そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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応援される経験が、
次の誰かを応援する力になる

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 事務局次長
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

最近、育て上げネットとつながりのある若者が、フルマラソンに挑戦すると発表しました。しかも、ただ完走を目指すのではなく、寄付を募りながら走るチャリティランナーとしての参加です。

彼は16歳から35歳までの19年間、ひきこもり状態で過ごしていました。その後、育て上げネットとつながり、少しずつ外の世界との接点を取り戻す過程にいます。なぜ今、フルマラソンに挑むのか。本人は次のようにつづっています。

この挑戦を通して、今の僕と同じように社会生活に悩んでいる方や、不登校で学校に通えず苦しんでいる学生たちに、「人生は何度でもやり直せる」ということを伝え、少しでも勇気を届けたいと思っています。そして何より、この挑戦を通じて、自分自身の人生や自信を取り戻したいです。19年間のひきこもり生活から、一歩踏み出すための大きな挑戦です。

この言葉に応えるように、すでに20名を超える方が寄付を寄せ、彼の背中を押しています。私たちが日々出会う若者のなかには、「誰かに応援された」という実感をほとんど持てないまま大人になった方もいます。

寄付という形で応援してくれる人がいるんだよ、と伝えると「なぜ自分のような人間を応援してくれるのですか」と戸惑うこともあります。それほど、自分に向けられる期待を信じにくくなっているのです。

私自身が子育てを始めてみて思うのは、大人はなにか理由がないと応援してもらえないということです。だからこそ、自分の挑戦に対して名前も顔も知らない人から声が届く経験は、大きな意味があります。挑戦表明からすぐにこれだけの応援が集まったことは、完走という目標と同じくらい、彼の人生に残る出来事になったのではないかと思います。

寄付者からは「息子が引きこもっていた時期がありました。希望をいただきました。応援します」というコメント(原文ママ)も届きました。彼の挑戦表明が、すでに別の誰かの背中を押しています。支援を受けてきた若者が自分の経験と言葉を通じて、今度は誰かを支える側になる⋯。若者支援にはこうした循環が生まれる瞬間があります。

何よりうれしいのは、これほど大きな挑戦に向かえるだけのエネルギーを、彼が少しずつ蓄えてきたことです。挑戦には不安もあるでしょうし、準備の途中で思うようにいかない日もあるはずです。完走だけを成功とせず、無理をせず、けがなく当日を迎えてほしいと願っています。

沿道からの声援を受けたとき、彼は自分が応援されていることを、身体で実感するのかもしれません。その経験が自信となり、いつかまた別の誰かに渡っていく。今回の42.195キロは、その循環を確かめる道のりでもあるように思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか


認定特定非営利活動法人
育て上げネット 事務局次長
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を行い、広報担当マネージャーを経て、現在、事務局次長。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)

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