若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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人柄、キャラクター、仁⋯
AI発展への不安と人間の価値を考えてみる
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
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AIの開発が、ここ最近で一気に加速していると感じています。私自身はそのごく一部にしか触れていませんが、それでも昨年と比べると明らかな違いがあります。初めてAIに触れたときのあの衝撃に近い感覚が、いまだに続いているように思います。
なかでも、とりわけ驚かされるのがプログラミングの領域です。いわゆる開発環境の構築といった初期段階から自律的に作業を進め、そのままプログラムコードを書き上げてしまいます。わずかな指示を出すだけで、何千行、何万行というコードを生成し、その精度も非常に高いのです。気になる箇所を指摘すれば、修正もすぐに反映されます。そのスピードと柔軟さには、正直なところ圧倒されます。
一方で、私たちが日々取り組んでいる相談支援や仕事体験の分野には、AIが入り込む余地はまだそれほど大きくないようにも感じています。もちろん、相談をAIにする人が増えていることは間違いありません。私自身も育児を始めてから、AIに相談する機会が増えました。
あえてAIにまだないものを指摘するなら、それは「人となり」「仁」「キャラクター」のような、その方の個性を表すものではないかと思います。
カウンセリングには教科書的な知識や基盤となる体系はありますが、現場はそれだけで成り立っているわけではありません。若者が「この人なら相談しても良いか」と思うのは、支援者のパーソナリティに依ることも多々あります。そうした“見え方”や“感じられ方”が、支援の継続に大きく影響します。
最近、AIを相談相手にした周囲の人たちが、それと距離をとるようになってきました。使うのをやめたわけではありません。ただ「悩みの吐露に使うにはあまりにも言葉に重みがない」のだそうです。
総合的な能力や効率の面では、すでにAIのほうが優れている場面が多いかもしれませんが「この人となら何とかやっていけそうだ」と思う瞬間は、得てして支援員のやさしさや丁寧さ、ときには少し抜けているところだったりして、それこそが人間に残る価値になるかもしれません。そういう意味で、人と話すことの価値は、これからますます高まっていくのではないでしょうか。それは相談という場面に限りません。もっとシンプルに、人と人が対話すること自体の価値が高まっていくのだと思います。
私たち支援機関に対してもまた、若者と社会のハブとなって相互が手をつなげるような、間を取り持つ機能に注目が集まっているように思います。孤独孤立対策のための居場所支援はその例のひとつでしょう。
新年度を迎え、AIの発展に感動をしながら、自分たちがこれからすべきことを改めて考えてみました。誰もが高品質のものを簡単に作ることができる世の中に、だからこそ垣間見える人間の不完全さに心が動かされることも同時にあるということを、心にとめておきたいと思います。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)



