若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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AIの伴走者になる働き方を、
支援の側から考える
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
公開:
支援の現場でも、AIを使う話を聞くようになりました。知りたい情報を引き出したり、考えを整理する壁打ち相手になってもらったり。ときには、自分が対応した相談ケースについて問いかけることもあるようです。もちろん、相談内容がAIの学習に使われない環境での利用です。
若者たちも同じようにAIを使っています。以前もこちらで触れましたが、自分で検索して支援機関を見つけるだけでなく、「AIに聞いたらここが出てきた」と相談に来る方もいます。支援する側もされる側も、自分のやりたいことや困りごとに、AIが伴走してくれるようになりました。
一方で、私自身が最近感じているのは、その関係が逆になりつつあるのではないか、ということです。
先日、プライベートで簡単なゲームを作って公開しました。作った、と言っていいのかは少し迷います。今や私が朝起きてすることは、AIに「今日も標準手順に沿ってひとつ作って」と、この1行を頼むだけ。昼頃には新しいゲームができあがり、公開できるようになっています。
最初に何をしてほしいかは人間が伝えますが、その先の手順を考え、作業し、形にするのはAIです。自分の作業を手伝ってもらう感覚から、AIが進める仕事に、人間側が方向を示す感覚へと変わってきました。むしろ私のほうが伴走者なのかもしれません。
ITの領域では特にこうした変化を感じますが、個人と会社をつなぐ私たちの意識は、どれくらい変わっているでしょうか。
例えば、育て上げネットでは動画編集に興味のある若者に、専用ソフトを使ってもらう講座を実施しています。初めての体験として実際に触れることには意味があります。ただ、SNSを眺めていると、従来は人間が手作業で編集している工程を、AIがパソコンを操作して進めている様子も目にします。
そうなると、働くために身につけておきたいことも変わりそうです。編集ソフトで何ができるのかを知ることは必要でしょう。ただ、操作に習熟することが、誰にとっても同じように必要とは限らなくなるのかもしれません。どんなものを作りたいかを伝え、できあがったものを見て、イメージと違うところをまた伝える。そうしたやりとりが仕事の中心になる場面も増えていくように思います。
これまで私たちは、若者自身ができることを増やそうと、さまざまな体験や学びの機会を作ってきました。そこに、AIに任せれば実現できることも加わるとしたら、本人が思っている以上に仕事の選択肢が広がる可能性があります。支援する側が、これまでの習得の順序にこだわりすぎてはいけないのでしょう。
実はこの原稿も、書きたいことや自分の体験をメモで伝え、文章にしたのはAIです。ここまで違和感なく読んでいただけていたら、私が感じている変化も少し伝わるのではないかと思います。
支援者自身の仕事が便利になった、その先にある働き方の変化を、若者への支援にどう還元していくのか。AIに何を任せ、人間がどこで関わるのかを、私たち自身も試しながら考えていきたいと思います。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 事務局次長
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を行い、広報担当マネージャーを経て、現在、事務局次長。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)


