかった⋯そんなご家庭だからこそ、あとで大きな問題になります。
私たちは家族を対象にした相談支援も行っていますが、この「親亡き後」の問題を抱えていらっしゃるケースは後を絶ちません。子どもをのこしていくけれど、お金のことはもちろん、炊事洗濯すらままならないのではないか⋯と心配されておられるのです。子ども側もいつか来る別れの先にある現実的な課題を、心のどこかで不安に感じています。
こうした悩みには、絡み合った紐をひとつひとつ解いていくように、対応を考えていかなければなりません。お金はどれくらいのこして、どうやって管理していくのか。最低限の家事ができるようにどうやって練習するのか。そして、親がそんな悩みや不安を持っているということを、いつ、どうやって子供に伝えるのか。
第三者を交えることで、どこから手を付けてよいかわからない大問題と向き合えます。特に、向き合う時間を作るというのがとても大切なようです。
私のように問題を先送ることがないよう、定期的に考える時間を設けておけばこの問題はすこしクリアになるのかもしれません。
国が就職氷河期世代対策に力を入れるようになってしばらく経ちましたが、対策開始当時40代前半だった方々が、少しずつ8050の領域に踏み込み始めています。8050を待たずとも、7040の段階から動き始められたら良いなと思う次第です。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 事務局次長
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を行い、広報担当マネージャーを経て、現在、事務局次長。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)


